漫才 「ペット」

ミミ吉  「はいど~も~。ミミ吉です」

ハナゾウ 「ハナゾウです。お願いします」

ミミ吉  「最近、面白い事ってないなと思ってね」

ハナゾウ 「そう?俺は結構あるけどね」

ミミ吉  「ホームレスだとそうなんだ」

ハナゾウ 「ホームレスじゃねぇよ。ペットも買ってるし。チワワ」

ミミ吉  「そうだっけ?」

ハナゾウ 「この前散歩連れて行ったときさ、俺リードから手離しちゃって逃げてったんだよね」

ミミ吉  「ペットなんか飼ってたっけ?」

ハナゾウ 「飼ってるよ。そして、逃げて行った先が、近所でも心霊スポットとして有名な神社だったの」

ミミ吉  「いや、飼ってないよ。お前ペット飼ってないよ。お前昔、ペット飼うくらいなら壺買うって言ってたじゃん。それで60万円の壺買ってたじゃん。『今日から消費税100%になったんだよ』って騙されて120万円払ってたじゃん」

ハナゾウ 「チワワ飼ってるよ。そして、神社の鳥居を通った瞬間に居なくなったの。目の前で神隠しにあったの!これマジだよ!」

ミミ吉  「俺から壺買ったじゃん!」

ハナゾウ 「壺は買ったよ!税込66万円でいいところ120万円払ったよ」

ミミ吉  「だよね!ペットは飼ってるんだっけ?」

ハナゾウ 「ペットは飼ってないよ」

ミミ吉  「何がしたいの?あなたは」

ハナゾウ 「神隠しにあったんだからもう飼ってないよ」

ミミ吉  「神隠しとかじゃなく、元々飼ってないじゃん」

ハナゾウ 「元々は飼ってたよ!んで、神隠しにあって居なくかったから諦めて家に帰った」

ミミ吉  「神隠しにあったとしたら探せよ!なんで帰ってんだ!」

ハナゾウ 「次は俺が隠れる番だろうが!」

ミミ吉  「まだチワワが隠れてるんだよ!」

ハナゾウ 「チワワを神隠しにあわせた神様から隠れる為に帰ったんだよ」

ミミ吉  「薄情過ぎるわ!」

ハナゾウ 「チワワは諦めた」

ミミ吉  「さっきからチワワチワワって、名前で呼んでやれ!」

ハナゾウ 「名前で呼んでるよ」

ミミ吉  「は?」

ハナゾウ 「チワワっていう名前なんだよ」

ミミ吉  「ん!?」

ハナゾウ 「チワワっていう名前のチワワ飼ってんだよ」

ミミ吉  「それ名前つけてないのと一緒だわ!」

ハナゾウ 「チワワらしく育って欲しいっていう願いを込めて、チワワっていう名前つけたの」

ミミ吉  「人間に人間って名前つけるか?それと一緒だぞ」

ハナゾウ 「カレーライスに名前つけるか?」

ミミ吉  「あれは違うよ。カレーライスは軍団名だから」

ハナゾウ 「どういうこと?」

ミミ吉  「だから、米担当こしひかりちゃん、豚肉担当デュロックちゃん、人参担当五寸人参ちゃん、じゃがいも担当メークインちゃん、ルー担当バーモンドカレーちゃん、隠し味担当コーヒーのアラビカちゃん。これが全部合体してカレーライス軍団になるの。材料一つ一つにはちゃんと名前ついてんだよ。だからお前もチワワに名前つけてやれ」

ハナゾウ 「俺は、強い願いを込めてチワワって名付けたんだよ!」

ミミ吉  「ペットの名前に願い込めるかね?」

ハナゾウ 「え?」

ミミ吉  「賢く育って欲しいから賢人とか、美しい心を持って欲しいから心美とか。ペットの名前決める時にそんなこと考えないでしょ?」

ハナゾウ 「考えるよ。なんなら名前の候補もう一つあったよ」

ミミ吉  「なに?」

ハナゾウ 「大人しく育つように、借りてきた猫」

ミミ吉  「可哀想に。意味のない可愛らしい横文字の名前つけてあげろよ。そして、チワワには元気であって欲しい」

ハナゾウ 「別にいいだろ」

ミミ吉  「愛がないんだ。ペットに対して。そんなだから、散歩中に逃げられるんだ。お前2度とペット飼うなよ」

ハナゾウ 「じゃあ、お前は2度と壺持つんじゃねぇぞ!」

ミミ吉  「なんでだよ」

ハナゾウ 「お前は壺を持つと、すぐ誰かに売るからな!壺が可哀想だわ!」

ミミ吉  「可哀想なことないよ。ちゃんと愛着持ってるよ」

ハナゾウ 「愛着のある壺を売るのか?お前は」

ミミ吉  「ちゃんと心は痛んでるよ。売る前に名前呼んであげて『ごめんね』って言ってるし」

ハナゾウ 「ペット捨てる時にやるやつじゃん。そして、壺に名前つけてんの?」

ミミ吉  「そうだよ。お前も俺から買った壺見てみろよ。底に名前書いてあるから」

ハナゾウ 「それって製作者の名前じゃないの?」

ミミ吉  「そうだよ。名前は名前だろうが」

ハナゾウ 「っていうかさ、製作者の名前が入ってる壺でしょ?」

ミミ吉  「うん」

ハナゾウ 「結構高価な物なんじゃないの?よく分かんないけど」

ミミ吉  「そうだよ。あれ本当は180万円するんだよ」

ハナゾウ 「まじで!?俺120万円で買ったけど」

ミミ吉  「お前は、俺に騙されたって思ってただろうけど、本当は俺が損してんだよ」

ハナゾウ 「なんでそんな事したんだよ」

ミミ吉  「競馬で勝ったから調子に乗って」

ハナゾウ 「だったら普通に金くれよ」

ミミ吉  「お前がペット飼うなら壺買うって言ってたから」

ハナゾウ 「ツボって土地の方のツボだよ」

ミミ吉  「じゃあ土地って言え!お前のせいで無駄に心が痛んだ!そして、ペットと土地を同列に考えるな!ペットと壺も然り」

ハナゾウ 「いらん買い物しちゃったよ」

ミミ吉  「まぁ、価値ある物に変わりはないからさ、その壺にお祈りしてみれば?」

ハナゾウ 「いや、ほっとけば近い内見つかるでしょ」

ミミ吉  「神隠しってそんなもんなの?」

ハナゾウ 「その神社って、学問の神様が祀られてるのね」

ミミ吉  「うん」

ハナゾウ 「なんかさ、学問の神がしかける神隠しってショボい気するじゃん?」

ミミ吉  「それは知らないよ」

ハナゾウ 「良い神様の神隠しなんて、そんなに効力ないよ」

ミミ吉  「そうかな?」

ハナゾウ 「俺もさ、受験受ける時にその学問の神様にお祈りしたの。そして合格したんだから」

ミミ吉  「そんな奴が、消費税100%なんて嘘に騙されるかね?」

ハナゾウ 「俺の知識も神隠しにあっちゃったかな?」

ミミ吉  「やかましいわ!どうも、ありがとうございました」

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