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祈りについて

「祈り」という言葉について想像するたびに浮かんでくるイメージがあって、光――雲間から差しているような金色の光に満ちた眩しい空、そびえたつ白に近い灰色の塔(装飾もないつるりとした壁、空を貫いてしまいそうなくらい高い)、塔の周りを飛ぶ鳩の群れ、そしてしなやかな白い手と皺のある老いた女性の手が編む真っ白い糸。
今現在のわたしの「祈り」に対するイメージだ。

前からなんとなく、祈りは編むもの、思っている。古来より続く女性の手仕事と重ねているのかもしれない。

白く輝く糸を編んでいくと、それはするすると空へ昇って行き、塔に収められる。

きっと塔の中には、ひとびとの祈りによって編まれていく美しいタペストリーがあって、ある部屋には薄く白い布がいくつも垂らされ、揺れ、それらは小さな窓から差し込む陽の光や月光によって、オパールのようにオーロラのように色とりどりに輝くのだ。(そしてそれをたまに鳩たちが覗きに来る)


どこから来たのか、そういうイメージが、ずっとずっとわたしの根底にある。


この世には数知れない分断があり、それにはささやかなものもそうでないものもあるが、祈りとはそういう分かたれたものを結ぶ方法のひとつではないかと感じている。

結ぶ、繋げる、ということがいつも正しいとは限らないけれど。

それでもわたしは、わたし自身が持つ「祈り」のイメージによって、どうしようもなく希望を持ってしまう。救われてしまう。

祈りを編み、たまに触れ合う指先で、伝えること。歌うこと。少しだけ目を合わせること。

わたしたちは、きっといつか救われる。救われてしまう。