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上唇と人中に

高校生活は忘れがたい記憶を刻む学校行事が溢れている。
球技大会もその中の一つで、友情や競争心、そして団結力を養う貴重な時間となる。高校2年になり彼は、バレーボールとバスケットボールのどちらを選ぶかで悩んだ末、小学校で経験した事があるバスケットボールを参加する事に決めた。そして、彼女はバスケ部だったため、別の球技へ参加していた。

彼にとっては、野球漬けで名前だけを借りていた高校。
登校と行事への参加は、クラスメイトとの絆を深める絶好の機会であった。入学式以来ほとんど会うことのなかった同級生や、テスト前に助けてくれた友人との再会は、彼にとって大きな喜びである。もちろん、彼女との再会も。ただ、二人の関係は頻繁に会えるものではなかったため明確なものではなく、付き合っているのかどうかの境界線は曖昧だった。

彼のチームは優秀なメンバーで構成されており、見事決勝戦に進出した。試合の合間に、誰かが彼の肩をそっと叩く。久しぶりに目にする小さなメモが渡され、彼は急いで内容を確認した。
「校庭の隅にあるトイレで待っています」
その人目につかない場所が何を意味しているのか、暗号なのか単なるメッセージなのか。心躍る思いを抱きながら、彼は約束の場所へと急いだ。

待ち合わせ場所に着いたが、誰もいなかった。これは悪戯なのかとガッカリし、イライラが募る。体育館に戻ろうとしたその時、隠れていた彼女が突然現れた。
「わっ(笑)!」と彼を驚かせ、緊張が解けた。
「久しぶりだね…元気だった?決勝戦、頑張ってね!」
彼は彼女の言葉に感謝し、彼女が笑う時の奥二重の目を愛おしく思い、その優しい表情がこれから始まる決勝戦の力になるように変わった。
「試合、もうすぐ始まるよね?」
「うん、そろそろ戻らなきゃ」
体育館へ戻ろうと指を差したその時、彼女は突然彼の腕を掴み、人目を避けるかのようにトイレへと引き込む。頬は赤く染まり、彼に向けたその行動は、言葉以上の意味を持っていた。一瞬の口づけは、彼にとって予想外の出来事だった。彼女は何も言わずに立ち去り、彼は動揺を隠せずにその場に留まった。

それはほんの数秒間の出来事だった。彼の心は喜びと罪悪感で満たされていた。彼女が去っていく姿は愛しく、彼は彼女を追いかけたいと思ったが、足は動かなかった。

涙が彼の頬を伝い、静かな橋を作った。


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