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トランプ氏の書簡を考察:赤を入れるとこうなる

少し前の書き忘れていたネタを。

トランプ米大統領が北朝鮮最高指導者の金正恩氏に向けて送った、米朝首脳会談の中止を通告する書簡。

これが日本語訳された情報も沢山出ています。

意味は間違っていないのだけど、何となくニュアンスがフィットしない訳のものも(苦笑)

英語的表現を日本語訳すると、しっくりこないことって結構ありますが、

これはニュアンス的にいいかなということで、参考までにロイターの記事から書簡全文の訳を。

このトランプ氏が書いた書簡、相手にお礼を言いながら、ちょっと心にタッチするような「(sadly)悲しですが」や「(feel)感じています」いう表現を入れながらも、問題としている事柄にズバッと切り込み、会談の中止を申しつたえている。

その上で、「気が変わったら電話でも手紙でもちょうだいな」と言っている。

そして最後の締めくくりに、「(truly sad)本当に悲しい」と気持ちに訴える言葉を駄目押しかのように用いている。

これをトランプ氏自身が書いたのか、それっぽい文章を違う人が書いたのかは別として、うまく相手に響く書き方をしたように思える。

同じ状況と問題がカナダやヨーロッパの国相手に起こっていて、同じことを伝えなくてはならないとして、この文章になっただろうか?というのが気になるポイント。なぜなら、sadやfeelなど、わかりやすく感情を表す言葉を意識して入れているかのように見受けられるから。

やはり、アジア諸国は英語圏ではなく、英語的ロジカルな表現は「難しく=冷たく」感じさせたり、気持ちを遠く感じさせたりすると踏んた上でのこの文章表現になったのでは。

そして、難しい表現も単語も用いていないのが、この文章の特徴。

確かに英語ネイティブの赤ペン先生から正しいレターとしてチェックが入ると、こんな風に真っ赤っかにされ、「F(Fail・落第)」をつけられ、「放課後いらっしゃい、ドナルド」的な扱いになるということも言えるのですけどね。

このレターに英語ネイティブではない私が、ダメ出しとして言えることがあるとしたら、「サインが大きすぎやしませんか?という部分でしょうか。

文末に書く結びの言葉、日本文でいうところの「敬具」に当たる"Sincerely yours" の上に自分の黒々と太く大きなサインがかぶっていて見えませんから。

アメリカ人的には突っ込みどころ満載だったかもしれない書簡でしたが、その効果はあり、先日北朝鮮の朝鮮労働党副委員長である金英哲氏が金正恩委員長の親書を持って訪米。それを受け取り、トランプ氏は「日朝首脳会談は予定通り6月12日にシンガポールで開く」と発表。トランプ氏の策は功をなしたと言えるのではないかな。

日本語でもそうですが、どんなに立派な文章でも、意向が伝わらなければ意味はなく、話を前に進めることができなければ何もならないと言うこと。

また、手紙を受け取る相手が、その言語のネイティブでない場合、その言語的に正し買ったり、大人の文章表現として正しいばかりがすべてではない。

伝える相手をよくリサーチして、最も伝わりやすい方法をとる。実はこれが何よりも重要。

「伝えた」ではなく「伝わる」、そして相手を「動かす」ことが大事とつくづく思うトランプ書簡の一件。

そして、北朝鮮側は「さすがに電話じゃなかったな。やはり顔を出すことって大事」と思ったことも付け加えておきます。

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