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過去の日記1

頑なに握り締めていたものを手放すことになった。たぶん生まれる前から自分の中にあるそれはとてもかたく、激しく、荒々しく、わが身を焼く火刑の火のようだった。ひどい苦痛と激情をともなって、それは私を焼いた。雁字搦めにされて全身を焼かれると、それは地獄の業火となって冷酷な看守のように私を責めぬく。

私はもはや囚人だった。罪人だった。自らの手で薪を集め、足元に敷き詰めて、火を放った。その先にあるのは苦しみと痛み、絶望、失望、悲哀、そして憎しみだった。いつしか私は独房の中で自らを焼く囚人になっていた。

なのに、どれほどの苦痛に苦しんでも私はどうしてもそれを手放したくなかったし、この一生で手放せるとも思っていなかった。それがなくなったら私は私じゃなくなると思ってた。人間として生まれたことへの裏切りだとさえ感じていた。

あるときそれがまったく別の何かになるのがわかった。一瞬のうちに、決定的に変化する。霧や光に似た、やわらかく、流動するもの。