ピンクの流星

 どうして地球を選んだのか

 と問われると呼ばれてしまったからに他ならない。
 地球は人気の星で美しい景色と美しい人々が暮らす星だ。

 ただ、我々のように思ったことが相手に伝わる事もなければ、なんでも自由に出来る事もできない。
 我々は魂だけの存在だから、ただただ浮遊して過ごす。とても自由だ。何もない、何もしない。それていて他の魂と争う事もない。
凪の星だ。


 それなのに、周りの魂は地球人に生まれたいと願う。我々は肉体を持たない存在だから、肉体を持ってみたいと思うのだろうか?
一度行ったことのある魂はまた地球にいきたいというのはなぜだろうか?


 この願いはタイミングが必要で、地球人から呼ばれないと地球人にはなれない。何より地球人としてどういうふうに生きていきたいかを明確にして、その願いに見合った胎児が生まれてこなければそこに入り込めないのだ。

 
 私は周りに居心地の良い存在がいて、何不自由なく暮らしている。
強いて言えば惹かれあった魂に存在に巡り会えていないことくらいか。
魂はこの広い宇宙そこかしこに存在しているから、出会うことは奇跡かもしれない。

 それを求めて地球人に生まれたいと思う魂もいるようだ。地球人は愛への執着が固執しているから。いい意味でも悪い意味でも。

 私はどうだろう?確かに愛し愛される、一生を共に過ごすという事がどういうものかは気になるところだ。

 しかし、今よりも窮屈な生活を強いられて、何よりも居心地の良い今の生活を捨ててまで地球人になりたいだろうか?

 確かに、今の環境は素晴らしいが飽き飽きもしている。刺激が何もないからだ。何もせず浮遊して、気の合う魂と会話をし、ただただ時の流れを過ごす。

 そう、地球にはここでは味わえない刺激がある。そんな窮屈な生活も悪くないかもしれない。今の時代なら日本なんて最適だ。自由も効くし裕福な家庭なら困りましない。

 そう考えていた時に聞こえた。

「たすけて…」

 地球から声が聞こえた。弱々しい、か細い、でも強い声。生かしたいという思いと共に。

「おねがい。あーちゃんをたすけて…!」

 双子の1人が放った声。
片割れが長く生きられないから、僕は混ざり合って命を繋ぐけど、そうしたら消えちゃうからあーちゃんと僕と生きてと懇願する。

 悲痛な叫びに同情してしまった。

 これも運命。

 そして、「晃(あき)」として産まれることになった。


 そこそこの家庭で、何不自由なく育ち、ちょっと古風な両親に育てられ、「女性とはこうあるべきもの」として育ったが、「うるさいな。」くらいにしか思っていなかった。
 そんな考え方がこびりついて反発して自由を求めた結果、人間に無頓着になっていた。悪い意味で。
 だから、人を傷つけ、自分に返ってきて、こんなにも人間のエゴに苦しめられるとは思っていなかった。

 美しい人々とは?

 同じように宇宙から地球にやってきた魂の人は美しいが、中々いない。
産まれる時に記憶も無くなるから、本当に希少種だ。

 それも人間にならないと味わえなかったこと。人間は賢くて狡くてルールに則らないひともたくさんいる。

 愛した人に裏切られてしまった傷はずっと残っている。
 もう何年も何年も。

 晃は将来、確実にくる不安に押し潰されそうになる。秘密を抱えてしまったから。自分の秘密ではないのに、秘密を抱えることを選んでしまったから。

 地球に来なければ味わえない不安。
 ドロドロとした人間関係。
 誠実さのかけらもない魂が漂う地球。


 そんな存在ばかりではないが、中々出会えない同じ魂を持つもの。

 探すのも待つのも疲れてしまった。

  ああ、帰りたい。
  元いた星に。
  早く帰ろう。

 帰る時に魂から一欠片の優しさを地球に降らせよう。

  誠実な人が増えるように。

  ピンクの流星になって。


 晃はそう誓った。


#小説 #スピリチュアル  

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