【ゲーム】汝、その手に『世界樹の迷宮HD REMASTER』を取れ【リマスター発売記念布教】
分割2画面というDSならではの機能を活用した地図作成、往年のダンジョンRPGを彷彿させる手強い難易度(というかアトラスらしい高難易度と言うべきか)、日向悠二の可愛いイラストを使用したキャラメイク、ダンジョンの美麗な背景画、古代祐三が作曲した懐かしくも新しい聴いていて飽きないサウンド。それら全てが絶妙なバランスで混ぜ合わされた奇跡のゲーム。それが『世界樹の迷宮』シリーズだ。
ゲームの根幹たる地図作成システムがDSの特性に依存してるゆえに、移植や新作が出ても同じような体験をするのは難しいと思われていた。実際、世界樹の新作が「胎動」という言葉とともに発表されるも、それ以降一切音沙汰無しだった。
だがこれは決して夢では無く、げんじつに起こったことなのだが、123がリマスターされて発売されている。これは本当にすごいことなんだ。
開発スタッフのコメント曰く、新作へのフィードバックを兼ねつつ、新規の人を呼び込むのが今回のリマスターの目的らしい。新作はまだ先だそうだが、プロジェクトが凍結してないと分かっただけでも、圧倒的感謝で涙を禁じ得ない。そして、少しでもこのリマスターを買ってもらえるよう、魅力を発信していきたい。
その一歩が君だけの体験になる/その一歩が君の命を刈り取る
何はともあれ『世界樹の迷宮』と言えば「地図を描く」こと。古くはウィザードリィなどで方眼紙にマップを描いてた伝統的行為。このアナログな手作業がファンタジー世界を冒険している感を演出してくれる。夢中になって地図を描いたあとに全体図を眺めて「こんだけ歩いたのか…!」と自分でも驚く瞬間がなによりも楽しい。
進んでは線を足し、進んでは線を足し、途中でメモを残したりなんかクエストに関係しそうなオブジェクトをアイコンでメモしたり。これが意外と個性が出て、実況動画や他人の作成したマップを見ると同じダンジョンのマップだけど使うアイコンが意外と違ったりして面白い。基本は同じだけどプレイヤーの数だけ体験に少しだけ差が出るというのも魅力だ。
マップに目印となるアイコンを置く、というのならブレワイなどでもあるが、もう一つ独自の特徴を上げるならメモだろう。メモが特にプレイヤーの個性が出やすいし、ゲームとしても非常に便利な機能だ。
アイコンも十分便利だが、少し間が空くと「あれ…これなんでアイコン置いてたんだっけ…」と忘れて結局現地まで行く羽目になることがある。やはり文字…言葉というのは偉大だ。世界樹のダンジョンで発生するイベントは特に何かしら言葉にしないと難しいイベントや2択を迫られるイベントが多いので(最大16文字の)文字としてゲーム内に残しておける機能は非常に便利だ。
攻略に必要な情報を最低限単語にして残すも良し、自分の作ったキャラが書き残しているのを想像して書くのも良し。その自由さが世界樹の迷宮における君だけの体験になるのだ。
ゆーて地図描くとか面倒…という方もご安心を。今回のリマスターには歩いた場所を自動で線と床を描いてくれるオートマッピングが付いている(機能自体は新世界樹の迷宮の頃から実装されてる)。それだと世界樹の楽しみが半減してしまうのでは?とお思いになるかもしれないがそこも問題ない。
世界樹のマップを自力で描く利便性は「歩いてない場所も描ける」点にある。
例えば、道が二手に分かれていた時、もう一方の道を見える範囲で地図を描いておく。そうしておくと次の探索の目安になる。またはFOE(マップを徘徊してる中ボス)を回避するのにも役に立つ。
なぜそうまでして地図を描かないといけないのか。それはモンスターが手強いからだ。世界樹において(特に序盤は)可能な限り戦闘を避けたい。なんなら戦闘=死くらいの気持ちだ。オートマッピングは便利だが、「歩いたとこしか」マップが描かれない。ただマップを描くためだけに歩を進めると、右下のランプが赤くなり、君に死の危険を知らせることになるだろう。
たとえゲームオーバーになっても描いた地図の情報は引き継げるのでそこは安心。FOEに追い詰められた時なんかは、まるでダイイングメッセージを残すような気持ちで現状から見える情報でマップを描き残すなんてことも、世界樹あるあるなので。
ちなみに、今回のリマスターではダンジョン内でセーブができるようになった(昔は中断セーブだった)ので、危険と思った時はセーブを活用しよう。
戦闘と音楽と背景と
世界樹といえば、音楽も素晴らしい。ゲームをやっていればほぼ必ずと言っていいほど目に(いや耳か?)するゲームミュージックのレジェンド古代祐三による楽曲が世界樹の迷宮の世界を彩ってくれる。
