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#09 English A と Japanese A の両立?

皆さんこんにちは、今回取り上げるのはIBにおける「言語と文学」(Language and Literature)への向き合い方です。

まず初めにざっくり説明すると、「言語と文学」とはその言語を母国語とする人を対象とした、IBにおける「国語」のような科目で、各言語ごとに English A や Japanese A といった形で設けられています。一般的に、日本の高校教育における「国語」では現代文と古典の両方を扱い、文章読解や文法的な知識などに焦点が当てられている印象がありますが、IBの「言語と文学」ではテクストが創られた意図やそれを達成するために作者がどのような選択を行っているか、という点が軸となります。IBには "Literature"(文学)という科目もあるのですが(GKAでは最近は開講されてないと思います)、「言語と文学」では「テクスト」として文学作品だけではなく、新聞記事やポスター、ウェブサイト、マンガ、さらには映画や劇、弔辞まで扱う点が特徴となっています。

最終試験では、初見の非文学テクストを分析する Paper 1 と文学テクストを取り上げて比較を行う Paper 2 があり、その他にも評価課題として口頭で行われるIOがあります(HLを選択するとさらに HL Essay が課されます)。大学の一般受験における国語の試験とは大きく異なり、漢字の読み書きや文法の知識を問う問題、穴埋めや選択肢から選ぶ形式の問題は出題されず、試験で求められるのはエッセイを書き上げることとなります(しかし、エッセイの言語面も評価対象となるので漢字を書く力や語彙、基礎的な文法力はもちろん必要で、作者の意図がくみ取れなくてはそもそも選択の分析に入れませんし、分析の観点として文法的な知識が役立ったりします)。

前置きが長くなってしまいましたが、今回は English A と Japanese A の両方(ともにSL)をとっていた者として、その両立のために意識すると良さそうな点や自分自身が取り組んだ Paper 1 やIOに関するちょっとしたポイントを、経験談も交えながら紹介したいと思います。先にお断りしますが、「言語と文学」は個人的に一番苦戦した科目でもあり、正直「これが攻略法だ!」といったアドバイスはできないため、そういった質問はぜひ積極的に先生方に投げかけてみてください!


そもそも Double A というと…?

GKAでは多くの生徒が Japanese A を選択しながらも English A をとっているため、英語が比較的得意な生徒は English A へ行くのが当たり前と思われていますが、実は Language A 二つというのはかなりレアです。単刀直入に言ってしまうと、シンプルに考えて English A のほうがハイスコアを狙うのは難しいため、単にスコアだけが加味される場合は受験において不利になってしまうことは否めません。しかし、両方Aを選択していると、IB生は「すごい」と反応してくれることが多いので、スコアが思うように伸びなくても自信を失わずに、誇りを持ちましょう!

Language A を二つ選択するアドバンテージを挙げるなら、Japanese と English の両方で Global Issue(グローバルな問題)を立てる練習をしたり、様々な表現技法(authorial choices)を学んだりできることです。どうしても不利になりやすい状況の中、少しでもそれをプラスに変えられるように、両方に共通する点は積極的に活かしていきながら、異なる点は混同しないように注意することが重要です。

実際に試験で点数はどう変動した?

IB生としての2年間、計5回分の定期試験と Mock および Final における Japanese A と English A の Paper 1 の点数の変動をグラフにしてみました。Paper 1 の実施・採点がそもそも無かった回や記録が残っていない回もあったため、一部記憶を頼りに補った部分もあり、不正確な可能性もあるということはご承知おきください。

Figure 1. Japanese A and English A Paper 1 Marks in Term Examinations

このグラフからも読み取れる通り、最終試験も含め、定期試験での Lang&Lit の Paper 1 の点数は大幅に変動しました。そして、必ずしも回数を重ねることで点数が伸びるわけではない、という結果になりました。理系教科に比べて、Lang&Lit の試験の点数は変動しやすいと考えているのですが、それには以下のような要因が挙げられます:

  1. 出題されたテクストとの相性

  2. スタイルを確立する難しさ

  3. 採点官による評価のばらつき

まず1つ目の点に関しては、様々なテクストタイプの分析をこなすことで、普段あまり見かけることのないテクストタイプが出題されても落ち着いて対処できるようにするのが攻略法だと考えられます。Japanese と English の両方で Language A をとっているIB生は、単純に考えるとテクストを分析する機会が2倍になりますし、English A では cartoon など、Japanese A ではあまり扱われないテクストタイプにも触れられるため、このアドバンテージは最大限に活かしていきましょう!

