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澤田 真如 代表取締役、今必要な医療技術を作り、より多くの人の健康に貢献する

見ている”光”の本質を探り、眼に対する悪影響をなくすべく反射光を使ったディスプレイを開発。医療技術とIT技術をかけ合わせ、希望の光をつくる。

CEO PROFILE
澤田 真如 (さわだ まこと)
2021年7月 Essence research株式会社を創業。
 
経歴
大学病院にて麻酔科医師として15年勤務。また、30年以上のIT経験から病院システム担当者としても従事。ITと医療技術の応用によるサービスを提供したいと考え、2021年7月Essence research株式会社を設立。

ー 起業の背景を教えてください。

キャリアとしては医療を選びましたが、元々はコンピュータ業界に進むか、或いは医療に進むかで悩んでいました。幼少期からコンピュータが好きで、趣味として常に触れていました。結局医療を選びましたが、その後もコンピュータ技術に常に触れていたため、医療の現場でも何か課題を感じると、コンピュータ的な視点で問題を捉え、解決策を考えることが多かったですね。
そして、医療現場の中でコンピュータ技術を用いたアイディアを複数思いつき、その一部は病院システムの担当者として実際に提案して好評であったことも起業のきっかけとなっています。医療技術×コンピュータ技術で実現できる広い可能性にとても魅力を感じつつ、自分のアイディアを実現するためには起業するしかないと思い、起業した次第です。
 
起業をする上で大切にしたことは、医療現場のIT化による事務的なメリットではなく、医療としてのメリットを患者様に届けることでした。そのため臨床的な勘のようなものを大切にしており、今でも週1日は大学病院勤務を続け医療現場に立っています。医療現場から完全に離れると、その勘のようなものは失ってしまうと思ったからです。また大学病院は研究機関でもあるため、患者様が抱えている課題を直接聞く機会が多いこと、課題に対して仮説を立てた時に各科の専門医師と相談や議論ができること、簡易な検証がやりやすいことなど、多くのメリットがあると実感しています。

ー では、医療の専門知識を持ちながら、開発もご自身で行われているんですね。

そうですね。実際の現場で役に立つ最適なサービスを提供するためには、システム開発と医療の両方の知識があるだけではなく、その両分野において経験が必要と考えています。どちらかの経験が不足すると、実状に合わない製品が生み出されがちです。幸い両方の知識と経験があったため、開発に挑戦してみたいと思いました。 

ー ぜひ、開発されているプロダクトについても教えてください。

今回開発したディスプレイについても、以前からアイディアとして温めていたものでした。開発の切っ掛けは、私が救急隊向けのシステム開発をしていた時に、毎日10時間程度ディスプレイを見る状況が続き、眼を酷使しすぎたことです。眼精疲労が酷くなり、その直後に強い光過敏になりました。強い光過敏になったため、部屋を薄暗くしつつディスプレイの輝度も可能な限り下げたのですが眩しくて画面を見るのがつらく、作業を2-3時間するだけで寝込むようになってしまいました。仕事にならないため眼科を受診し、メガネの調整や目薬の処方を受け、1ヶ月程度休養することになりました。休養によって若干は改善したものの、仕事時間を増やすことはできず、このままでは起業した会社を続けられないと恐怖を感じていました。何とか改善できないかと模索し、眩しさという症状の特徴から、ディスプレイの光が一因ではないかと考えました。そもそも医学的には人の眼は反射の光で景色を見ていること、同じ文章を読む場合でも発光するディスプレイは眩しいが、反射光で見る紙は眩しさを感じにくいことから、反射光で表示するディスプレイが有効ではないかと考えました。実際に自身で試したところ、7-8時間の作業ができるようになりました。この改善によって仕事を失う恐れがなくなり、とても嬉しかったことを覚えています。この製品が他の人にもお役に立てるのではと思い、知人の眼科医師にこれまでの経緯について相談しました。そして、眼科的にも強いニーズがあると助言を頂いたため、更に改良を加え眼の構造に最適化したディスプレイを開発することを決意しました。

ー こうしたプロダクトを開発するにあたって、もしくは起業において刺激となったことはありますか?

刺激ではないかもしれませんが、あえて言うなれば知人の死でしょうか。私の周りで若くして亡くなられるということが、たまたまですが半年ほどの間で立て続けにありました。身近な人の死を見て、自分の人生もいつ終わってもおかしくないということに改めて気付かされました。そして、自分のアイディアを実現したいという思いがあり、生きている自分にはそれができるチャンスもあるのに、やらないままで人生を終えていいのかと強く疑問に思いました。またとない人生、後悔がないように生きたいと思ったことが大きいです。

ー 企業理念としてはどんなことを掲げておられますか?

