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感想:映画「冷静と情熱のあいだ」

2001年の映画。当時は16歳だったが、映画館で観た記憶がある。
ENYAの音楽がとても印象に残っている。ただ、記憶というのは曖昧なものだ。30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオーモで会おうと誓った約束が、僕の記憶では、パリのノートルダム大聖堂になっていた。何かの映画と間違えたのか、あるいは、誰かと結ぼうとした約束を覚えているのか。

あおい(ケリー・チャン)と順正(竹野内豊)。19歳から20歳にかけて、こんな大恋愛をしたというのは素晴らしいことだと思う。だからこそ、お互い惹かれあい、忘れられなかったのだろう。お互いを思っていたから良いものの、下手をするとストーカーになってしまう。ストーカーまでいかなかったとしても、どちらかの人生を崩してしまう。それを判断する冷静さと、それでも感情を出してしまう情熱があったということか。

芽実(篠原涼子)が健気で仕方ない。映画の尺の都合上、あっさりと振られる感じもするが、長く付き合ったし、語学学校を中退してまで一緒に日本に帰ってきているのだから、芽実の愛情もすごいものだったのだろう。ただ、そのような犠牲をテコに、彼の気持ちを取り戻そうとするのは難しい。

その意味では、あおいと順正だって犠牲を払っているのだが、彼らは相手の気持ちを取り戻そうとする犠牲なのではなく、自分の心を整理するための犠牲のように感じる。もちろん、それだけではいられない情熱も彼らには持ち合わせていたと思う。

順正の、芽実に対する言葉。
「俺が好きなのはあおいだから。忘れようとしたこともあった。君を受け止めようとした時もあった。けど俺は、変わらずにあおいを思っている。この先二度と会うことがなくとも、俺はずっとあおいを想い続ける。」
自分の心に妥協できない、不器用な順正。芽実の気持ちなんて置いてけぼりだ。
ただ、この気持ちは分からなくもない。僕も順正と同い年くらいの時に、似たようなことをしてしまった。自分が相手からの愛を受け止めて、自分からも愛したものの、相手の気持ちが冷めたような行動をきっかけに、自分も気持ちが冷めるというような。

宝石屋の女主人の言葉。
「あおい、自分の居場所は、誰かの胸の中にしかないんだよ」
だとするならば、あおいは現在のパートナーである富豪のマーヴの胸の中にいることもできた。だけど、順正と再会したことで、そして、順正からの手紙をもらったことで、順正の胸の中にいられると信じたのだろう。たとえ、2人が結ばれることがなくとも、そう信じられたのだろう。

あおいの、マーヴに対する言葉。
However it turns out, it's my whole life. It's more important than anything else. Jyunsei is everything.
マーヴだって、あおいの心を待ち続けた。本当に自分にはどうしようもできず、やり切れない気持ちだったに違いない。なぜ、という気持ちがあっただろう。その、「なぜ」に答えてくれただけでもあおいは優しいと思う。

あおいと順正のハッピーエンドはあくまでも虚構だ。文庫版の方が虚構らしさが薄かったような記憶もある。僕は、特に30歳までは、If...を追い求めて行ってしまうようなタイプだったが、実現することはまずなかった。逆に、追い求めるからこそ、人を傷つけたことも多かったのではないかと思う。

未来への約束。
中学生の時は、GLAYの「3年後」に憧れた。
3年経ったらあの木の下で、もう一度だけ会えないかなぁ?

高校生の時は、ZONEの「secret base~君がくれたもの~」に憧れた。
10年後の8月、また出会えるのを信じて。。。

こういう未来への約束が果たされると、それまでの想いが一気に溢れ出すような、素敵な恋愛になるのではないかと夢見た。こんな、16歳で憧れた大恋愛も、35歳にもなると、こんな人生に憧れたな、と過去のこととなってしまうのが悲しい。

だって、10年後の約束をしたら45歳だよ?

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フィレンツェに1日だけ出張した際にドゥオーモに訪問。行列で中には入れなかった。

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