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【読書記録】十二国記 黄昏の岸 暁の天

王と麒麟が還らぬ国。その命運は!?
驍宗が玉座に就いて半年、戴国は疾風の勢いで再興に向かう。しかし反乱鎮圧に赴いた王は戻らず、届いた凶報に衝撃を受けた泰麒も忽然と姿を消した。王と麒麟を失い、荒廃へと向かう国を案じる将軍は、命を賭して慶国を訪れ、援助を求める。戴国を救いたい──景王陽子の願いに諸国の麒麟たちが集う。はたして泰麒の行方は。
「十二国記 黄昏の岸 暁の天」新潮文庫 背表紙より

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感想

これをリアルタイムで読んでた人達、続きを読むまで18年待ったってマジか。この作品をこれまで知らなかった悔いは少しあるが、そんなに長い間お預けを食らうのは正直そんなに耐えられないので続きが出てから読み始めて本当によかったと思う。次で終わるかどうか知らないけれども。ただ、長い間待ちわびた新刊は感慨もひとしおだろうからそれを味わえなかったのはやはり悔しい。なにやら短編小説が出るらしいので、それを心待ちにしようと思う。そういうことは既刊を全部読んでから言うものです。


さて、本編の感想に入ろう。
今回の話はまさにエピソード0、魔性の子の裏側である。これが読めるのをずっと心待ちにしてたんだ。
序盤からクライマックス。泰麒が行方不明になってしまう。魔性の子を読んでいたのでどこにいったのかわかるのが救いだったかもしれない。
さて、王と麒麟を裏切ったのは誰なのか。泰麒は彼のことを信頼していたようなので、心当たりは数人か?自分はまず正頼を疑った。ただこれは、その後の描写(泰麒に本当のことを伝えていなかった)で間違っていたことが分かったので、それ以降はさっぱり予想がつかなかった。王の周囲にどんな人がいたか覚えていなさ過ぎた。

泰の王宮から王と麒麟がいなくなって6年、李斎が慶にたどり着く。あんなにボロボロな姿なのに追い返そうとする閽人許すまじ。変な人が王宮に入り込まないように警戒するのは確かに大事なのだが。
その後無事に景王に会うことができるのだが、ここで風の万理 黎明の空で活躍していたみんなのその後の様子が見られるのが嬉しかった。

李斎の葛藤をよそに、景王陽子は戴を救う方法を考える。延王は突然やってきたりと相変わらずである。手伝うわけではなく陽子を止めるためにやってきたわけだが。その延王に対してあんな口を利く陽子にはぎょっとした。そして延王はただのお節介かと思っていたが、きちんと雁のことを考えてるというかめちゃくちゃ計算高かった。正直なところ、王や麒麟が死ねばそのうち新しい王が起ち国が再建されるという考えはわかる。作中で桓魋も言っているが、王も麒麟も行方不明の上に死んでもいないというのは、最悪の状況だろう。

どういう声のかけ方をしたのかは知らないが、慶と雁以外に5国が協力してくれることになった。さすがは延王というべきか、戴の様子に皆興味があったのか。
各国の協力が得られたところで、なんと範国の氾王が自ら慶にやってくる。前回の感想で、この世界には王らしい王が全然いないというようなことを書いたが、どうやらそれは違うようで、我々の考える王のような人物ではこの世界では王になれないのだと思う。どこかしら突き抜けたところがあるというか、ぶっ飛んでいるというか……。陽子にしたって、ただの高校生だったとは思えないほど考え方がしっかりしているし、この作中でも天に対する考え方とかすごい。褒めるための語彙がなさすぎる。

李斎が天が存在することを知った時、玄君が彼女を知っていると知った時の様子は本当に胸が痛む。「王になるためにはなぜ昇山しなければいけないのか」という疑問は以前からあった。胎果の王であれば蓬莱まで迎えに行くし、確か宗王も麒麟の方から迎えに行ったのではなかったか。珠晶の例を見て、ある程度王の目星はついているが、昇山の途中で王の器か否か試されているのだろうかと今のところは考えている。

紆余曲折あったものの無事に泰麒を見つけることができ、延王が蓬莱に向かうこととなった。泰麒が帰還する直前、ふと廉麟が転変したことで、泰麒は忘れていた記憶を取り戻す。この、特に何か考えがあったわけではないけれど、なんとなくそうした、というのは、天の思し召しなのではないかと思う。李斎が生きながらえたのもそうだ。これらの奇跡のような運の良さは、天の導きのような気がしてならない。それならば、もう少し奇跡が続くと信じてもよいだろうか?

さて、泰麒はなんとか帰還できたものの、その様子はひどい有様だった。泰麒を救うため、ついに、普段は人の前に姿を現さない神と相対すことになる。なんだかどんどん話のスケールが大きくなってきたな。李斎の必死の思いが伝わったのか、何を考えているのかさっぱりわからなかったが、ひとまず西王母は泰麒を助けてくれた。

泰麒がある程度回復するのを待って、泰麒と李斎は戴に戻る決断をした。大きくなった泰麒、読者の側から見ても慣れない。誰にも知られずにこっそり抜け出すつもりが、延麒にはバレバレ。しかし彼は引き止めず、旅に必要な物資を渡すのみだった。景王にも筒抜けなんじゃないかと思ったが、案の定。李斎も景王も相手の立場と意思を考え尊重できる素晴らしい人物だな。

今回はここまでで終わりだが、未だ解決していないことは山のようにある。やはり一番気になるのは泰王驍宗の行方だろう。偽王はなぜ驍宗を殺さないのか。殺し損ねて見失ってしまったのだろうか?もしかしたら、王を殺せば新たな王がうまれ、玉座を取り戻されるかもしれないから、あえて生かしているのだろうか。戴はあまりにも荒れているが、それはただ偽王がいるのが原因なのか、想像もつかない変事が起こっているからなのだろうか。そもそも彼はなぜ謀反を起こしたのか。これをすべて書こうと思ったら4冊になるのもわかる気がする。今回泰麒も泰王も両方救うのだと思っていたが、半分を越えたあたりで、どうやらこの様子では泰麒を救うので精一杯だなと察した。開いているページで今自分が読んでいるのが物語のどのあたりなのか見当をつけるのは、紙の本ならではでとても好きだ。(電子書籍でも45/150のようにわかるのかもしれないが、それでは味がない。)

続きを読む前に、もう一度魔性の子を読んでおこうと思う。かなり衝撃的だった、最後のシーンでの多数の異形の存在は、おそらく使令だったのだろうな。
次は4冊にもわたる超大作だが、一度読み始めたら止まらないのは想像に難くないので、しっかり時間をとって挑みたい。まずはポケモンの新作を遊んできます。

(この感想文は2022年11月に書いて下書きのまま放置していました。ちなみにポケモンはまだクリアしていません。)

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