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『早咲きのくろゆり』たとえ世界が敵でも、この想いは伝えたい【ゲーム感想】

久方振りの百合ゲー。SFな設定の、少女と少女の恋愛模様を描いた『早咲きのくろゆり』。フルボイスにLive2D、さらには今後もおまけシナリオが追加予定とかなりボリューミーな一作です。

困難に抗う少女

舞台は未成年人口の減少で国家の基盤が崩れかけた未来の日本。解決策の一つとして、政府は「はぐくみ政策」と称して男女の結婚と出産に多大な支援をしていた。
同性の友人の樹(いつき)に思いを寄せている笹森花にとっては、あまり居心地の良い世界ではなく、じっさいこの世界で同性愛は禁断…というほどではないが白い目でみられていることが明かされている。

姉がもうすぐ出産するのを間近で見ているだけに
自分が世界からみて異端だと思わされているよう…。

花は樹を想う気持ちと、それがむしろ不幸にしてしまうのではと葛藤を抱えながら、卒業までの僅かな時を過ごしている。

そんな時、樹が事故に遭う。信じられない出来事に目の前が真っ暗になる花。目が覚めると、事故が起きた日の朝に戻っていることに気づく。

難易度の設定で適切な入力箇所が演出で分かるようになっているのがありがたい。

ループする一日から花と樹を救うためには、任意の場所で言葉を割り込ませて花の行動を変えていく必要がある。ヒントとなりそうなワードや情報は普段の会話を「メモライズ」機能で記録していく。難易度設定でヒントとなる単語が赤色で表示されるのでADVが苦手な人でも安心の設計

樹を死の運命から1度救っても、何日か経つとまたループし始め、困難が花を襲う。
公式ページには「※本作は純粋で青春的な三角関係が発生する要素はありますが、男の子側も悪意はなく、いわゆる胸糞展開のようなものはありません。」と記載されており、俗にイメージされる「チャラ男が間に入ってきて寝取る」ような場面はじっさい無い。ただ、物語後半で花、樹、同学年の男子との三角関係状態になり、バッドエンドには樹と男の子が付き合うのを見せられる。そのあたりを許容できるかは、各々の判断に任せたい。

そして、この作品の世界(社会)は同性愛に対して容赦が無い。それこそ「吐き気を催す邪悪」と感じるほどに。そんな描写がある意味「胸糞」とも言えるかもしれない。

しかしそれでも、樹への気持ちを諦めず、悲劇的な困難に立ち向かう花の姿には心を打たれる。

恋敵に樹に対する想いを打ち明け、宣戦布告するシーンは声優さんの演技も含めて名シーン。

可愛いビジュアルに反して世界観がハードめで、ある種のギャップに時折頭を打ち付けられるような衝撃を受ける場面もありますが、それに立ち向かう芯の強さと優しさとを兼ね備えたヒロイン花の姿は、とてもカッコいい。世界に反逆する意志と恋に悩む乙女の両面を持つヒロイン、まさに無敵。

プレイ時間は15時間。といっても2~3時間くらい単語の割り込み箇所とかシステム部分でさまよってた気がするので、テキスト量は10時間くらいかと。

まとめると、百合ゲーというより男女が入り混じる恋愛模様の感じは青春恋愛漫画を読んでいるような質感でした。世界観的にイチャラブできる環境ではなく、恋愛のほろ苦さも感じる一作。ADVゲームとしてもヒント無しの最高難易度はなかなか歯応えがあるかと思います。おススメです。


≪ここからちょいネタバレ的感想≫


恋愛って、難しい

自分は恋愛系のジャンルの作品はあまり嗜むことがない(百合ゲーやるけど割と1対1の交流ものが多い)し、やっても男性向けの「メインディッシュがドーン!」な分かりやすいものばかり触れるので、本作に登場するヒロインの恋愛に対する感覚を理解するのに時間がかかりました。そうか…「好き」って気持ちを勢いのままいきなり伝えたらダメなのか。
男性向け恋愛(R-18)作品は「いきなりステーキ」、女性向けは「コース料理」なんて例え方をどこかで聞いた気がする。性別での差異というより、趣向の問題だろうけど。
この恋愛に対して求めるものがお互いに違う時、同性愛の話に限らず、不和が生まれてしまう。

そう考えると恋愛って成就するのに、針の穴を通すような繊細な作業が必要で、やっぱ難しいなぁ。

相手の恋愛に対する傾向を掴みつつ段取りして好感度を上げたり、
それとなく好意を伝えるって、難易度高すぎる…。


櫻井柊とかいう男の話

百合ゲーやったと思ったら何故か男にキュンキュンしてしまう。一体これはどういうことだ。

いつも眠そうにしているけど、やけにカンが鋭く、ぶっきらぼうながら喧嘩の仲裁をする気配りの良さ、親友の異変にも気づいて傍にいてやると言える漢気もある。カッコよすぎる。イケメンで強い。

藍に逆恨みで絡まれるも、
青に対して感情を全く持ってないため総スルーな柊との漫才じつはけっこう好きなシーン。


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