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ジュニアアスリートメディカルサポート通信vol.1 〜夏の熱中症を乗り切ろう〜

 ジュニアアスリートメディカルサポート代表の宮田大揮です。我々は、小中学生のアスリートをサポートして5年ほどが経ちました。2024年7月から、クローズされていたサポート体制をウェブ上にオープンしました。具体的には、医学の力をジュニアアスリートの能力を最大限引き出すためにフルコミットする形で使っていこうというのがコンセプトで、アジアから世界に誇れる選手を様々なスポーツで輩出することを目的としています。
 今月からアスリートを目指す小中学生やそのご両親にお役立ち情報を提供するためnoteをリリースしました。
第1回は、夏を迎える時期でもあるため、熱中症の予防と対策になります。スポーツのコーチをされている方は、熱中症についてとても勉強されており、様々なスポーツでWBGT(湿球黒球温度)なども用いてどうやって安全にスポーツを夏に行なっていくか?を模索されています。一方で、諸外国に目を向けるとスペインなどは7月、8月はサッカーなどのスポーツはオフになっており、リスクを避ける方向に進んでいます。日本ではなぜ夏はむしろ積極的にスポーツをやる時期と考えられているのでしょうか?
 それは、日本の教育制度の仕組みや親世代・コーチ世代のスポーツ経験も影響しているものと思います。具体的には、新学期が9月から始まる海外と違い日本は4月スタートですので、長期の休みがとれるのが夏になり、ご両親の休みの時期もそこに合わせてとりますので、普段手をかけてあげられなかった方も子供のスポーツにコミットできるタイミングなのです。また、スポーツを経験してきている方々ですと実感があるのですが、「地獄の夏合宿」のようなものを経験すると競技レベルが向上し、強くなっている経験があるため、夏にスポーツをやらずに休んでしまうとほかの子の成長に負けてしまうのではないか?と心配になってしまうということが背景にあるようです。
 では、夏はスポーツを全て中止?ですが、それはもちろん議題にあがるべきですが、一律に中止とするのはWBGTの値で中止が勧告されるときにすればよいのではないでしょうか(気温目安ですと35度程度になります)。つまり、対策を講じて(夜間開催なども一つの方法です)、気温や環境は変化していきますので、途中でやめたり中止する勇気をもってスポーツに安全に取り組むというのが今の日本のジュニアアスリートの環境だと思います(大会の開催など途中で中止が難しいものは避けることは検討すべき課題だと思っています)。
 このnoteでは、そのような夏に安全にスポーツを行うために、熱中症の予防・対策に対してジュニアアスリートを医学的にどのようにバックアップしていくか?ということをメインにしておりますので、ここからは主題について話していきたいと思います。
 熱中症といっても程度があり、段階としては1度~3度と重症度に違いがあります。

熱中症の症状
Ⅰ度:熱けいれんと熱失神
体温は平熱~38度未満であり、汗を大量にかいている状態。皮膚は冷たくなり、顔色が悪い状態。めまい、たちくらみ、失神なども起こりうるステージ
Ⅱ度:熱疲労
体温は40度未満で汗をかいている状態。顔色は蒼白で、呼吸が速く、状態が悪いわりに脈が落ち着いているように感じられる。血圧も低下してきているが、子供ではわかりにくい。吐気、めまいを伴い、痛みを伴う筋肉のけいれんが起きることがある。興奮状態もしくはぼーっとする状態になっていることがあり、非常に危険なステージ。
Ⅲ度:熱射病
体温が40度以上となり、汗をかくことができなくなっている。皮膚が赤くなり、むしろ皮膚が乾燥している。意識がなく、脈も遅く血圧も明らかに低い。嘔吐、下痢などの症状を認めていることもある。救急搬送が必要なステージで、手遅れになることもある。

熱中症の対処法
クーリングと汗で失う電解質を補給しながら水分摂取をすることが大切になるのは当たり前ですが、Ⅰ度の状態で速やかに回復させることが必要になります。Ⅱ度になってしまうと医学的な介入無しではステージを戻すことができませんので、ジュニアアスリートメディカルサポートとしては、法人契約ないし個人バックアップ契約の方に対してはフルコミットという形をとっていますので、夏などリスクのある大会では帯同させていただき、体調の変化を感知した場合には、血液データを採取し血中ケトンや血糖値などを測定し、脱水の程度や乳酸値による疲労も推定し、クーリングと同時に大会現場で点滴加療をできる体制をとっています。
実際には、点滴加療になってしまうケースはほとんどなく、5年間で我々のバックアップケースでは一人のみで、この方は試合前の体調不良の状態と潜在的な甲状腺機能低下症が隠れていたことが原因でした。

我々のバックアップケースで点滴を必要とするケースがほとんどないことに対して、もっとも効果的であったと思っている方法はアイスバスを準備することです。アイスバスはアスリートの中ではリカバリーの一つとして注目されておりますが、日本は海外と違い小学校のグラウンドでも安全な水にアクセスすることが容易であり、子供が1人か2人程度入ることができるものは比較的安価に手に入れることもできるため、大会のみならず夏の期間の練習にも準備しておくととてもよいと思っております。休憩中に頭に水をかけることも簡単にできるため、日本の夏にスポーツをするための必需品ではないかと我々は考えています。

熱中症の予防
一般的には子供たちに塩タブレットを持たせておく。水分を多く持たせる。コーチは長時間こどもたちが太陽の下にいないように日陰で休憩させるなどが言われています。
我々は医学的な観点とサポート経験から熱中症が起こりやすい素因がないか?を事前に採血などで評価をしています。先ほどの少し取り上げましたが、甲状腺機能が低下していたり、亢進している場合には通常よりも熱中症になりやすいことが分かっているため、そのような隠れた基礎疾患がないか?をチェックしておくことを勧めております。特に潜在的甲状腺機能低下症は急速に成長期に突入してきている小学校高学年から中学生に隠れているケースが多いことがわかってきており、稀な出来事ではない可能性もあります。このようなことに医学的にフォローすることは日本の保険診療ではできませんので、小児科などで相談することができない側面もあり、我々は2024年7月からジュニアアスリートメディカルサポートとして一般向けにオープンいたしました。ご興味のある方はぜひとも下記サイトもご覧ください。


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