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#30 エリートシューレってどんな感じ?ブンデスリーガアカデミーに通う育成年代日本人選手


こんにちは!
今日は昨日紹介したエリートシューレに通うお子さんを持つお母さんに聞いた話について書きます📝
本で読むだけじゃわからなかったことも理解が深まりました!
機会をいただきありがとうございます😊

・彼はどんな選手?
現在13歳。父の仕事のために家族でドイツに住むことになりました。彼は6歳ごろからドイツで生活をはじめて、今もなおドイツのクラブでプレーしています。それもブンデスリーガアカデミーで。そしてブンデスリーガアカデミーに所属していると昨日紹介したエリートシューレへの入学資格が得られます。つまり現在はエリートシューレに通いながらアカデミーで活動している日本人選手です。サッカーを目的にドイツ移住したわけではなく、体も小さく、オレオレ!と前に出るタイプでもなく、いつも笑顔な普通の子です。


・エリートシューレの具体的な話
ドイツにはまず大きく分けて3種類の学校があります。
主に大学入学資格獲得を目指す「ギムナジウム」
主に職業訓練をする「ミッテルシューレ」
専門学校などへの道を目指しつつ大学入学資格獲得の道も選べる「レアルシューレ」
ドイツで子育てをしてるわけではないので、この辺あんまり詳しくはないのですがこんな風に3種類あります。日本で例えると高校の種類のようですかね。進学校、商業高校、工業高校、、、など。
そして今回紹介するエリートシューレはこれらの学校+サッカーを学ぶ学校ということです。
今回お話しさせて頂いた方の住む地域ではこの3種類のエリートシューレが存在します。
つまり大学入学資格獲得を目指すプログラムにサッカーのプログラムも追加されている、サッカー専門学校(大学受験勉強あり)って感じです。シューレ(学校)という名前ですがそれぞれの学校に各学年に1つだけサッカーグラスを設置しています。このクラスのサポートをサッカー協会と各地域提携クラブが協力し行っています。
エリートシューレの哲学は「サッカー選手の前に1人の人間である。」というものです。サッカーだけを教えるのではなく、社会に必要なサッカー以外のことも大事にします。例えばプロになれない可能性。もしなれたとして、引退後にも人生は続きます。そんな時にサッカーしかできない人間にならないように学業も大切にします。この考えはエリートシューレ以外にも強く浸透していると感じます。ホッホドルフでもテスト勉強を優先します。
そしてこのエリートシューレの入学方法は大きく分けて2つあります。
1つは先程話したエリートシューレと提携しているブンデスリーガアカデミー所属の選手であるということ。
もう1つは一般枠。これは州の協会がテストを行い合格した選手が入学資格を得られます。つまりブンデスリーガアカデミー以外の選手にもチャンスがあります。
なのでエリートシューレに通う学生は全員才能あるサッカー選手。チームメイトやライバルチームの人と学校生活を共にします。
加えて先程説明した3種類の学校のどこに入るのか?については学校の成績によって決まります。
彼はギムナジウムのエリートシューレに通っています。
スケジュールは、ギムナジウムと同じプログラムをこなしつつ週2でサッカーの授業があるそうです。これは各ブンデスリーガアカデミーチームと一般枠に分かれて行います。そして彼が所属するクラブの活動は週に4日トレーニングがあり、週末に試合です。なので週に6回トレーニングの時間があります。なかなか忙しいですね。しかしエリートシューレでのサッカーの授業はしっかり負荷設定について考慮されており、低負荷で行うそうです。どちらかと言うと認知面や戦術面を重視しているのでしょうか。

