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サービスデザインの原則? 〜わかりやすくイメージしてみよう!(前半)〜

サービスデザインに興味を持っている人なら、この5つの項目一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?

 1.ユーザー中心(User-Centered)
 2.共創(Co-Creative)
 3.インタラクションの連続性(Sequencing)
 4.物的証拠(Evidencing)
 5.ホリスティック(Holistic)
_______サービスデザイン思考の5原則

これは、2012年に出版された「This Is Service Design Thinking (翻訳版)」で解説された、「サービスデザイン思考の5原則」です。当時、一般的ではなかったサービスデザインというアプローチを説明するために、サービスデザインに求められる考え方として紹介されました。

この原則があったからこそ、サービスデザインに対する見解がブレずに、ここまで発展してきたと言っても過言ではないでしょう。とても大事なことが書かれています。しかし、この5原則。説明がちょっと面倒なんです。「ホリスティック?」「インタラクションの連続性?」馴染みのない言葉が出てきて、ちょっとイメージしにくいですよね。いろんな人と一緒に新しいモノをつくる楽しいアプローチであるべきサービスデザインにとって、これは致命的。

そこで、ちょっとでもイメージしやすく理解しやすくするために、5原則の項目を捉え直し、5つの新しい言葉をつくっていこうと思います。

その1:「主人公はカスタマー」

まず1つ目の原則。「ユーザー中心(User-Centered)」について考えていきます。

これは、サービスのお客様、すなわち、カスタマーにとって嬉しいサービスの体験を捉え、良いものを作りましょう、という原則です。

この意味を深く理解するために、「ユーザー中心」という言葉の背景について、少し考えていきましょう。

この「ユーザー中心」という言葉は、2000年くらいから日本のものづくりの世界でも頻繁に使われるようになりました。インターネットの普及等に伴い、高機能でわかりにくいシステムが多く作られるようになり、その反動で、「もっともっとわかりやすく!使いやすく!人にやさしいモノつくろうよ〜!」という思想が「ユーザー中心設計」という言葉になりました。「機能中心」や「組織中心」ではなく「ユーザー中心」でつくりましょう!ということです。

また、「ユーザー起点」でビジネスを発想することで、新しいチャンスを拡げることができる!という有用性にも注目されています。現代では、ヒューマンセンタードデザイン(Human Centered Design/HCD)のアプローチとして定義され、まとまった方法論を学ぶこともできます。「デザインシンキング」も、HCDを基本概念とした方法論ですね。
この「ユーザー中心」って意外と多くのものを背負った言葉なんです。

これらの意味を咀嚼して、飲みこんで、一旦忘れ、改めて新しい言葉を作ってみました。初めて聞いた人でもなんとなく理解できる言葉として。それが、「主人公はカスタマー」です。

「カスタマーを主人公にして、サービスを考えましょう!」そんなシンプルな言い回しで、ヒューマンセンタードデザインの概念を表現できたらいいな〜という希望も込めて。

ちなみに、サービスのお客様は、何かを使う人「ユーザー」だけなく、いろんな人がいます。体験することで関わる人、お金を払うことで関わる人、中間的に支援することで関わる人など。だから「ユーザー」という言葉ではなく、多くのタイプのお客様を捉えられる「カスタマー」という言葉を用いました。(その方が、自然だし、可能性も広がります!)

その2:「個性が違う仲間を集めて力を借りよう」

続いて2つめの原則。「共創(Co-Creative)」に挑戦します。

サービスに関わるすべての人(=ステークホルダー)に参加してもらい、一緒に考え実現していこう、という原則です。

サービスデザインの文脈において、「共創」という言葉には、2つの意味があるように思います。1つは、“多様な人と一緒に考え創る”という意味。自分の属する1つの組織、1つの部署の中だけで考えず、さまざまな関係者と一緒に考えるアプローチとしての共創。「オープンイノベーション」で語られているように、サービスを企画する当事者以外の人(例えば、地域住人の家族に学生、他業種や他分野の事業者、学校に行政に専門家)も一緒に、創造プロセスに参加するアプローチです。さまざまな立場の意見を尊重し、多面的に捉えることで、新しい発見をもたらし、長続きするようなサービスを創造することができるようになるからです。

そして2つ目は、“サービスに関係する全ての立場の人が協力し合い、考え創る”という意味です。サービスのステークホルダーが誰なのか?明確になった上での共創。また、これから協業したい人たちとの「協創」も含まれます。特定サービスを支えている1つのコマとなっている1人ひとりがサービスデザインに関わることで、創造するサービスそのものを変えていく効果があります。

つくっている途中の段階から、多くの関係者が関わることで、たくさんのメリットがあります。例えば、リリース後に無駄が少なくなる、という小さなこともありますが、そもそもイケてないサービスは着想時に潰され、大失敗のサービスをつくらなくてすみます。そして何よりも、「一緒に作り上げた」という意識こそが、そのサービスへの関与度を高め、多くのサポーターやファンを育てていくことにもなるのです。

組織を横断してプロジェクトをつくったり、自分と違うスキルを持っている人を集めたりするのはとても大変。だからこそ、「共創」の本質を伝える言葉には、そのマインドを入れたいと思いました。

その言葉は、「個性が違う仲間を集めて力を借りよう」です。一緒に創るということは大事ですが、どんな人と一緒にやるのか、一緒にどう関わり合うのか?意識することで、「共創」という概念が前進していくのではないか、と考えています。

前半はここまでです。後半では、サービスデザイン思考の5原則、その3からその5までを扱います!

「インタラクションの連続性」とは?「物的証拠」とは?「ホリスティック」とは?お楽しみに。>>>後半をアップしました!

(三澤)

関連リンク:
サービスデザインの原則? 〜わかりやすくイメージしてみよう!(後半)〜
「サービスデザイン」とは何か 〜チャレンジするための再定義〜

注)5つの原則の解釈について、本ブログでは「This Is Service Design Thinking」の正しい解釈をしてものではありません。サービスデザインをわかりやすく、取り入れやすくするために、発展的に解釈をしています。


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