最初の方でも触れましたが、一番大切にしていることは「患者様に医療として貢献すること」です。自分がやりたくて起業しましたが、医師という職業には誇りを持っています。そのため、自分が勤務医として患者様に提供できるメリットより、十分に上回るメリットを製品開発で社会に提供したいと考えています。
もう一つ大切にしていることは、本質を追求するということです。私たちはどうしてもわかりやすい見た目の問題にとらわれがちです。そして見た目の問題にとらわれている限り、根本的な解決はできないと思います。一例としては、私のディスプレイのエピソードが挙げられます。私の眼精疲労は「長時間作業の視覚作業の結果であり仕方がないもの」というわかりやすい診断でした。しかし、長時間の視覚作業でも、ディスプレイと紙では眼精疲労は大きく異なる(改善の可能性)という点には焦点が当てられていませんでした。様々な角度から細かく観察することで差違が見えてきます。その差違の原因が未知のものでも、或いは既に理論があるものでも、改めて自分で丁寧に検討することが大切と私は思っています。

ー 今後の目標を教えてください。

かつてはディスプレイを長時間使うのは、プログラマーなどの限られた人だけでした。しかし、スマートフォンの普及やIT化により、ディスプレイは生活に密着して切り離せなくなり、誰もが長時間使用するようになりました。ディスプレイによる悪影響は眼精疲労や視力低下などが漠然と知られていますが、実はこの10年で世界的に5%も近視の人が増えているという結果があり、その原因としてディスプレイが疑われています。この近視化は子供でも急速に進行しています。更に恐ろしいことは、今後も10年ごとの5%の全世界的な視力低下が続くと予測されていることです。健康寿命の維持のために、そして子供たちの視覚を守るために、何としてでも改善しないといけない課題だと考えますが、今の世の中的には仕方がないものという位置づけです。
しかし、ディスプレイが出てくる以前、書籍などで情報を得ていた時代にはここまでの悪化はなかったことを踏まえると、私は改善できる可能性があると考えています。ディスプレイによる悪影響の原因を特定し、世界の人の視力を守りたいと考えており、当社の製品が少しでもその貢献ができればと思っています。今後は学術的な検証を進め、人にとって適切な製品を追求していきたいです。

ー 求職者の方に求めることはありますか?

企業としてはあらゆる能力が不足している状態なので、どんな能力もウェルカムです。今の段階では特に営業職や、システムエンジニア・プログラマーを積極的に採用しています。採用に当たっては自ら考えることを重視しており、この事業に共感できる方をお待ちしています。創業して成長途中の会社であるため、いろいろと浮き沈みが激しく、とても困難な問題がしょっちゅう起きています。会社が潰れるかもしれないと思うようなタイミングもあるかもしれませんが、その時に乗り越える原動力となるのが事業への思いだと実感しています。スタートアップは肉体的にも精神的にも大変ですが、その分喜びも多くあります。ここまで聞いて、それでも!と思っていただける人は是非仲間として一緒に歩んでいただければと思います。


以下内容は、Essence research社によって作成・追記された内容です。

領域・分野 :医療
ステージ :Seed~Early
規模 :10人以下
特徴 :医師起業のスタートアップ
 
Mission・Vision・Value:
Essence researchはただ医療とITを組み合わせて事務的な効率化をするのではなく、患者様が実感できる医学的なメリットを提供することを重視しています。
患者様の病による課題の解決方法は医学だけには限られません。医学は病になった後の治療を主な対象としていますが、より患者様の幸せを考えると病にさせないことだと思います。そして癌や生活習慣病に代表されるように、日本人の死因の約50%(悪性腫瘍・心疾患・脳血管疾患・腎不全)は日常生活の影響を強く受けているため、解決手段も日常生活にあると考えています。病となるのを未然に防ぐ、悪化を軽減する、或いは病による生活や仕事に対する影響を改善することは重要な課題と捉えており、その解決に取り組んでいます。患者様を治したい方、患者様の笑顔を見たい方、子供たちの健康を守りたい方を探しており、一緒に挑戦する仲間を募集しています。
 
Service & Product:
①    Natural Light Desplay
光過敏にお悩みの方のための低光刺激ディスプレイになります。輝度を落としてもスマートフォンやPCの画面を眩しく感じて、強い眼精疲労に悩む方を対象とした製品です。当社は不快の症状に眩しさを伴うことが多いことから、バックライト(発光体)の光が一因ではないかと考えています。その対策として、眩しさを感じにくい紙に着目し、紙が室内照明などの反射の光で見ていることをヒントに、紙と同じように室内照明の光を反射して表示するディスプレイを開発しました。紙と同じ原理で表示するこのディスプレイは、眩しさや疲労感が紙と同程度に抑えられる特徴があります。スマートフォンやIT化でディスプレイが生活から切り離せない現在にとって必要なディスプレイと考えています。
製品HP:https://naturallight-display.com/
 
②    救急隊専用サービス「Ambulance-net.JP」
救急隊或いは病院のスタッフが病院の空きベッドの情報(空床情報)を登録し共有することで、患者様の搬送先を効率的に探せるサービスです。開発のきっかけはコロナウイルスの流行時に、患者様の搬送先の病院が見つからず死亡したという報道です。もし自分の家族が病院を探すという事務的な作業にこれ程時間がかかり、それが原因で死亡したら納得ができないと思い、対策が必要と強く感じました。開発の参考にしたのは施設と宿泊希望者をマッチングさせる旅行サイトです。病院と患者様を適切にマッチングさせ、迅速な搬送を実現させたいと考えています。
サービスHP:https://www.ambulance-net.jp/
 


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