このようにサッカー協会と学校、クラブが連携、協力し、選手らが学業にもサッカーにも集中できる環境が作られているのです。


・選手として、悩んだ日本とドイツの文化の違い
ここからアカデミーの話です。個人情報なので伏せますが彼の所属するブンデスリーガアカデミーは僕も知ってるチームでした。代表選手を輩出している名門です。
彼はそのチームに7歳の時にスカウトされ、U9から所属しています。その時に大きな壁にぶつかったそうです。
フィジカル?技術?メンタル?違いました。マインド面です。移籍直後は試合出場時間が少なかったそうです。そしてコーチにはこう言われたそうです。
「勇気が足りない。もっとチャレンジしないと。」
しかし言われた本人は勇気を持ってチャレンジしているつもりだったのです。さらにコーチは続けます。
「「失敗したらどうしよう。」と無意識に思っているように見える。ミスをしないように無難なプレーばかりだ。もっと勇気と自信を持つんだ。」と。
これには日本人的思考が関係していたと話してくれました。たしかにホッホドルフの子達をみても、「教えてもらったことをやってみよー!」という感じです。ポジティブ思考でサッカーに取り組みます。特にドイツ育成年代ではチャレンジする前向きなプレーを評価されているように感じます。日本人の多くはネガティブ思考ではないでしょうか。つまり彼はマインド面のスタートラインが他と違いました。彼自身は勇気をもってチャレンジしていると思っていても、それはドイツ人にとっての当たり前のことであり、スタートラインであったのです。そこからさらに勇気を持つことを高いレベルでは求められました。
そしてそのコーチはさらにこう言います。
「「ミスをしたらどうしよう。」と常に思っているから、ミスをした後パフォーマンスが悪くなる。ミスをしなかったらそれなりにいいんだけどね。だからパフォーマンスに安定感がない。」
僕は今まで「ミスをしないようにしよう。」という考え方のメリットに安定感が増すという風に考えていました。しかし実は逆でそのマインドでいて、ミスをした時に気分は落ち込みパフォーマンスが落ちているという指摘があったのです。これには納得させられました。これが「ミスを恐れずチャレンジしまくるぞ!」ってマインドならミスしても簡単には落ち込みません。試合全体を通して見た時にパフォーマンスは安定感がより強まります。
日本の育成現場ではこんな声かけをしていることを思い出しました。「なんだそのミスは!」「しっかりやれよ!」という声掛けです。こんな声掛けはよく聞きます。これは日本社会が「ミスは悪いこと」と思いすぎているため自然に発してしまうためではないのでしょうか。育成年代で高いプレッシャーの中、無難なプレーばかりでは成長の伸び代が減ってしまい、創造性は損なわれます。
そして彼はこのマインドに適応するために約1.2年努力し続けたと言います。しかし努力の結果、今ではコーチから「勇気を持ってプレーできている!素晴らしい!」と誉められるようになり、試合時間が最も少なかったのにスタメンでも起用されるように成長しました。
ドイツ生活に身を委ねて、努力してもマインドの矯正に1.2年要したのです。育成年代で身についてしまったこのマインドを修正することは日本ではかなり大変だとわかります。だからこそサッカーを始めたばかりのキッズ年代や低学年年代での正しい指導が大切だと感じました。



・日本人らしさにも良いところはある。
実際にコーチからそんな指摘を受けたわけですが、逆に良い面もあったそうです。
それは「謙虚さ」「自身の課題の改善への意欲の高さ」「その場の状況の理解の速さ」などです。
日本人だからなのか、それとも彼がそんな才能を持っていたからなのかはわかりませんが、今の彼はこれらを強みとして活躍しているのです。
「謙虚さ」
謙虚さは先程話した通りコーチの指摘をしっかり聞き入れ、改善していこうと努力することができていました。たしかに日本人の方が話を聞くし、問題解決への意欲は高いと感じます。ドイツでコーチを体験させてもらうと話を聞いてもらうことが本当に大変だと感じます。それは僕がドイツ語を話せないからではなく、キチコーチの時も、アシスタントコーチの時も、全員がしっかり整列して話を聞くという状況はなかなか作ることができません。
「自身の課題の改善への意欲」
謙虚さと少し類似しますが、勇気と自信をなかなか持てないという反面自身の問題点や改善点を見つけ出しそれを改善し、より良いプレーをすしようとする意欲は日本人らしさの良い特徴とも言えるでしょう。その改善点ばかりに目を向けるのも問題ですが、自身について振り返りもっとよくするにはどうしたらいいかな?と進んで考えられることはいいことです。
「その場の状況理解の速さ」
彼は13歳の成長途中で身長はまだ150cmありません。チームの集合写真をみても他のでかい選手に少し埋もれています。笑
しかし現在はスタメンに入ることも増えてきました。それは小さい身体でデカい選手に対抗するためにコートの状況を素早く認知し、的確な判断をしているからでしょう。そして勇気と自信を身につけた彼は他の選手に指示を出したり、コミュニケーションも上手く取ります。個人的に好きなタイプの特徴がある選手です。
実際のプレーを本当にみてみたいです。

そして彼の所属するアカデミーは現時点でのフィジカルよりも他の部分を重視しているそうです。保護者からみて最初は「この選手ついていけるの!?」と思っていても、徐々に成長し立派に活躍することが多いそう。なので近くのライバルチームにはU10辺りでは負け越してしまいますが、U12辺りで立場が逆転し、勝ち越すことが増えるそう。まさに育成クラブですね。そんなクラブに憧れます。

実際にアカデミーやエリートシューレに関わる人からの話は本当に面白く、興味深いことばかりでした。
ドイツの多くの指導者は前向きな声掛けばかりしてくれるそうです。チャレンジを褒めること。
そして落ち込んでいる時にも
「今自分が出来ていることを確認しよう。問題ばかりではく、そこに目を向けることも必要だよ。」と。常にポジティブで意味のある声掛けをしてくれたそう。

彼が6.7歳でドイツではじめてサッカーを始めた街クラブの指導者は世代別代表監督を務める程出世しているそう。しかし今もそのコーチとの関係は続いており、相談をすることがあるそうです。さらに今も所属していた街クラブに時々関わっています。世代別代表監督をしていても、自分のルーツ・地元のクラブを大切にし続ける。見習って行きたい姿勢です。

そして僕のドイツ滞在中に彼のプレーを実際に見に行く計画を今建てています📝
ドイツでのサッカーを楽しみ、素晴らしい選手成長していくことを陰から応援しています。

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