世界樹の迷宮は難しい。地図を描くのに時間がかかるし、出てくる敵は強くて何度もゲームオーバーを繰り返す。それでも何度もプレイできるのは、「何度聴いても飽きない」「それでいながらテンションが上がる」曲が多いからだ。上記のインタビューで仰っているように、楽曲の作りがアーケードゲームに近いからだと思う。アーケードで稼働していた昔のゲームも非常に難しく何度も挑戦することを想定されていたので、こういった特徴を持った楽曲が多い。
これは余談というか蛇足になってしまうけど、この高難易度だけど楽曲が良くて苦にならないゲーム性は東方などのシューティングゲームにも共通する部分で、なぜ自分がSTGと世界樹が好きになったか得心がいった部分でもあって、気づけた瞬間めちゃくちゃ嬉しかった。
戦闘曲は曲の後半になるほど切羽詰まった戦況とリンクするように危機感を煽るような設計がされているし、ダンジョンの曲は足音などのSE(サウンドエフェクト)が入るのを想定して作っているとインタビュー記事で仰っていた。いずれも「ゲームへ没入のするためのゲームBGM」を徹底している古代サウンドはゲームプレイ中でこそ最も輝く。もはや輝いて聴こえる。
ダンジョンの情景も曲と合わさってそれ自体が非常に魅力で、Ⅲは特に1層が樹海、2層が竜宮城を思わせる海の迷宮、3層が海底火山とダンジョンを下へ進むごとにガラリと雰囲気を変えていく。1の頃からも「この先にどんな情景が待っているのだろう」とワクワクするような仕掛けが施されており、どんなに苦難でも、進むことそれ自体が楽しい。
キャラメイクとパーティのバランスが愛おしい
世界樹はキャラメイクも良い。日向悠二の描く可愛いキャライラストはまず目を引く部分だろう(Ⅲのプリンセスなんかは一つの到達点とも言える)。キャラメイクする時の名前や容姿の吟味、設定の妄想を考えるのも楽しい。
なにより世界樹のキャラメイクがなぜ印象的なのかは、おそらく組んだ時に「足りない」ようになっているからだ。
攻撃の属性は「斬・突・壊・火・氷・雷・(無属性)」という6+α属性。仮に5人パーティにそれぞれの属性の役割を与えようとすると、だいたいどれか足りない(まぁ火氷雷は魔法職でまとめて覚えられるけど。)
さらに攻撃役だけでなく、回復職、盾職、状態異常(RPGでよくある毒など)と封じ(行動の制限するバッドステータスの一種)を与える補助職。これらは迷宮探索で全部必要だと言っていいのに、全部の要素を入れることは非常に難しい。あちらを立たせればこちらが立たず、満遍なく入れれば火力が足りない。ダンジョンに行く時間より、パーティを考える時間の方が長いまである。
そして、この足りなさをどう補っていくか考えていく時間と迷宮探索のイベント、足りないゆえに戦闘でピンチになる瞬間の積み重ねによって、いつしか愛着へと変わっていく。立ち絵に限りはあっても、プレイヤーの数だけ編成があり、物語が生まれる瞬間が何より楽しいし、実況で見ていても楽しくなる。
公式自らが超自由にキャラメイク妄想を披露してる様子は必見。これを見ればどんな厨二妄想でも大抵許されるし、それだけの土壌は既に形成されている。
君も世界樹の世界へ来ないか
もう新作が出ないと思っていた自分が好きな作品に新作の兆しが見えた。感謝。圧倒的感謝。それしか言葉が出ない。
あわよくば、このリマスターを機に新規プレイヤーが増えて新作がいつもより売れれば更なる発展も…と思うのは夢を見すぎだろうか。
ともかく、世界樹の迷宮はとっても面白い。今年もティアキンやらアーマードコアやらストリートファイターーやらビッグタイトルで忙しいとは思うけど、ぜひやってほしいタイトルだ。
余談1。
世界樹の人気って、まぁアトラスだし、ニーズ的にも比較的ニッチで、売上的にもアトラス作品の他シリーズと比べると少ないハズ。
それが何の因果か、あのゼルダと肩を並べてランキングに表示されているなんて信じられるだろうか。
…でも正直、かなり手が加えられたリマスターとはいえ、3本セット9000円(個別だと4500円)はちょっと新規の人に軽率に買ってくれと言いにくい値段設定だぞアトラス(この場合セガか?)。もう少し値段抑えてくれとも思わなくもなかった。そのうちセールとかになるのかもしれんが…。
余談2。
実際のところ、やっぱダンジョン画面と地図画面、別々の方が良いよなぁ…って考えたらWiiUパッドがあったら正解だった可能性。
ただそれでも、現行機種のswitchでも出来るよう調整されているのは素晴らしいの一言。
自分はswitch版で買ったのでTwitterの反応を見る他無いが、PC版(Steam)はけっこう地図描きに適してるのではないだろうか。ここにきてマウスというデバイスが地図描きに有利になるとは…。あんがいPCを持ってる新規の人はSteam版もありではないだろうか。
いただいたサポートはお菓子に変化します