酒がまわっていなければ言わないようなことは言うべきではないことだった

1月22日(水)

夕方わりと大事な会議があるのを忘れて歯医者の予約を入れてしまったので、思い切って会議をぶっちぎって早退することに。届けを出して、退勤して歯医者に向かう。抜歯した箇所が痛いと訴えるも、「大丈夫です。昨日の今日なのにもう傷口がふさがっているから回復が早いです」と言われた。痛みを放置して病院に行かないでいると怒られるのに、病院に行って痛みを訴えてもわりとないがしろにされるな。

今日の治療は昨日の親知らず抜歯後の傷跡を消毒するだけでものの3分で終わってしまい、それから戻ってもふつうに会議に間に合った。けれどもちろん予定通り早退した。

今日は大門駅で前職の同僚Mと会うことになっていた。早退したおかげで待ち合わせまでかなり時間があったので、プロントで日記を書いて時間をつぶす。Mも早めに現れたので、夕飯には早い時間だったが予約していた個室肉バルに向かった。Mが予約してくれた店だったのだが、肉バルをうたいながら肉料理はぱさぱさの鶏ばかりだった。個室は空調が効かなくて外と同じくらい寒いし、店員は無愛想で世界一態度が悪いし、食器は百均とおぼしきプラスチックだった。サラダの取り分け用のトングはバネが壊れていて手を離すと180度近く開脚する仕様だったので爆笑した。皿に収まらないトングって何。

一品一品は高くないし早々に二軒めに行くつもりで料理も酒もほとんど頼まなかったのに、会計が異常に高額で、完全にぼったくり居酒屋だった。

店を出て田町方面に向かって歩く。ぼったくり居酒屋で冷え切っていたので歯をがちがち鳴らして寒い寒いと言っていたらMに手をつながれた。

二軒目に入った店は、暖房が効いて暖かくて店員がにこやかでトングが開きすぎなくて牛肉が美味しくてよかった。

これまではいつも2人で飲むときにワインをボトルで頼んで、酔っぱらったMがあのころ一緒にやっていたチームの仕事を振り返って思いだし泣きしたり、「嫁には性欲が湧かない。君とまたしたい」とかくそみたいなことを言い出して同じく酔っぱらった私がキレたりしていたのだけれど、今日は私が酒をほとんど飲まなかったので、向こうも私に合わせてペースを落としていて、終始穏やかに会話をしていた。ああこっちの方がいいなと思う。
昔、私がこの人にうっかり「好き」と言ってしまったときも、私たちはべろべろに酔っぱらっていた。酒がまわっていなければ言わないようなことは言うべきではないことだったのだと、酒を飲まなくなってみて心の底から実感している。

久々にさわるMの手は、かさかさに乾燥していて、記憶の中の手触りとまったく別物だった。美意識が高くて自分の身体に気をつかう人だったけれど、自分のことより大事なことができたんだな、水まわりの家事もちゃんとしているんだろうな、と思う。

だけど私はこの人の、白くてなめらかで、いつだって自分勝手にしか動かない手指が好きだったのだ。かさかさの手で私の手を暖めるように包み込んだりしなくてよかった。

田町駅に着く前にどちらからともなく手を離す。JRの改札前で別れて、私は地下鉄の方向に向かった。

(その後帰宅して、アンジュルム室田さんが3月に卒業するため船木さんの卒業が延期になったというニュースを知り、私は混乱に陥るのだけれど、ちょっと気持ちがまとまらないので今日はこれには触れないでおく)

#日記 #エッセイ #恋と似て非なるもの

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