見出し画像

過去の日記3

噛み砕いた夜の、片隅の白い星、散り散りになった祈りのなり損ない、痛み、痛みだけがわたしを鮮明にする、命を燃えあげる、残酷、蹲り祈る、祈る、いまわたしを支配するものは何だ、それを誰かが神と呼んでも、わたしは首を振る。

絶望は雲一つない青空のもとに与えられる。わたしはわたしがどこへも行けないことを知っている。知っている。それは破壊される。生きろ、生きろ、生きろ。血反吐を吐いて痛みに呻き神による支配を振り払いながら、生きろ、生きろ、ただあなたとして。わたしとして。


画像1


Twitterに限らず口下手で、なんだか甘えとか言い訳になってしまっていやなのだけどどうしても上手には喋れなくて、美しいものを見せていただいたり優しい言葉をかけてくださったりすると胸がいっぱいになってぐるぐるして、その想いを「言語」にできなくなってしまう。あこがれのひと、すきなひとに、本当は話しかけたいのに、ちらちら見ているばかりとか、そういうことが大人と呼ばれる年齢になってもいまだにたくさんあって、なんとかならんかなと思う。

言いたいのは単純な、でも大切なことだ。
お元気ですか。今日も生きていてくれてありがとう。心からの感謝を、薔薇のはなびらのようにあなたに贈ります。

あなたを愛しています。


画像2


かつて野に生きる一匹の獣でしかなかったわたしに、あなたはくちづけてくださいました。あなたはわたしに言葉を教え、もう一度、最後に、見開いた瞳にもくちづけてくださいました。すると両の瞳に見えるものは遠く霞み、かつて魂の中心に合った業火は失われ、牙は丸く薄い皮膚を切り裂くことさえ許されなくなりました。わたしは人間になりました。そうしてあなたは去っていきました。

怒り。これは怒りでしょうか。わたしをわたしでないものにしたあなたへの。それともすでに失われたはずの残り火でしょうか。火は全身に映り、瞳から涙を溢れさせます。ああ、あなたが、あなたが、わたしをこのようにした。してしまった。何も知らぬままに世界を享受できていればそれでよかったのに。

あなたは微笑み、去っていく。


画像3


なかなか難しいことだけど、自分が悪いことをしたと思ったら言い訳せず素直に「ごめんなさい」を言える人間でありたいと思うし、かといって不必要・不自然なほど「すみません」「ごめんなさい」を繰り返すのも(相手を含む)体と心と健康によくないと感じるので、これからは本当に悪いなと思ったときのみ真摯に謝ることにしたい。

何でもないことですぐに謝ってしまうのはもはや口癖で、悪癖である。嫌われるのが怖いから、怒られたくないから、傷つけられたくないから、先に謝ってとりあえずの予防線を張っておく。そういう習慣はもうここで終わりにしたい。予防線を張れば張るほど、「弱者」を嬲りたい人間が寄ってくる。自分の中の何かが歪んでいく。それではだめだ。

剣を持つ者は皆剣で滅びるのかもしれないが、人間として現代を生き他者と交わり生活をしていく上で、時には牙を剥いて威嚇をしなければならないときもあるし、自分を守るために剣を、そして強い言葉を持たねばならないときがある。少なくとも、今はまだ。(つまり未熟なのだ。)

いつか剣を手放せるときがくるだろうか。それとも剣は剣のままで、しかし鱗のように錆や念が落ち、水晶のように透き通り、銀色の蔦が巻きついた、美しい姿になるだろうか。それを己の中心に収めて、しなやかに踊り生きることができるだろうか。


画像4


朝のわんこの散歩。近くの野原に最近いる鳩の一団が、昨夜の嵐など何もなかったような顔で、しきりに何かを喰っている。昨夜はどこにいたのだろう。家から野原までの道に、トトロがどんぐりを落としていったように、たくさんの美しい鳩の羽根がぼつぼつと落ちていた。

祝福だった。人を傷つけ死を希うわたしにも、祝福は降り注ぐ。

朝露のかがやき。澄んだ空気の粒子の細かさ。やわらかな光の角度。優しい人の声。植物たちの真っすぐなエネルギー。喜び。

何百回、何千回繰り返した、悪魔的で醜悪な獣のような夜。頸動脈に刃物をあてて、それでも死ねなかった夜。呪詛を吐き、やさしいものすべてを憎み、塗りつぶし、引き裂いて、壊して。慎重に口を噤みながら奥歯を必死に噛み締めながら嗚咽することしかできなかった夜。

そういう夜は心も体も疲弊させてしまう。夜が明けても、病が少しだけ癒えても、また繰り返すそのときに絶望してしまう。うんざりしてしまう。ここで終わらせたくなってしまう。

首をくくるとか。

示される解決策はシンプルだ。
その先に何があろうとも、地獄のほうがマシなのだ。

脈々と受け継がれた血、繋がれたロープ、やさしい誰かが結んでくれたリボン、「生きていかなければ家族に悪い」「死んでは迷惑をかける」という鎖、がんじがらめになってようやく生きていて、でもそういうものはすり減っていく。切れてしまう。自由になって、さあ、崖の上から飛び降りようと。