glassy_lake

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世界の約束

星降る夜に 生まれ落ちた君 その産声を聞いて 僕はアネモネの咲く丘に 誘われてきた 叫ぶような星の歌声に 怯える君 揺籠の中で 耳を塞いで丸まっていた 君の頭を胸に抱いて 僕は君と約束をする 僕の鼓動を分けてあげる 君が笑うときも 君がひとりでいるときも 星たちは歌い続ける 君の魔法で 僕は世界に美しい言葉を見出した だから僕の魔法で 星たちの歌に言葉をあげよう 星たちは言葉を道標に 世界に流れる旋律を見つけるだろう それが僕らの約束 それが僕らの愛 夜が

    • 月の夜の銀色の城

      白い砂浜に ピンク色の雨が降る 愛されようとして傷ついてきた 君の傷口から溢れる 色々な愛のかたち 君の涙はどこからきたの? 行き場のない思いを こんなに抱えて きっとはじめは ひとつひとつに名前がある宝物だった それがだんだん 自分でもわからなくなって 旅する雲のように迷子になった 今日は僕のこころに ピンク色の雨が降る 白い砂浜に 水色の雨が降る 愛そうとして傷つけてきた 僕の傷口から生えてきた角 いまにだけ咲く夢を描いて いずれ破れて血がしとどおちる すべての出会いに

      • untitled

        星がうつくしいのは ずっとそこで輝いているからだよ 小さい頃本で読んだ 花がうつくしいのは いずれ枯れてしまうからだよ 小さい頃本の真似をして 書いてみた 君がうつくしいのは 君が君として ずっと生きてきたからだよ 君への手紙に書いてみた 僕らが夜をうまく越えていけないのは 弱いからじゃないよ みんなに見捨てられるんじゃないかって 不安があるからでしょう? 大丈夫 もし信じてくれるなら 僕が手を握っていてあげる 僕の声で小さなお話を届けてあげる 君はそこにいるだけでいい

        • 雪と月あかりの夜

          ねえ もうちょっとわがままに 生きてもいいんじゃない? 何度目だろう ぼくは僕だけど 君のこと好きになるのは ぼくのわがまま? ねえ たまに夢をみるよ 君を夜空に連れ去って 銀河鉄道の切符を買うんだ 音も止まった座席にふたりで座って 星が尽きるまで話をしようよ 今日は月も太陽も 流れる星の一部だね おやすみなさい いい夢みようね 君が眠るまで 僕は起きておくから  不安に感じることなんて何もない 明日も笑える初めの一歩 一緒に踏み出してあげる だから手を握ってよ 夜はとて

        世界の約束

          フルーツケーキ

          ケーキを運ぶ箱は 重たそうにみえる 帰りを待つ誰かの 溢れる期待を詰めて スーツ姿の腰あたり 水平に空を切りながら おすそわけするよ 甘い香りを 世界のすべてが詰まっているかのように 替えようのない宝物が詰まっているかのように 慎重に 慎重に 焦る気持ちを抑えながら いまにも弾けて飛び出しそう 君に持っていきたい フルーツとバターの香りをいっぱい とっておきの箱に詰めて 君に届けよう 弾ける笑顔 ケーキを運ぶ箱は 重たそうにみえる たっぷり詰まった とっておきを崩さな

          フルーツケーキ

          星空

          カランコロンと 水色の紫陽花が跳ねた オレンジ色に濡れた石畳 提灯が夜風に揺れる 浴衣の裾も気にかけないで はしゃいでた君の笑顔 迷わないように手を引いた 時間が止まったみたいに 花火の音が響いていた どこからだろう花火の音 ひとりきり部屋で聴いていた 君と別れてから僕は 一枚の絵を描き続けていた 大きなクスノキの影 ふたりだけの秘密基地 木漏れ日が星空みたいだねって 手を取って笑い合った 君の手があたたかくて 胸の奥がじんわりと開いていく 初めてのキス 乞うような目

          Original Sin

          永遠 そこにいれば不安はない ひとは永遠を求める いつの時代も 永遠 過去と未来を繋ぎ合わせ 変わることのない今を約束する 永遠 それは秘密基地の中に 永遠 それは観覧車やメリーゴーランド 永遠 それは芸術の中に 永遠 それは太陽と月 永遠がないことに気づくとひとは 虚しさに覆われて生きられない それが偽りのものであったとしても 永遠を自分のものにしたいと願う 誓い それは儚いひとの約束 祈り それは儚いひとの願い 母が子に同一化を求めるのは罪 父が子を抹殺しようとする

          call me by your name

          君は誰? 僕の部屋に漂う幽霊 クラゲのように宙に浮かび その鼓動が僕を震わせる 君は誰? 僕の声が聞こえる? 聞こえたら身体に触れてみて 触れられたなら 僕の名前を呼んでよ 君は あの陽だまりにいた幽霊 陽向に縛られて動けずにいる幽霊 暖かいところから出てくるのが怖くて 泣いていた あの日からずっと 誰がどう思うかじゃなくて 君の声を聞かせてよ 君の言葉で 上手じゃなくてもいい 君の歌は 君の喜びと悲しみ ふたつは君の感情の表と裏だよ どちらかを失くしてはいられない ど

          call me by your name

          α星とγ星と、アルゴル。

          火照った身体を冷やすように、温度の低いシャワーを捻って顔の正面から浴びた。身体のあちこちに志帆の温度と匂いが残っている。それらは自分の汗と一緒に流されて排水溝に吸い込まれていく。まだ頭に残っている微かな痺れは、瞼の裏にチラチラと幻の紫色の光をみせて視界の中心から放射状に流れていた。 「薫、今夜流星群が見れるって知ってた?シャワー浴びたら一緒に見ようよ」 ベッドにうつ伏せになり、左手の薬指で僕の右手の親指を擦りながら志帆がいっていたことを思い出す。彼女と僕は恋人ではない。た

