見出し画像

20210308 日記67 あのこは貴族の感想

休み。

後輩と映画を観に行ったのだけど、くしくもシン・エヴァンゲリオン公開初日で、オタクとしては逆張りみたいな感じになってしまったかもしれない。

私が月火休みという関係上、後輩と映画を観に行く時、仕事終わりに来てもらう形になってしまうのだけど、今の状況、仕事終わりに映画を観たら、もうどこも店やってないんですよね……。

新宿の街をふらふら遠回りしながら、映画の感想を話しあうような感じになった。

あのこは貴族

『佐々木、イン、マイマイン』を観に行った時、予告編を観て気になっていた映画の一つ。

今年、実写映画は新宿武蔵野館でしか観てない気がする。

もう一本気になった作品があって『藍に響け』という映画です。この2つの予告編を観ると、俺が何を気にしているのか丸わかりになってしまうのですが。

予告編をあらためて観たけど、観終えた後だと解釈違いかもしれない。(興味を引くための切り抜きとしては確実に正解なので、予告編としての正しさはあるが、こういう風に抽出しきれない部分に良さがある映画だったという思いがある)

めちゃくちゃいい映画だったけど、映画館を出た瞬間の感想は「息が詰まりそうだよ」というもので、そういうタイプの映画だった。

開業医の末娘として裕福な家庭に生まれた榛原華子、結婚相手を探す中で出会った顧問弁護士(ゆくゆくは国会議員)の青木幸一郎、幸一郎の一番の友人(愛人)だった地方出身の時岡美紀という3人の選択や人生を通じて、東京という街の階級構造を描いた作品だった。

東京という街は、階級が違う人たちの生活は、そもそも見えないように出来ていると作中で言及されている。

華子は結婚相手について「普通の人がいい」というのだけど、彼女が何気なく口にする「普通」というのが、私のような一般市民とは無意識の上に断絶されている。

でもそれは、それぞれの生まれた世界の中の「普通」がずれているということなので、どちらが正しいとか、正しくないという話でもなく、どちらもどちらにとっての常識なのだと思う。

その上で、より数の多い大衆にウケる映画をやるのであれば「階級構造から外れた先にある自由」だとか「お金では得られない価値」だとか「結婚=幸せという古い価値観の否定」だとか、モチーフ的に分かりやすく舵を切れる題材はいくつもあったのに、この映画はそれをしなかった。

それぞれの常識を否定するでも肯定するでもなく、あくまでも、その中で懸命に生きる人たちの姿を描き、そこで生まれる断絶をも、そのままに描ききって、それが「東京」という街なのだという答えを打ち出していたのが本当にすごいなと思った。

あとから振り返ってみても、この映画に悪者は一人もいなかったと思う。(青木家の人たちがいかにも嫌味っぽく描かれるけど、あれもあくまでも家を守るために懸命に生きた結果なのだと受け止めている)

2人乗りというモチーフが非常に良かった。

作中で美紀が華子に話した「旦那さんでも、友達でも、今日一日あったことを話せる人が一人でもいたらいいね」というのは、どんな生まれであれ、2人乗りできる(背中を預けられる)人が一人でもいれば、泣きたくなる日も少しは笑えるようになるよねという話でもあった。

幸一郎にとって、その背中を預けられる仲というのは、家を継ぐための結婚という契約を通すと、もろくも崩れてしまう。

だから、本来生きている階級が違うはずの美紀と、場末の中華料理屋で過ごす時間が、彼にとっての一番の救いでもあった。

それを示すモチーフとして「美紀が幸一郎の背中を使って、名刺に連絡先を書く」というシーンがあって、背中を使って書くという描写の特殊さに、妙に頭に残っていたのだけど、これが作中で3度描かれていた「二人乗り」の文脈に繋がるものだと気付いた時、かなり痺れましたね。

あと、美紀と友人の里英が「お互いずっと独身だったら、一緒に下の毛を永久脱毛しよう」という話が良すぎた。

正直、百合の気配を感じた(東京のお嬢様と地方出身の女の子という構造で)ため、観に行った節はあるのだけど、華子と美紀の関係性以上に、美紀と里英(あるいは華子と逸子)の関係性の中に、この映画そのもののテーマ性としてのつながりが示されていたようにも思う。

あと、序盤、華子の家の人たちの会食シーンで、めちゃくちゃセリフセリフした喋り方だな~と思っていたのだけど、美紀たちの会話はとても自然で、これが階級の違いや住む世界の違いを分かりやすく示すための演出であったことも、とても巧みだなと思った。

こういう後から噛みしめるほどに良く感じてくるタイプの映画、20代後半になってから好きだと思うようになってきた。

3月、4月は今泉力哉監督祭りも開催しなくてはいけないので、映画づいていくかもしれない。

あと、予告編で流れていた『戦場のメリークリスマス』のリマスター版予告がクソ面白そうだったので、今さらながら観ようかな……と思わされた。

今日(3月8日)の一ツイ

エヴァ、決して逆張りしているわけではなく、覚悟が必要と思って後回しにしていたら、観るきっかけを逃してしまった作品です……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?