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捨てられた子猫を胸に抱えて帰るような

10月18日(日)

部屋が寒い。寒すぎる。体を温めるべく、起きてすぐ軽めのダンス動画に合わせて動く。
とにかく日記の編集作業をひたすら進め、ある程度進んでからオートミールで朝ご飯。喫茶店に行きたいけれど自分でコーヒーを淹れる。そしてまたひたすら編集作業と筋トレダンス。

午後は気分転換に溜まった日記を書いた。
夕方日記をアップして、部屋着のスウェットとフリースのまま外に出る。日中の太陽の温かさがまだそこかしこに残っていて、家の中の方が寒いくらいだった。いい天気の一日をずっと家の中で過ごしてしまったんだなと残念な気持ちになる。夕暮れ一歩手前の空気はオレンジがかっていて、とろみを帯びてやわらかい。秋だ、と思う。
近所のまいばすけっとで買い物をして、セブンに寄ってタコスミートも買って、家に帰りつくころにはもうすっかり日が暮れていた。

楽しみにして購入したきり、自分の書き物の〆切に追われて読めていなかった山本文緒『自転しながら公転する』をついに読み始めた。文章がするすると入ってくる。冒頭で明かされるタイトルの由来のエピソードがすばらしい。
三十代前半で親の看病や恋愛や仕事の人間関係に悩む主人公・都に感情移入するけれど、ただ共感するだけでは終われない。都の決して褒められたものではないエゴイスティックな感情や年齢の割に幼い部分も淡々と描かれていく。綺麗事でない、わかるわかる〜では済まない、このフラットな語りの距離感が好きなのだ。都だけでなく、最初は理解ある親のように見えた都の父親や、都の恋人・貫一の一筋縄でいかない様々な面が読み進めるうちに次々見えてくるところもすごく良い。
夜はまた編集作業。風呂上りはパソコンに触らず、マッサージなどして寝る。

10月19日(月)

早起きして編集作業を進める。この三日間の自分に課した進捗ノルマはひとまず達成できそう。
というわけで朝サウナに行くことを自分に許す。ルビーパレスに行って二時間しっかり汗をかく。遠赤サウナで三十分弱まどろんで、連日のパソコン作業で煮え立つ頭も冷えきった体もすっきりした。

最小限の化粧をして、午前中のごちゃつく歌舞伎町を抜けて伊勢丹まで歩いていく。目的はMACのホリデーコレクションの実物を確認すること。気になっていた12色の星座アイシャドウパレットは想像通り、色味も発色もすてきだった。同じく気になっていたベリー系の色味のリップキットは買わなくていいやと思えたので、アイシャドウのみ予約。すでに公式のオンラインショップで販売開始しているのは知っているけれど、予約してまた伊勢丹に受け取りに来る日を楽しみにしたかったのだ。
ライダースを買ったときの一件でも思ったけれど、自分のテンションを上げるための買い物は、やっぱり実物を確かめて店頭で買うのが一番いいという結論に至る。

メイコがレポしていたITRIMのカウンターでオイルやゴマージュを試させてもらう。どの商品もよさそうだったけれど、ふかふかの大判コットンが一番感動したとは言えなかった。素敵な接客を受けて心が満たされる。
今月はもうたくさん服を買ったので、二階以上のアパレルブランドはざっとパトロールするにとどめた。どこか新宿の純喫茶に寄ってから帰ろうと正面出口から外に出たらまさかの土砂降り。朝天気予報を見たら、今日は終日曇りとなっていたからライダースを着てきたのに!!(でもみんな折り畳み傘をさしてたから、私が天気予報を見間違えたのかも)

新宿の純喫茶めぐりは断念したが、このまま帰るのもさみしい。予定を変更して伊勢丹地下から都営新宿線に乗り神保町に向かう。先日初めて訪れた神保町の喫茶店・トロワバグが駅からすぐ近くだったので、小走りでそこに向かった。鯖のサンドイッチとブレンドでランチ。

鯖サンドはボリュームがあってカレー味で美味しい。スイーツ系も気になっているのでまた来る。ブレンドのお代わりももらって『自転しながら公転する』の続きをじっくり読んだ。
店を出るとさっきよりひどい土砂降り。雨宿りのつもりだったのに完全に裏目に出た。
神保町駅まで走り、最寄り駅に着いてまた走って家に帰る。雨の中、ライダースを丸めて胸元に抱えて走るのにもすっかり慣れた。
強くて颯爽とした女になりたくてライダースを買ったのに、毎度、雨の中捨てられた子猫を胸に抱きかかえて帰る心優しい人みたいなスタイルになってるのはなんでだ。
大人なんだからビニール傘とか買えばいいだけなんですけどね。ってか雨女なんだから折り畳み傘を持ち歩けって話なんですけどね。

帰宅して『自転公転』を読了。山本文緒は中学生の頃に『ブラック・ティー』と出会ってからずっと好きで、著書も全部読んでいる。二十年近くずっと好きな作家の新刊が読めて、変わらず好きだと思えることがめちゃくちゃ幸せだと思う。

