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映画感想文マガジン

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記事一覧

【MOVIE】『AWAKE – アウェイク』 挫折と葛藤と欲望にまみれた覚醒の物語

挫折を知った若き棋士がAI将棋ソフトを開発し、ライバルに再び挑む物語。 2015年に開催された「将棋電王戦FINAL・第5局」、実際のプロ棋士と将棋ソフトウェアによる戦いに着想を得て作られたが、ストーリーはオリジナルである。 AI=人工知能が人間を凌駕する、と言われて久しい。 chatGPTの劇的な流行で、より現実味を帯びている昨今、その歴史の転換点と言ってもいい将棋戦を極上のエンターテインメントとして魅せている。 主人公・清田英一の挫折と目覚め、人生を生きる喜びをつかみ取る

【MOVIE】『キャラクター』アイデンティティの依存、喪失と再生のサイコホラーサスペンス

心臓に悪い。 正直これほどまでに「ハラハラドキドキ」がストレートな感想になる作品は他にないだろう。 原作なしのオリジナル脚本ながら一瞬も飽きさせない展開と、絶妙に全部を見せないがしかし地上波テレビでは放映できそうにないギリギリのラインを攻めるグロテスク表現、文句の付けようがない豪華キャスティング、それらを見事なバランスで成立させた近年まれに見るエンターテイメントの傑作だ。 絵は抜群に上手いが人物造形が不得手な漫画家アシスタントの山城圭吾(菅田将暉)が、ある一軒家で一家四人の

【MOVIE】『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』 純粋で孤独な天才の愛情

第二次世界大戦時、ドイツ軍の最強の暗号「エニグマ」を解読したイギリスの天才数学者アラン・チューリングをモデルとした実話がベースとなったヒューマンドラマ。 天才であるが故に純粋で、マイノリティであるが故に孤独な、そして愛に飢えた独りの天才数学者が、戦争終結を早めた。 この事実をイギリス政府は50年に渡って極秘扱いとしていたという。 そして、アラン・チューリングが開発した暗号解読機は、現在の、あなたがいま使っているコンピュータの元となったのである。 「エニグマ」とはギリシア語が

【MOVIE】『シン・ウルトラマン』自己犠牲と人類讃歌と愛を教えてくれるヒーローの物語

自己犠牲と人類讃歌と愛この映画を一言で言うならば「自己犠牲と人類讃歌と愛の物語」だと私は思った。 映画『シン・ウルトラマン』予告【2022年5月13日(金)公開】 ネットの考察記事などを読むと、ウルトラマンが題材なのにヒーローらしくないと言う見解が意外と多くあった。 私はそうは思わなかった。これは紛れもなくヒーローの映画であった。 もう少し厳密に言えば、現代における、今という時代に必要とされる真の(シンの)ヒーローの物語だと思った。 光の国から来たウルトラマン(最後の場

【MOVIE】『楽園』本当に悪いのは誰なのか

観終わった後、何とも言えない、胸の深い部分にドロドロとしたヘドロのようなものがべっとりと張り付いていて、それがボタボタと床に落ちていくような、そんな不快だけれど、これで少しつまりが取れて安堵できるような、そんな不思議な感覚が残った作品だった。 Amazon PrimeVideoで観る 2019年公開の日本映画。 佐藤浩市、綾野剛、杉咲花をメインキャストに、監督・脚本は『64 -ロクヨン-』の瀬々敬久氏、原作は『悪人』『怒り』の吉田修一氏。 本作品のストーリーは原作小説『

【MOVIE】『インターステラー』-愛は時空を越える

これほどまでの超大作でシンプルに感動した映画は初めてではないだろうか。 2014年公開の映画ながら最近AmazonPRIMEに追加されたので観てみた。 観たのは昨年末でちょっと時間が経っていますが、 さまざまな考察ブログ等に感化されながら、 感想文を書いてみたいと思う。 映画『インターステラー』予告編 ●あらすじ インターステラー – Wikipedia 言うまでもないことだが、以下はネタバレなのでご注意を。 序盤のこの時点ですでにストーリーについて行けなくて脱落す

【MOVIE】『ゼロ・グラビティ』圧倒的な無重力感と「逆境」へ立ち向かう心

Amazonプライムビデオにて観賞。 2013年公開の映画。 当時、映画館で観たかったけど観れなかった。 公式サイト 【ワーナー公式】映画(ブルーレイ,DVD & 4K UHD/デジタル配信)|ゼロ・グラビティ ※以下、ネタバレを含みます これはやはり映画館で観るべき作品だった・中国の宇宙実験施設「天宮1号」、大気圏再突入へ – BBCニュース ・操縦不能「中国の宇宙実験室」が地球に落下、4月1日前後に | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン) ・【緊急滅亡

【MOVIE】『バベル』”人類の統合”と”分断”の先に”希望”はあるのか

Amazonプライムビデオにて観賞。 ちょっと古い、2006年公開の映画。 ※ネタバレ含みますのでご注意ください。 タイトルの「バベル」は旧約聖書の「創世記」第11章に出てくる「バベルの塔」がモチーフになっていると思われる。 「バベル babel」とは「神の門」とか「ごちゃまぜ」という意味があるらしい。 一般的な解釈としては、 と言われているようだ。 (だが、「崩した」という表現は厳密には無いみたい) また、それまで人間たちはひとつの言語でコミュニケーションを図って