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【読書記録】十二国記 図南の翼

国統べるのは、あたししかいない!
恭国は先王が斃れて27年、王不在のまま治安は乱れ、妖魔まで徘徊していた。首都連檣に住む少女珠晶は豪商の父のもと、なに不自由ない暮らしを与えられ、闊達な娘に育つ。だが、混迷深まる国を憂える珠晶はついに決断する。「大人が行かないのなら、あたしが蓬山を目指す」と──12歳の少女は、神獣麒麟により王として選ばれるのか。
「十二国記 図南の翼」新潮文庫 背表紙より

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感想

今回は恭国と黄海を舞台にした、たった12歳の女の子、珠晶のお話である。

物語は頑丘という男が宿屋で珠晶と出会い、雇われるところから始まる。
そこから少し時を戻し、頑丘に出会うまでの旅路について語られる。

国の中央にある首都から1人で黄海の目前まで来ただけあって、珠晶はなかなか知恵が回るし、運も良い。
序盤で家生に汁物をかけて服を脱がせたシーンなど、最初は本当にただ腹が立って八つ当たりしただけだと思った。しかし、それは自分の身分を低く見せる服を手に入れるための小芝居だったのだ。
その後も騎獣と遊ぶふりをしてそのまま騎獣に乗って家出したり(どこかで見たような光景だな)、なかなか思い切りも良い。

そこまでは順調だったのだが、道中、さすがに上手くいかなくなって来た頃、珠晶は利広という男と出会う。この男、20代前半の見た目ながら騶虞を持っており、只者でないことがすぐわかる。私は、この男は仙籍に入り、見た目は20代だがそれよりもっと長い時間を生きているのだろうなと思った。
利広はまあお人好しで、困っていた珠晶を助けてくれた。20そこらの見た目で騶虞を持っており12歳の少女を迷いなく助けてくれる男、怪しすぎる。

利広と別れたあとも、彼のおかげで旅は順調だった。しかしながら、虚海を越えたところで再び珠晶は不幸に見舞われる。これまで共に旅をしてきた騎獣、孟極の白兎を盗まれてしまう。まあ、声をかけられた時点でこの男怪しいなとは思ったが……こういうとき、女子供は立場が弱くて言い分を聞いてもらえないのが悔しい。
とはいえ、ここに来るまでに盗まれなかったのは不幸中の幸いというべきか、その後は珠晶の足でなんとかたどり着くことができた。

そういうわけで冒頭に戻り頑丘と出会い、ともに蓬山を目指す。
そして、令乾門を抜けた城塞の内部で、利広と再会する。少女を追って黄海までやってくるなんて物好きな……。というか、ここで再会するならなんで一緒に行ってあげなかったんだ。
何はともあれ、ここから珠晶と2人のお供による昇山が始まる。

これまでの話で王になった後の話や、麒麟が王を選ぶ様子は知っていたが、昇山が実際どんなものなのかは詳しく書かれていなかったので、今回の話は新鮮で面白かった。1か月半もともに山を登れば衝突だってあるし、いつの間にか派閥もできる。
始めは季和の方がものが分かっていて、紵台は反骨精神があるのかと思ったが、そうではなかったのもまた面白い。

昇山の途中でもいろいろあるわけだが、一番衝撃を受けたのはやはり犬狼真君の正体だろう。まずそもそも出会ったことに驚きだが、その名を聞いてそうきたか、と思わずにはいられなかった。お前、いつの間にそんな大層な存在に……。

最後には麒麟の方から迎えに来て珠晶は無事王になる。それで結局利広は何者なんだって話なんだが、奏の王の息子だった。ですよね。一瞬王本人かなとも思ったけど、黄海に来たことがないと言っていたので、まあ王ではないだろうなと。騶虞を譲ってもらえるような人がどの程度の身分なのかわからないが、さすがにこれは頑丘も開いた口が塞がらないんじゃないだろうか。

今回の舞台の恭国について、これまであまり話が出てきた印象がなかったのだが、珠晶の「供王」という名には見覚えがあった。そこで過去の話を読み返したのだが、祥瓊の身柄を引き受けたのが恭国供王であった。その時供王は在位九十年であり、立派な王になっていた。とはいえ、これを読んだとき、性格の悪い王もいるものだなと思ったのだが、珠晶の人となりをみれば祥瓊のことを嫌う理由もよく分かった。裕福な家に生まれながらも黄海での厳しい生活に文句も言わないあたり、どこぞのお嬢様とは違うなと思っていたので、まさかそんなところで関わりがあったなんてと驚いた。対比がうまい。

以上、感想でした。途中で書くのに飽きたので黄海入ったあたりから雑になりました。旅の中で珠晶が成長していくのがよかったです。おわり。

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