先に3つ目の点について説明すると、正直これは自分でコントロールできる要因ではないため、不可抗力的な側面も大きいと思います。そんな中でも、一つ考えられる対応策としては、複数の人からフィードバックをもらうことが挙げられます。どうしても Paper 1 の評価には主観が影響してしまうため、学校の先生の間でも評価が割れることは珍しくありません。採点官がどのような文章を良いと判断するのかは誰も分からないため、より多くの人を納得させる文章を書けるように、異なる視点からのアドバイスを受けると効果的です。

2つ目の点に関しては、実は Japanese と English で両方Aをとっている人ならではの問題も絡んできます。Paper 1 では序論・本論・結論によって回答を構成する、などといった基本的な事項はどちらにも共通して言えますが、焦点を当てるべきポイントなどに違いがあるため、例えば English A で学んだことをそのまま Japanese A に反映させると、必ずしも良い点数にはつながりません。つまり、Japanese A と English A のそれぞれで何が求められているかをしっかり理解したうえで、両方について自分自身のスタイルを確立する必要がある、ということです。これは自分自身が最も苦労したことでもあり、新たなスタイルを模索する過程で大幅に点数が落ちてしまったこともありました(グラフが急にへこんでいるところです)。Mock や Final の直前で点数が安定しない状態だと不安要素が大きくなってしまうため、Japanese A と English A それぞれにおけるスタイルの模索・確立はなるべく早い段階で完了させましょう

なお、3つ目の点として挙げたように、Japanese や English に関しては Final で思っていたよりも点数が伸びない、という可能性も考えられます(これは実際の経験談です、グラフを見てみると明白です)。そのため、理系教科のほうがしっかり対策すれば安定して高得点をとれるので、個人的にはそちらで点数を確実に積み上げていくほうがおすすめです。

Paper 1 とIOで頭に入れておくといい点は?

先にも書いたように、Lang&Lit に関する的確なアドバイスはあまりできないのですが、English A と Japanese A を比較した際に自分自身が感じた主な相違点を3つ挙げてみます:

  1. Conclusion で何か message や final words を残すのは English A 寄り

  2. Japanese A より English A のほうが、範囲(対象)を限定した深い分析が求められる印象

  3. Rhetorical devices の数(種類)は圧倒的に English A のほうが多い

1つ目の点に関する補足をすると、English A のIOで高得点をとるためには conclusion で Global Issue の重要性について justify(正当化)するべきだと言われます。しかし、Japanese A ではIOにおいても Paper 1 においても、結論で今までに述べていなかった内容を膨らませすぎることで構成面に悪影響が及ぶくらいなら、本論で論述した内容のまとめに留めたほうが無難、と言われます。

Figure 2. Types of Rhetorical Repetitions

上の図は、日本語では「反復」と総称される表現技法が英語では非常に細かく分類されている、ということを示したものです。決して English A ではこれらすべてを覚える必要がある、というわけではありませんが、そもそもテクストを分析する学問分野が日本に比べて他国のほうが発展しているため、3つ目の点として示したように分析の語彙は英語のほうが豊富です。これは、English A ではテクストの一部分を取り上げてそれを細かく分析する方が評価される、という2つ目の点の背景にもなっています。

Paper 1 とIOに向けてどう準備すべき?

最後に、簡潔に Paper 1 とIOに向けてどう準備すべきか書きます。

Paper 1 に関しては、「時間を計って練習し、フィードバックをもらう」です。分析やアウトライン作成、各段落の執筆にそれぞれ何分かけるか決めたり、アノテーションを素早く見やすくできるように工夫したり、漢字や語彙の知識に抜けがないか確認したり、といった意味で試験を意識した練習を行うのは非常に効果的です。また、なかなか自分で客観的に評価するのは難しいと思うので、他の人に読んでもらってフィードバックをもらうのは大変ためになります。

IOに関しては、「とにかく入念に練習を重ねる」です。以前の記事でも触れていますが、IOが行われるのは夏休み中なので、準備時間はたっぷりあるはずなのです。いくらでも事前に準備することができるIOは大きな得点源となるはずなので、絶対に「ノリで行けばいいや」などとは思わずに、自信を持って挑めるように何度も時間を計って通し練習を繰り返しましょう。準備にかけた effort がそのまま点数に反映されるので、大変なのはよく分かりますが、気を抜かずに頑張ってください!

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