MPH取得5年後の振り返り
2017年に米国エモリー大学でMPHを取得してから、今年で早5年が経過した。私のMPH取得の経験は大学院修了直後に↓のように振り返っている。
ただ実際にグローバルヘルス業界で実務経験を積むと、当時は考え違いをしていたなぁとか、この観点は思い至らなかったなぁ…と反省することがある。もちろん自分なりに最大限の情報を集めて決断したことだし、時計の針は当然巻き戻せないのだが、思うことがない訳ではない。そこで本稿では、この5年間で新たに得た視点について考察したい。
大学院選び:ランキングは大事だが…
私は出願先大学院を選ぶ際に、大いにUS News等のランキングに依存していた。まぁランキングを参考にすること自体が間違いだとは言えず、ランキング上位校は教員数が多いし、教育内容が充実していて、卒業生のネットワークも大きい。ただ、もう少し深いところまで調べてから志望校を決められなかっただろうか?と今更思う。
例えば、私が今仕事で関わっている低・中所得国の保健財政政策という分野だと↓の修士課程の修了生や関係者がやたら多い。
まぁ↑じゃなくても同分野で活躍している専門家はいるのだが、もし上記の事実を出願前に知っていたら、このプログラムをガチで狙ったかもしれない。また第2・第3希望も、似たような教育内容の修士課程を他校で探したかもしれない。まぁ出願当時は将来やりたいことが曖昧だったし、仮に明確だったとしても、上記の情報を引っ張ってこれたか疑問ではある。日本人で保健財政政策の専門家なんてほぼいなかったし、私自身も仕事をしながらの留学準備で忙しかった。
エモリー大学のMPH課程自体には満足しているのだが、各校のカラーの違いや卒業生に付与されるイメージを考慮しても良かったかなとは思う。例えばエモリー大学だったら感染症や実地疫学に強いというイメージが強く(実際そうなのだが)、卒業生も同分野に偏っている。エモリー卒業生で保健財政の仕事をしていると言うと驚かれるし、同分野でエモリー卒業生には…今のところ出会ったことがない。
専攻選び:グローバルヘルス専攻って意味あるの?
本noteでは繰り返しになるが、グローバルな就活において専攻名は重要である。MPHと言われても、疫学専攻と行動科学専攻と医療政策・管理専攻だと学んでいる内容が全然違うので、専攻名を確認しないと求職者がTORにフィットするスキルを学んできたのか分からないからだ。
そうした前提の上で生じた疑問なのだが、「グローバルヘルス専攻」って何をシグナリングしているのだろう?と思う。↓で指摘されているように、グローバルヘルスは学際的分野である。学際的分野を専攻したと言われても、どんなスキルを身に着けた人物なのか正直分かりにくい。
まぁ「グローバルヘルス専攻」を選んだことを後悔している訳ではない。似た関心領域を持つ各国からの同級生と議論できたことは良かったし、逆に周りが全く途上国に興味がない米国人学生ばかりだったら、学生生活が辛かっただろう。でも「グローバルヘルス専攻」という肩書を得たことが就活にプラスになっている実感は…あまりない。これは例えば疫学専門家の求人のように特定のスキル(この場合は疫学)を持っている求職者を探している場合に、専攻名の影響が大きくなる。
授業選び:選択と集中は必要
当時の投稿を読み直すと、疫学、質的研究、医療経済学と手あたり次第勉強してた。確かに知識欲は満たされたのだが、どの分野に対する学びも中途半端になってしまった感は否めない。もうちょっと分野を絞るべきだったかな?と今は思う。
例えば私は修士課程で質的研究の授業を2つ取ったのだが、質的研究の論文は読めても独力で行えるようになった訳ではない。まぁMPHを取得しただけでは普通はそうならず、同分野での実務経験やPhDがなければ専門家を名乗ることは難しい。そこで疑問が生じるのだが、質的研究の授業を取った意味はあったのだろうか?代わりに別の授業を取った方が、後々のキャリア形成にプラスになったのではないか?実際にシステマティック・レビューやGISの授業等、取りたくても取れなかった授業はたくさんあった。
もちろん質的研究が重要じゃない!と言いたいわけではない。MPHは分野を絞らずに幅広く学ぶべきだと考える人もいるだろう。実際に当時私が相談した業界の先輩からは、質的研究は大事だから学ぶべきと積極的に勧められた。ただ、その先輩も質的研究者という訳ではなく、質的研究スキルがどう彼のキャリア形成の役に立ったのかはっきりしなかった。