海外展開では差別化も重要、わかりやすいネーミングも重要
例年、中小企業庁では「中小企業白書・小規模事業白書」を解説する講演会を開催されていますが、今年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、初めての試みとして解説動画を公開されました。
官庁もYouTubeを利用する時代ですね。
さて、白書に海外展開に関するアンケート記事がありました。
海外市場へ販売している中小企業は、製造業・非製造業にかかわらず6割がターゲットを絞り、価格以外の差別化を図っているという結果です。
出典 中小企業庁調査室 2020年版中小企業白書・小規模企業白書<講演用資料>
事例として、食品機械の開発・設計・製造・販売・メンテナンスを行う企業が紹介されています。
この企業は、どら焼機が主力製品で、職人のこだわりを再現できる機会の開発・改良を重ねることで国内シェア90%以上を占めるようになりました。
2002年にパリでの展示会に出展し、海外ではなじみのない餡の代わりにチョコを使用したどら焼きを配りつつ、この機械を「サンドイッチパンケーキマシン」として展示したところ、「ありそうでなかった」と大きな反響があったそうです。
現在、どら焼機の海外シェアはほぼ100%で、販売先は40か国に拡大、海外売上高比率も約2~3割に成長しています。
白書のこの結果からは、海外展開する日系企業は、まず国内の特定分野で差別化に成功し、その成功をもとに海外展開を果たしていることが見えてきます。
当初、白書のこの記事を見つけた際、海外進出後に現地のニーズを汲み取りながら、現地の企業にはない製品やサービスを提供している企業に関する記事かと想像したのですが、そうではなく、まずは国内で差別化に成功し、そのオリジナリティを海外でも提供する企業が多いことが推測されます。
つまり、日本のマーケットで成功して海外を目指すというのがこれまでのセオリーということなのでしょうね。
もう1点、事例でどら焼機を「サンドイッチパンケーキマシン」として海外に紹介していることに注目しますと、現地地の人がイメージしやすいネーミングはやはり大事ということです。
たかが名称、されど名称。単なる日本名の翻訳ではだめということなのでしょう。
最後に、差別化を図る際に知的財産が発生する場合、その知的財産をどこの国で保有するかで移転価格税制の議論が出てくることは覚えておきたい注意点です。
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