パン職人の修造15 江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!
観客席ではどんどん人が増えてやがて満員になった。
ざわざわする中、審査員5人が着席して、司会の安藤良昌も出てきた。緊張が込み上げてくる。
安藤がカメラに向かって話し始めた。
「さあ!始まりました!パン王座決定戦。いよいよ決勝戦になりました。ここで審査員席の皆さんの紹介をしたいと思います。まず1番右が赤いドレスの印象的な女優の桐田美月(きりたみつき)さん、お隣が文化人の有田川ジョージさん、原料理学校校長の原隆(はらたかし)校長、アイドルの羽山裕香(はやまゆうか)さん、そしてお笑い芸人のマウンテン山田さんの5人です!」
モニターには5人が順に大写しになった。
「決勝戦は関東のパンロンド田所チームと関西のブーランジェリーサクマ佐久間チームの対決です。決勝のお題は『パンのフルコース』!合図の音と共に2チームが調理を開始します!審査員の皆さん5人で4品に点数をつけて貰い優勝者を決定して頂きます!結果は最後に発表になります!試食の順は人気投票で1位の佐久間チームのパンを先に行いまーす」
「それでははーじーめーーー!」
プアーーン!と音が鳴り2チームはそれぞれ1品目の前菜を作り出した。
3種類のパンにそれぞれ違う具材をのせながら「まさかまた被ってないだろうなあ」と修造と佐久間シェフはお互いに作ってるものをみて驚いた。佐久間シェフも3種類のパンのオードブルを作ってる!
江川も横目で見ながら「この人達気が合うのかも、、」と思っていた。
佐久間シェフは修造を見た。「ドイツで5年修業してきたそうだが、しょせん私の実力には及ばないんじゃないのか。ちびっ子が助手みたいだし。悪いが決勝でも私が勝つよ」
2チームのパンがそれぞれ5人の審査員の前に並べられた。
「さあ!それでは一品目のパンを審査して頂きましょう!試食はじーめー!」
佐久間シェフは、バルケット(舟形)のミニパイを使ったアミューズを作った。トッピングはパプリカとズッキーニ、レンコンとヒジキのサラダ、海老と玉子の3種だった。
修造の前菜は3種のタルティーヌを出した。トッピングはカブと柚子と生ハムをのせたサワードゥのカンパーニュ、干柿とクリームチーズのロッゲンブロート、トマトのブルスケッタ。
「美味しい取り合わせを考えました」と修造が、
「うちのカフェでも人気の取り合わせです」と佐久間シェフが説明した。
司会の安藤が赤いドレスの桐田を指しながら「では女優の桐田美月さん、感想はいかがでしたか?」と声を張って言った。
「はい、こちらの生ハムのパンや柿のパンはフルーティーで美味しかったです、パンとの取り合わせも素晴らしいです。このブルスケッタのトマトも美味しいですね」
「田所シェフ、説明をお願いします」
「はい。トマトは長野県の標高が高いところでできたんですが、朝晩の気温の差が激しい所で育ったトマトは昼太陽の光を浴びて光合成で貯めた糖分が夜消費されにくいのでとても甘いんです。ブルスケッタにはサクッとしたクラスト(皮)のバゲットを使いました。パンは3種類とも小麦の香りが引き立つ様に石臼挽きの全粒粉を配合しています」
「素材を生かした美味しさでしたね」桐田と安藤のコメントを聞いて江川は祈るような気持だった。「どうかパンロンドのボタンを押してくれてますように!」
「それでは2品目のパンを審査して頂きましょう!試食はじ~め~!」
佐久間シェフはシャンピニオンというキノコの形のフランスパンを使ったアンチョビとジャガイモのファルシ(詰め物)を。修造はニシンの燻製バインミーを出した。
またしても魚料理が被っている!
5人が試食をしてる間、真ん中に座っている原料理学校の原校長は食べながら分析していた。「ニシンの燻製は皮と骨を取り薄くカットしてレモンハーブソースで和えてある。乾燥したニシンがレモンソースを吸ってソフトになっていて、燻製の香りが香ばしく、ニシンの油をレモンとパクチーの爽やかさが良い感じに中和してくれる。そしてサクッとしたカイザーゼンメルの胡麻の風味が噛む事に口の中に広がる」
うんうんとうなづいてるのを見て江川はほっとしていた。
「校長先生うちを選んでくれないかな~」
「さあ!それでは審査をお願いします!」と安藤。
全員が自分の前の2つのボタンから美味しいと思う方を押した。
「皆さん押しましたか?それではお笑い芸人のマウンテン山田さん、感想をお願いします」
「はい、僕正直甲乙つけがたかったんですわ〜。どっちもめっちゃ美味しかったです。キノコの形のパンの詰め物もおしゃれやし、ニシンもサッパリしてて美味しかったなあ!うまうマウンテンですわほんま」
江川は「マウンテン山田さん、どっちのボタンを押すかな。。」とハラハラした。
その時、女優の桐田美月は感動していた。
「パンの審査ってどんなのかと思ってたらレベル高いわ。あの目力の強いシェフのパン、美味しかったわあ。次も楽しみ。ウフフ。。」
江川はあと2品の準備をする為に材料を手元に寄せた。
「あっっ!!!」
「修造さん!大変です!あの機械がありません!」
つづく
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