育成就労制度による外国人材育成

2024年4月28日 12:12

育成就労制度の創設

日本は現在、生産年齢人口（15歳から64歳まで）の急速な減少に直面しており、これが経済や社会全体の活力に大きな影響を与えています。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2020年には7000万人を超えていた生産年齢人口が、2100年には3200万人にまで減少する見込みです。
この人口減少を背景に、労働力の確保が急務とされ、高齢者の労働力活用だけでなく、外国人労働者の受け入れ拡大が重要視されています。

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技能実習制度との主要な違いと新制度への移行の理由。

日本政府は技能実習制度を見直し、新たに「育成就労制度」を創設しました。
この変更は、技能実習制度が主に開発途上国からの一時的労働力を対象にしていたのに対し、育成就労制度は専門の技能を持つ外国人労働者を中長期的に日本に定着させることを目的としています。
育成就労制度は、外国人労働者が特定技能1号の水準に到達するまでの育成を支援し、より高度な技能と日本語能力を身につけさせることで、彼らのキャリア構築と日本社会への完全な統合を目指します。

受け入れる職種の範囲と特定技能1号の役割。

育成就労制度の導入により、外国人労働者の受け入れ職種は介護、建設、農業など、人材不足が顕著な分野に限定されています。
これらの職種は「特定技能」と同様であり、国内での労働力確保を目的として選ばれています。
特定技能1号はこの制度の基盤となり、外国人労働者が初めにこのカテゴリーで受け入れられ、必要なスキルと日本語能力を身につけた後、可能であれば更なるキャリアアップを目指す育成就労の過程を経ます。

この新しい制度への移行は、国際的に競争力を持ち、多様な人材を惹きつける国になることを目的としています。
育成就労制度は外国人労働者に対して持続可能なキャリアパスを提供し、日本社会での長期的な定着を促進することで、単なる一時的な労働力供給源としてではなく、社会の一員として彼らが機能することを期待しています。

地域との連携

広島県の事例：特定技能2号の取得を目指す外国人の支援策

地方の中小企業にとって、外国人労働者の受け入れは、労働力不足を補う重要な手段となりますが、その成功には自治体の積極的な支援が不可欠です。
特に地方では、若い労働力の流出が顕著であり、中小企業が直面する人手不足は深刻な問題となっています。
このため、外国人労働者を効果的に受け入れ、長期的に定着させるためには、自治体による体系的なサポートが求められます。

具体的な事例として、広島県尾道市にある「因島鉄工」は、特定技能2号の取得を目指す外国人労働者に対して、広島県からの補助金を活用したサポートを提供しています。
この補助金は、最大300万円が提供され、外国人労働者が必要とする日本語教育や技能向上のための訓練に使用されます。
このような支援により、「因島鉄工」では全国で初めて特定技能2号の合格者を輩出しました。
この事例からもわかるように、地方自治体が外国人労働者の資格取得や職場適応を支援することは、彼らが地域社会に根付き、地元企業にとって価値ある人材となるために極めて重要です。

このように、地方自治体は外国人労働者の受け入れと定着を支えるために、資金的な援助の提供はもちろん、文化的な適応を助けるためのプログラムの提供や、地域コミュニティとの連携強化など、多角的な支援を行うべきです。
これにより、外国人労働者が地方で活躍する基盤が整い、日本全体の労働力不足の問題に対処することができるでしょう。

まとめ

日本の生産年齢人口の減少に対応するため、政府は技能実習制度から新たな「育成就労制度」への移行を計画しています。
この制度は、特に人手不足が顕著な介護、建設、農業などの分野で外国人労働者を中期的に受け入れ、専門の技能を有する人材へと育成することを目的としています。
また、制度の移行によって、これまで困難だった職場間の転籍が柔軟に行えるようになり、外国人労働者のキャリアパスが明確化されます。
政府はまた、「誘致戦略本部」を設立することを提案しており、これにより多機関にまたがる労働政策が一元化され、より効果的な外国人材の誘致と支援が可能となります。
地方自治体との連携による支援策も強化され、特に地方の中小企業が外国人材を受け入れやすくなることが期待されています。
このほか、高齢者労働者の受け入れ促進も重要な政策の一つとされ、高齢者が社会や経済に積極的に参加することで、その生活の質の向上及び介護需要の軽減が見込まれます。
これらの措置により、日本は人口減少という課題に対処しつつ、多文化共生の社会を実現し、国際競争力を維持することを目指しています。

参考文献:読売新聞（2024）｢外国人・高齢者　活力維持へ重要　『育成就労』『特定技能』着実に…人口減抑制［読売新聞社提言＜７＞］｣, <https://www.yomiuri.co.jp/national/20240425-OYT1T50222/> 2024年4月28日アクセス.

監修:センターポイント協同組合