10月20日(火)

仕事が正念場っぽい感じの日。きちんと準備していたのでノーミスで完了。さらに事後処理も、リモート部屋に引きこもって猛スピードで進めた。唯一のミスは昼食用のオートミールを自宅から持ってくるのを忘れたこと。近所のデイリーでレトルトおでんを買ってきて食べた。
午後いっぱい働いて予定通り五時前に退勤する。
T氏と落ち合って神楽坂の台湾料理屋へ。元々ルーロー飯と豆花にはまっていたのだけれど、バチェロレッテの台湾編を見て紹興酒や台湾屋台飯への欲望が抑えられなくなってしまった。ビールとつまみを頼む。馬告(マーガオ)という台湾のスパイスが売りらしいので、馬告水餃子を注文。小籠包のように肉汁のスープがたっぷりで、スパイスが効いていて何もつけなくてもめちゃくちゃ美味しい。

テンションが上がって紹興酒を何種類も飲んだ。その後頼んだ焼き餃子やパイ包みも酒に合って幸福。最後に頼んだルーロー飯も絶品。紹興酒がそれほど得意でなく、炭水化物もあまり食べないT氏の分まで、私がばくばく食べた。
美味しい屋台料理を食べながら、ひたすらバチェロレッテの話をしていた。5話6話が演出過剰だった話、萌子さんの険しい顔が増えていった話、一番有力株っぽい人がどう見ても他の男性陣に対して性格が悪いふるまいをしているけれど、それを見ても萌子さんが彼を落とさないということはやはりキャラを作っているのか、という話。
それから、7話で残った男性陣の家庭訪問をするのが嫌だといったら、T氏もわかってくれて嬉しかった。自分が結婚するときの両家顔合わせで、自分の父親が夫の姉妹にセクハラ発言をして笑っていたことを話して、「私はあんな父親を萌子さんに会わせられない」と言って泣くなどした。我ながらくそ面倒くさい酔っ払いだな。

数駅の距離なので、腹ごなしに歩いて帰る。なんだか見たくない過去の引き出しを開けてしまったようで、帰ってからもしばらくめそめそしていた。バチェロレッテ(と紹興酒)おそるべし。

10月21日(水)

体重は増えたが紹興酒は全く残っていない。よいことだ。昨日に引き続きハイペースで仕事を進めた。会議が二本あって、ものすごく時間をとられた。
自分の仕事は順調だったけれど、打ち合わせなければならない相手が有給をとっていたので手詰まりになる。夕方退勤。
帰って日記本の編集作業を進める。仕事の後は到底こんな神経を使う作業はできないと思っていたのに、やればできるものだ。夕飯は飽きずにオートミールのキムチ炒飯。
作業が佳境なので週末にビジホでホテル缶詰でしようと思いつき、GOTO割引と貯まっていたポイントを使って予約した。朝食付き大浴場サウナ付きなのに実質1500円で泊まれるらしい。普通にサウナに行くのと変わらない。

10月22日(木)

引き続きハイペースで仕事。部署の女の先輩と二人でランチに行く約束をしていたので一時ごろ出かけた。辛いもの食いてえ、と言い合って近くの美味しい担々麺を食べに行く。女子ランチとは。ひとしきり部署のパワハラ同僚の愚痴と、来年度の人事の話をする。帰りにコンビニに寄ったら先輩がアイスを買ってくれて嬉しい。熱い辛いもの食べた後に冷たい甘いもの食べたくなるのは自然の摂理。
オフィスに戻ってデスクでアイスを食べていたらぼたぼたとこぼしてしまった。
早めに退勤して渋谷のゴッドハンド整体に向かう。そのために前倒しで仕事を進めていたのだ。かつて激痛だった下半身の施術は、筋トレの成果かちっとも痛くなくなったけれど、首肩周りは相変わらずで、鎖骨と耳の間の首のごりごりした部分を骨から引きはがされて押しつぶされる。第一肋骨? が上に上がっている、顔が前に倒れていると指摘される。施術が終わると首が長くなって顔の下半分がきゅっと小さくなっていて嬉しい。渋谷で喫茶店に寄ろうかとも思ったけれど、前に来た時よりかなり人出が多かったのでまっすぐ帰宅。編集作業を少し進める。担々麺とアイスをなかったことにすべく、ハンドクラップを30分やった。
深夜12時ちょうどにバチェロレッテの最新話が公開されるのですぐにでも見たいけれど、そんな夜更かししたら翌日の仕事に響くことがわかっているのでちゃんと寝る。今日早寝して明日朝早起きして観ればいいのでは?! という気になって22時に布団に入った。

10月23日(金)

当然のごとく起きたらいつも通りの時間でしたね。いつもより一時間長く寝ただけでしたね。整体効果かぐっすりよく眠れました。

バチェロレッテが気になってそわそわしながら仕事をこなす。昼食のオートミールをクノールのコーンクリームスープでリゾット風にして食べた。予想通り美味しい。だけど物足りなくてお菓子をばくばく食べてしまう。本末転倒だ。
仕事をきちんとこなして退勤。
推しの卒コンの日程が発表された。覚悟していたこととはいえ、年内で卒業と言われるとやはり受け入れたくない自分がいる。落ち込みつつ卒コンの申し込みを済ませる。

