パズルのピースをはめていくように。
6月12日、J3リーグ第12節・FC今治対SC相模原。
相模原にとっては一昨年、最終節で歓喜の大逆転でのJ2昇格を成し遂げた思い出の地でもある今治での試合。
ありがとうサービス. 夢スタジアムの一番の特徴は、何と言ってもスタンドとピッチの近さ。
選手の息遣いが聞こえるというレベルすら超えていて、コーナーキック前のゴール付近でのポジション取りの競り合いの中での指示や、キーパーからの囁くようなコーチングなど、専スタであっても普通は聞くことが出来ないようなサッカーの細かなやり取りが感じられたのはとても新鮮だった。
また、ピッチに近いスタンドから繰り出される応援も、独特の雰囲気があった。
緩急の効いたドラムパターンと観客に配布されているハリセンが相乗効果を生んで、まるでBリーグの試合を見ているかのような、楽しく明るく一体感を持ってFC今治の選手を後押しする雰囲気がスタジアムに溢れていた。
試合は開始早々から相模原が攻め立てる展開が続いたものの、今治のカウンターを食らい、うまく
マークを剥がされながらボールを繋がれて先制を許した。
しかし、今の相模原はここで下を向くチームではない。
17分、FW加藤拓己がニアに飛び出してコーナーキックをゴールの対角線に沈める見事なヘディングシュートで同点にすると、
36分には再びエリア中央でMF安藤翼の絶妙なスルーパスを受けた加藤がそのまま綺麗に流し込み、逆転に成功した。
後半は今治に主導権を握られ、サイドを中心に攻められる時間帯もあった。
しかしそれでも67分、MF藤本淳吾からの優しい横のパスをPA角付近でフリーで受けたMF川上竜が丁寧に上げたクロスを、途中出場のFW佐相壱明が見事に頭で合わせ、勝利を大きく手繰り寄せる3点目を奪った。
その後は選手交代をしつつ、集中したディフェンスで今治の攻勢を凌ぎ、3-1で勝利を収めた。
遠方のアウェイ観戦で、多くのホームチームのサポーターに囲まれながら見る勝利は格別のものがある。また、個人的にもサッカーとSC相模原を見始めて2年目のため、昨季は見れなかった"連勝"の喜びを初めて知れて、本当に嬉しかった。
試合後、挨拶に来た選手の嬉しそうな顔を見れて、一人ひとりと目が合う。
勝利のファミリアでは選手のアドリブパフォーマンスも徐々に増えてきて、チームの一体感がどんどん高まってきているのを感じる。
遠いスタジアムまで何時間かかろうと、彼らと楽しい時間を共有できると、冗談抜きで疲れが吹き飛ぶ。
特にこの試合は、今季最も選手達が望んでいた展開を表現できた90分だったと感じられたし、その分選手たちもつきものが取れたような晴れ晴れとした表情だった。
2点目の加藤のゴールを演出した安藤翼のスルーパス、そして、その前に相手の位置を見て咄嗟に前を向いてDF藤原優大からの縦パスを受けたシーンがとても印象的だった。
何としてでもゴールを、ボールを前へ前へ運ぼうとする彼のスタイルと熱い気持ちが逆転を呼び込んだ、心が沸き立つプレーだった。
MF中原彰吾も、ここ数試合で格段にチーム全体の動きとの連動性が上がった。
局面局面で、思ってもみないところで顔を出して盤面をこちらに有利に傾けるセンス、そしてデュエルで負けない強い個、今までは上手くはまらなかった彼の持つ強みが、ここに来てSC相模原の中盤を支えてきているのを感じる。
これまで沈黙していたFW陣も、前節の船山に続き佐相にも初ゴールが生まれた。
パズルを作り上げていくかのように、春に思い描いていたピースがひとつ、またひとつと僕らの前に現れて、それがSC相模原という土台にはまっていく。
秋に向けて、完成したこのパズルを僕は見たい。毎試合必死に走ってボールに食らいつく彼らが、どういう景色を作ってくれるのか、見たい。
けれど、その為にはまだまだ探しているピースがたくさんある。
まだ見たいシーンがある。もっとできると思いたくなるシーンがある。
そして、行ける、大丈夫と背中を押したくなる選手が、まだいる。
どんなパズルになるのかは想像もできないけれど、きっと心が震える景色になるのを信じて、また応援しよう。
そして、最終節が終わってから皆で言おう。
「無駄な遠回りなんてなかった」と。
上手くいかなかったことも、苦しかったことも、悔しかったことも、悲しかったことも、
そんな気持ちが全て晴れるようなパズルが完成する日を待ち侘びながら、大切に見守って、作っていこう。
そこに、未来への希望と皆の明るい笑顔があると信じて。
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