          α星とγ星と、アルゴル。

          かたわらの花

          わたしが寂しいと泣いているとき かたわらに小さな花が咲いていた 「きみも寂しいの?」って聞いたら 小さく頷いたような気がした それだけでその晩は安心して眠れた わたしが道を歩いていたら 花壇に溢れるように花が咲いていた そのなかにあの小さな花が咲いていた 「もう寂しくないの?」って聞いたら 小さく頷いたような気がした その晩は月がわたしを慰めてくれた わたしが雨宿りをしていたら かたわらに小さな花が咲いていた 「雨すごいね」って私が言ったら 小さく頷いたような気がした

          かたわらの花

          とこしえのうたかた

          ──思い出してみて  たとえばそう あなたの胸を濡らした木漏れ日のこと たとえばそれは 時間がまだ止まっていたあの日のこと たとえばそれは…… 他愛のない らくがき 脈絡のない ものがたり 陰(かげ)のない あたたかな気持ちに包まれて 「あなたが好き」 そんなふうに素直に気持ちを表現できていたころ あの夏の日はきっとまだ あなたの胸に薫るはず さあ ペンを手に 見えない川を渡ろう わたしのなかに 降り積もった言葉 星座のように インクで繋いだら あなたのこころのな

          とこしえのうたかた

          Atonement

          このからだは神様からの贈り物だって 誰が言ったんだっけ だったら誰に愛されたって 変わらないはず だけど 夢の中へおちるまで ものたりなくて 声を求めた 誰かの声 ただ一瞬だけ やさしく包んでくれる それだけ それだけでいいのに 流れていく 顔も知らないだれかのつぶやき 世界の真相なんて 知りたくないよ 知りたいのは 本当の気持ちだけ 悪魔だ 僕はひとのこころを食って生きてきた このこころがいつか どこかに還るのなら 居場所はないだろう この罪は償えない 悪魔だ 僕は

          月の満ち欠け

          夢をみたみたい 君に会う夢を まどろみから抜け出せないで 時計の針は止まったまま 愛のうた 愛のうた ふるえた君の唇をみつめていた 私に向けて歌われてたらいいのに なんて想い焦がれ でも知っているわ それは誰のものでもない 愛のうた 愛のうた 乞うるひとがいたならば 分け与えるのが愛だって そう だから誰もあなたを ひとりじめにできない  かなしい運命(さだめ) 懐かしいカゲロウ浮かぶ街並みに 微笑みかけた 満ち足りた日々 あの頃の私に戻ったみたいに 深く吸い込ん

          月の満ち欠け

          ぷぷとびび

          ぷぷとびびはふたごの猫でした おかあさんは青い瞳のラグドール。きままでこどものような雰囲気のうつくしい猫でした。 おとうさんは野良猫で黄色い瞳を持つ雑種の猫でした。灰色と茶色と黄土色のマーブル模様で、片耳が折れてひげは曲がっていました。 いいよってくるナンパな雄猫にうんざりしていたおかあさんは、ぶあいそうでも綺麗な心を持ち、わけもなく悲しいときに、おもしろいお話を考えて話してくれるおとうさんのことが大好きでした。 ぷぷはおかあさんに似て長い毛並みを優雅に伸ばして、うつ

          ぷぷとびび

          ナイフ

          あなたがいなくなって3年が経つ この部屋とわたしの10年間のうち 半分をあなたと暮らしたことになる あなたはもう帰ってこないと 気付くのに半日かかった もう半日をかけて写真を捨てた もう増えることのないあなたとの思い出を捨てた あなたを切り取ったわたしの記憶は 残すほどのものではない気がした 歯ブラシ ワックス シェーバー 化粧水 マグカップ 箸 茶碗 モバイルスピーカー ANKERのコード 下着 靴下 タオル ボディシート 枕カバー ライター 吸い殻入れ  捨てるの

          七夕物語

          遙か昔、天に織姫という名の美しい娘がいました。織姫は天界の王様である父親の言いつけで、星の屑から糸を紡ぎ、大きな一枚の織物を作る仕事をしていました。織姫の仕事はとても繊細で、1年に1枚献上される銀河のような織物は、王様をたいへん満足させていました。 仕事に夢中で、容姿に気をかける暇もない織姫をみて母親である王女様は悩んでいました。 「恋を知らずに娘はもういくつになるだろうか。哀れな織姫、父親に認められることだけが、彼女の喜びなのだわ。」 王女様は王様と相談して、よい相手