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憧れの人、島村卯月

 久しぶりにアニメ『アイドルマスターシンデレラガールズ』第24話『Barefoot Girl.』を見ました。多分、もう100回近くこの話ばかり視聴し続けている訳ですが、何度見てもよい。
 笑顔を失った主人公『島村卯月』のあまりにもリアルな焦燥感は心を打つし、それを支え見守ってくれる仲間たちは暖かくも羨ましい。演出面も非常に洒落が効いており、卯月の心に青信号が灯り、内にある星を思い出すシーンなどは9年経った今でもジーンと来るものがある。
 やはり、島村卯月は……最高です。持たざるものであるからこそ、私の心を強く打ってくれる。

 彼女の沈んだ顔を見ていると、小中学生時代の自分の事を思い出す。当時の私はバスケ部に所属していた。県大会常連のそこそこ強豪校だったため、部員数もそれなりに多かった。
 つまり、必然的にスタメン争いが発生する環境だ。バスケは5人対5人で戦う競技なので、野球やサッカーなどに比べてもその枠は少ない。だから、と言い訳できるわけでもないが、私はスタメンの枠から落ちた。小学一年生から部活に所属し、同学年でも2番目の歴の長さだというのに。それどころか、控えの順番ですら一学年下の後輩にも負けてしまった。練習をサボったりはしていないし、雑用だって率先してこなしてきたというのに……ハッキリ言って屈辱だった。
 周囲もそんな私を憐れんだのか、一つの称号を渡してきた。
 それが”えらい”という称号だ。
 「雑用やっててえらい」「声出しててえらい」「勉強もちゃんとやっててえらい」特に保護者陣からは熱烈な評価を受けており、家に伺うと毎回毎回私の分の食事も作ってくれたものだった。
 その節に関しては大変感謝しているが、”えらい”と言われること自体は私にとって大変不愉快な事だった。なぜなら、それ以外に褒めるところがないと言われているようだからだ。
 勘ぐり過ぎと言われればそうかもしれないが、えらくなかった同級生たちはバスケの上手さを褒められていたものだった。その中には万引きの常習犯であったり、数カ月単位で部活をサボっていた人間もいたが、みな私よりは背番号が上だったことを覚えている。
 もちろん、シンデレラプロジェクトのアイドルたちはそんなこともなく、清く美しい人たちであろう。だが、”笑顔”を褒められる島村卯月の心情はかつての私と近いところにあるのではないか、そんなことを思ってしまう。
 どんな綺麗事を吐いたとしても、やっぱり世の中は力だ。力が、技術が、魅力がなければ誰にも見向きもされることはない。そして、力を身に着けるよりも諦めてしまう方が何倍も楽、というのもまた事実でしょう。

 でも島村卯月はそうはならなかった。彼女が頑張り続けることを決めたからだ。ならば、我々も頑張るしかないということです。それが彼女に魅せられたものとしての礼儀だと思うから……
 やれやれ、やっかいな呪いを与えてくれたものです。
 「島村卯月、頑張ります!」その声が聞こえている間は簡単に諦めることは許されていない。

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