あげは嬢が紹介してくれた放送大学の某講座の受講手続きをして、夕飯のオートミールチャーハンの用意をしてからバチェロレッテ7話を見た。
実家訪問回は案の定憂鬱だった。ある参加者の母親がかなりパンチが強くて、ネット上では「あの母のせいで〇〇は落ちるだろう」などと予測もされていた(それもあって観るのが憂鬱だったのだ。リアリティショーとはいえ、誰しも自分の親や家庭は選べないのだから、第三者がそれを好き勝手言っている状況がきつかった)のだけど、萌子さんはそんなお母さんに対しても誠実に向き合っていて本当に素敵だった。いわゆる彼宅訪問コーデではなくて、自分らしく、かつそれぞれの家庭の雰囲気に合わせた装いをしていたのも素晴らしかった。

第8話はこれまでに脱落した男性たちがスタジオに集ってぶっちゃけ話をするという特集回だったのだけれど、私の大嫌いなテレビのバラエティ番組ノリと男子校ノリが合わさって本当に嫌な感じだった。そうだ! 私こういうノリが嫌いで嫌いで仕方なくて、だから普段テレビ観ないし男性の集団も苦手なんだった! と思い出した。
途中で観るのやめればよかったのだけど最後まで観てしまって本気で後悔した。男性たちやゲスト出演者がシリーズ中の萌子さんの言動を揶揄するようなことを言ったり、スタジオでの萌子さんが丁寧に話しているのを遮ったりするの、見ていて本当に耐えられなかったな。「お空は毎日違って、曇っていても美しい」と感じることができる萌子さんの感性の豊かさと、それを理解できなくてネタにしていた男性陣(ついでに、「そういう風に感じるのは女性だからや」とクソ雑にまとめようとしたナイナイの矢部。おまえ、岡村よりまともみたいに世間で言われてるけど大して変わんないからな)。この男性たちを落とした萌子さんの見る目の確かさに感服するしかない。件の実家訪問回で物議をかもした某参加者の母親がスタジオに現れたのも、萌子さんはつらかったんじゃないかと思って心配になった。振った相手の母親に会わなきゃいけないの酷すぎるだろ。誰得なんだよそのテレビ演出。
バチェロレッテ、1~4話はめちゃくちゃ面白く観たし、萌子さんの人間性が本当に素敵でほれ込んだからこそ、7話8話は観るのがしんどかった。
最終回も正直不安しかないけれど、萌子さんなら自分の心に正直に最善の決断をしてくれると信じているので、ちゃんと見届けます。

10月24日(土)

やっと週末。自転車操業で仕事をこなす。ストレスでお菓子をばくばく食べてしまうのが止まらず。生理前のせいにしよう。自分を必要としてくれる人たちと一対一で話して、心が落ち着く。遅い時間まで働いて帰宅。

帰宅して即、日記本の編集作業に取り掛かる。夕飯はオートミール。食べ足りなくて口寂しくて、出汁用の煮干しやレーズンやカニカマを延々食べながら編集作業を続ける。
メイコに表紙のデータ作成を依頼するにあたって、早々にページ数を確定しなければならなくて急ピッチで作業を進めていたのだけれど、やっとその作業がひと段落着いた。メイコに進捗状況をメールする。

今日はここまでにして風呂を沸かしに行こうと思ったら、床に座った状態からどう頑張っても立ち上がることができなくてびっくりした。一日中暴食していたので空腹のせいではない。一週間の疲労、仕事のストレス、バチェロレッテ7・8話への不満(笑)、推しの卒業発表による精神不安定、終わりの見えなかった編集作業の見通しが立ったことへの安堵、まあいろいろな要因が考えられた。
立ち上がれないのでそのまま仰向けに寝転がる。電球が1つずつ切れていくのを見ないふりして、ついに5つとも電球が切れたシャンデリアが真上にあった。寝転がった床には段ボールや衣服や本が散らかっている。そういえば、玄関の電気も切れているし、ガスコンロの電池も切れているのだった。コンロが使えないから、電子レンジで作れるオートミールレシピの達人になってしまったよ。

私も電池切れみたいです。
それでもツイッターはできたし、ツイートしたらそんな自分を客観視できて落ち着いた。スマホの電池も残り1パーセントだったので充電器につなぐ。そうこうしているうちに自分も少しずつ充電されていく感覚があったので、お風呂を沸かすべくずり這いで動き始めた。動き始めてみたら四つん這いになれたし、四つん這いになったら立ち上がれたので、あっけなく人間に戻れました。
長めに風呂に浸かって、筋トレもストレッチもしないですぐに寝た。

#エッセイ #日記 #バチェロレッテジャパン #福田萌子 #山本文緒 #自転しながら公転する

日記を読んでくださってありがとうございます。サポートは文学フリマ東京で頒布する同人誌の製作(+お酒とサウナ)に使わせていただきます。