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安部かすみ:脱マスクから半年、NY市長「マスク外して」と異例の呼びかけをした理由


脱マスクから半年、NY市長「マスク外して」と異例の呼びかけをした理由(安部かすみ) - 個人 - Yahoo!ニュースNYは3年前、公共の場でのマスク着用を推奨し、義務付けた。ワクチン接種の浸透により着用規則が緩和され、現在は屋内外でのマスク着用は個人の選択となっている。そんな中、市長は異例のコメントを発表。news.yahoo.co.jp 写真(c) Kasumi Abe

ニューヨークでは昨年9月に公共交通機関でのマスク着用義務が撤廃された。それ以降、着用するか否かは完全に個人の選択となっている。
 
街中を見渡すと、現在多くの人がマスクを着けていない。
 
ただしマスク姿が皆無だったコロナ禍前の風景に完全に戻ったかと言えば決してそうではなく、店内でも地下鉄でも、ごく一部の人は未だマスクを着けて行動している。
 
マスク離れをしていないのはお年寄りだけでなく若い人もいる(冒頭の写真)。日によって異なるが、マスク姿は全体の1%ほどの割合だ。
 
そんな中、ニューヨークのエリック・アダムス市長は3月、市民に対して「店に入るときはマスクを外して」と異例の呼びかけをした。
 
朝のニュース番組「PIX11モーニングニュース」にリモート出演した市長は、その理由としてこのように話す。
 
「未だにマスクをして入店する人(の一部)は新型コロナの感染が怖いのではありません。彼らが恐れているのは警察に捕まることです」
 
白昼堂々と窃盗犯が高級ブランド店に押し入り、商品を鷲掴みで盗んでいる動画が、コロナ禍以降、ニュースやSNS上で頻繁に流れてくる。ブランド品ではないものの、筆者も実際にスーパーで食品や嗜好品を盗んでいる人を目撃したことがある。それも一度や二度ではない。
 
今日明日の食べ物に困って万引きをする人はごく一部のようで、「今起こっている窃盗の約97%が転売してお金に替えるため」と専門家は指摘する。
 
ドラッグストアでは現在、たった10ドルちょっとの頭痛薬でさえ、鍵付きの棚に入れられているのだ。
 
ブランド店で発生した窃盗の動画。コロナ禍以降、万引きを含む窃盗や強盗が社会問題になっており、このような目撃映像が日々SNS上で流れてくる。どの犯人も必ずマスクを着けている。
 
市内のほとんどの店は監視カメラを設置しており、マスクなしの犯人の顔を記録し検挙に繋げたい意向だ。市長は小売店の経営者に対しても、マスクを着用している客の立ち入りを許可しないよう呼びかけた。
 
ただし市長は、マスク着用自体を否定しているわけではなく、入店の際に顔が完全に見える状態であれば、入店後にマスクを着用しても構わないと補足した。
 
デイリーニューズなど地元紙によると、昨年発生した小売店での(万引き含む)窃盗・強盗事件の件数はその前の年と比べて4.5%増加したという。
 
今年2月の時点では、昨年に比べて10%減少したという報道もある。しかし昨年と比較して減少しただけであり、今年も同様の事件は起きている。つい最近も比較的治安が良いとされているアッパーイーストサイド地区のデリの店員が強盗犯に射殺される事件が起こったばかり。「マスクを外して」という異例の呼びかけは、これらの犯罪への対応に苦慮する市が考えあぐねた末の苦渋の決断なのだ。
 
 
Text and photo by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止
関連You Tube https://youtu.be/rUz2acw2ep0


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