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猫の集会


3日前に書いた「ありがとうプロ野球ai」という投稿、note公式さんの野球マガジンに入れていただいてものすごくうれしかったのだが、ちょっと心配になった。
「野球にまつわる素敵な投稿を紹介していきます」って書いてありますけど、素敵でしたかね‥‥。素敵だと思っていただけたのならよかったですが‥‥。自分の中では、エロ本を買う男子のような心境を吐露した話以外の何物でもなかったものですから‥‥。
次見たとき、マガジンから外されてなければいいなと思う野球好きの気持ち。


唐突だが、猫の話をしたい。

実家にいた頃、我が家には猫が2匹いた。
猫と暮らしたことがある方にはわかっていただけると思うが、猫は話しかけてくる。

飯くれ。
起きろ。
ドア開けろ。
なにすんだよ。ニャー。

動物を飼ったことのない夫にこの話をすると、
「んなアホなー!猫の言うことがわかるわけないやんけー」
などと言ってくるが、わかるのだからしかたがない。きっと猫もこっちの言うことを理解しているに違いない。
さらに、猫はいちばん気持ちの良い場所を知っている。
干してフカフカになった布団をセッティング。さあ寝ようと思うと猫はたいてい先に寝ている。ふっかふかの布団の上で、それはそれは気持ちよさそうに。ニクいけどカワイイ。

実家にいた2匹のうち、先輩猫のナナさんは病を発し、私が一人暮らしを始めた直後に亡くなった。
彼女は外にお出かけするタイプの猫で、昼間外に出かけていき、夕方駐車場の車の下などに潜んでいて、人間が家に入ろうとする瞬間を狙ってスルッと中に入ってくるのだった。
たいていその日のうちに帰ってくるのだが、一回だけ外泊したことがあった。帰ってこないなんて初めてだったし、翌日大雨が降ってきたのでとても心配した。
3日目の朝、ナナさんはひょっこり帰ってきた。どこにいたのか濡れた様子もなく、何事もなかったかのようにご飯を食べていたが、ナナさんの雰囲気がその日を境にちょっと変わったのを思い出す。おそらく猫には人間の知らない猫の世界があって、ナナさんはあの日彼女なりの冒険をして、ひとつ大人になったんだと思う。

もう1匹のハチさんはとても長生きだった。
年月が過ぎ、私が結婚し、弟が結婚しても、実家に帰るといつもハチさんが出迎えてくれた。次の年も、またその次の年も‥‥。
「ねぇ、ハチさんっていくつなんだっけ?」
弟にたずねると、彼は首をかしげながら言う。
「それなんだよ。もう20歳くらいだと思うんだよな。」
ハチさんはもう年を取って目も耳も悪くなっているようだ。
さらに数年後の新年に家族が集まったときには、トイレに行くのも大変なようすだった。それでも元気にご飯を食べていたので安心していたのだが、数日後ハチさんが亡くなったと母から連絡が来た。
温かいマットの上で寝ていたハチさんは、のどが渇いたのだろうか、水が置いてあるほうに向かう途中で力尽きていたそうな。
おそらく家族みんなが集まった日に最後のお別れをしてから旅立ったのだろうと思う。



たしかハチさんが亡くなった直後くらいではなかっただろうか。私はとても不思議な光景に出くわした。

仕事帰り、夜駅から歩いて自宅に向かっていると、突然、閉まっている信用金庫の前に猫がわらわらと集まってきた。おそらく10匹以上いたのではないか。
猫好きな私は思わず近寄ってじっと見入ってしまったのだが、猫たちは逃げようともせず、皆が皆じっと同じ一点を見ている。その中の1匹にちょっかいをかけると、その猫は明らかにイラっとした様子で、邪魔すんな!と言わんばかりに猫パンチを食らわせてきた。ごめんごめんと思った私は、少し離れたところで猫たちの様子を見ていた。
猫たちはなんだかとても集中している様子で、耳をぴんと立て目を見開いて一点を見ている。しばらくするとどこへともなく消えていったが、彼らはいったい何をしていたのだろう。

私はあれが噂の「猫の集会」というものだったのだと、今でも信じている。