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ダイエットするなら、気合”だけ”で痩せようとしないほうが良いーー『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』を読んで

いまから5〜6年くらい前のことです。
「これはヤバイ」
家族と一緒に写真に写る自分のパンパンの顔を見て、衝撃を受けました。

大学入学を機に10年間続けたバドミントンを辞めたものの、食べる量はと変わらず。
結果的に2年で10キロ太ったことが原因でした。

そこからダイエットをスタートし、筋トレにもハマりました。
多いときは1日に20キロくらい走って、プラスで筋トレを2時間とか。
運動部出身だったし全然苦じゃなかったです。

運動を続けられた理由を考えてみると、「運動部出身」ってことだけではなかったと、今なら思えます。
走るときも筋トレするときも、友だちを巻き込んで一緒にやってましたし、毎日体組成計に乗って、体重や体脂肪率の変化を楽しんでました。
結果的に1年間で9キロのダイエットに成功し、筋肉質なボディに戻ることができました。(ちなみに、今では筋トレが趣味になってます)

あの頃を振り返ってみると、つらさや楽しさを友だちと共有したり、体重などの客観的な数字から変化を判断することでPDCAサイクルを回してたんですね。
無意識のうちに「ダイエットを行う環境」をつくっていたことに、『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』を読んで、気づかされました。

「WELQ事件」を覚えていますか?
DeNAが運営していたサイトで、人の健康に関わるヘルスケア情報について不正確なものが大量に発信されていると非難された事件です。

そして、この騒動の火付け役となった医療記者の朽木誠一郎さんが、この『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』を執筆されています。

医学部卒の医療記者としての豊富な知識や考え方が満載。しかも実際に朽木さん自身が行ってきたダイエットをベースに書かれているので、言葉の重みも違います。「仲間と飲み会に行けない」ツラさは、実際にダイエットをしたことがないと実感しづらく、「あ〜わかるわかる」と共感しながら読み進めることができました。

意思はハックできる

「太らせる力」に正面から”意思だけ”で向き合うと挫折する

『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』中の一節です。

「ダイエット」に失敗するのは、自分の意思が弱いから…。そう思っていませんか?
でも人は、自分が思っているほど「自分の意思」に沿って行動していません。習慣やその場の雰囲気に流されているんですね。
さらに本書によると、肥満者の場合は、肥満者に特有の「思考のクセ」も関係しているそうです。

であれば、「意思を変えればダイエットは成功する」と言い切れるのでしょうか?

朽木さんの主張の特徴は、ダイエットを成功させるために「意思力」ではなく「ダイエットが続く環境づくり」に目を向けさせる点です。
厳密に言うと、「ダイエットを継続させる意思をハックするために、環境づくりに目を向けよう」という点。

ダイエットに必要なのは「摂取カロリー < 消費カロリー」の不等式。
不等式を成立させるには、基本的には「食事の節制」と「適度な運動」しかありません。
ここまでは誰でも頭では理解していると思います。
なのにできない。分かっているのにできない。自分の意思が弱いからだ。誘惑に負けるのは意志の力のせいだ……と考えてしまうことでしょう。

ぼく自身も、中学・高校と体育会系社会の中で生きてきたので、いろいろな場面で「意志の力の強弱」を引き合いに出してしまいます…。ついつい「気合いでがんばれ」と言ってしまいます。

ところが、人間の行動は意思ではなく周りの環境に大きく左右されていることが、近年の研究から明らかになっているんですね。
ヘルスケアに関しても、人が不健康になる理由のうち(運動習慣についての研究結果では)、本人の意思によるものが30%ほど、残り70%が環境によるものとされているそう。

元マッキンゼー日本支社長の大前研一さんもこう言っています。

人間が変わる方法は3つしかない
1. 時間の使い方を変えること
2. 住む場所を変えること
3. 付き合う人間を変えること
この3つでしか人間は変わらない
もっとも無意味なのは、「決意を新たにする」ことだ

いくら決意を新たにしても、3日坊主で終われば意味がありません。ダイエットに関しては「継続こそ力なり」です。
意思に頼るのではなく、頭や身体が自然とダイエットのことを考えている、気付いたらダイエットしているような状態を目指したほうが効果的。だから環境づくりが大切。

「健康になりやすいかどうか」には個人差がある

「健康格差」という言葉を知っていますか?

人の健康は、遺伝的なものや病院などへのアクセスに依存しています。
が、実際にはそれだけでなく、所得や学歴、職種、性別なども健康状態に大きく関係してるんですね。

人は遺伝や立地だけでなく、それぞれの置かれた状況によって健康状態に差があり、これを「健康格差」といいます。
つまり、人は自分の意思だけで太っているわけではないということ。周りの環境が、あなたに「太らせるような選択」をさせているのかもしれません。

時間やお金の都合で、健康を重視するだけの余裕がない人が行動を変えるにはどうすればいいのか?ダイエットを継続する上での「障害」を減らすにはどうしたらいいのか?
本書では朽木さんの実践例として、スマホアプリなどのツールを利用した取り組みが紹介されています。朽木さんは本業の激務をこなしながらダイエットを成功させており、忙しいビジネスパーソンは参考にする価値ありです。

今年の夏こそは!と思うだけの夏を毎年繰り返してしまっている人は、朽木さんのダイエット方法を参考にしてみると良いのかもしれません。

というか、ダイエットだけではなく「自分の意思って弱いよな……」と悩んだことのある人は読む価値ありだと思います。あとは、中長期的な目標を達成するためのスケジュールを立てるのが苦手な人とか。

環境づくりは自分づくり!



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