漫才 「なんでも言うこときく券」



ミミ吉  「はいどーもー。ミミ吉です」

ハナゾウ 「ハナゾウです。お願いします」

ミミ吉  「この前、久しぶりに部屋の掃除してたら…」

ハナゾウ 「ちょっと待って。“久しぶりに部屋の掃除”っていつぶり?」

ミミ吉  「1ヶ月ぶり」

ハナゾウ 「…まぁ良いでしょう」

ミミ吉  「ありがとう」

ハナゾウ 「で、部屋の掃除してたらどうしたの?」

ミミ吉  「漫画開いたら、紙が1枚ひらひらって落ちてきてさ」

ハナゾウ 「お前掃除サボったな!漫画読んでんじゃねぇか」

ミミ吉  「大丈夫!ギャグ漫画ではないから」

ハナゾウ 「何も良くねぇよ。掃除しろ!」

ミミ吉  「で、その紙に“何でも言うこときく券”って書いてあったの」

ハナゾウ 「あ~、子供がお母さんとかにプレゼントする様なやつね」

ミミ吉  「そう。でもさ、誰から貰ったのか全然覚えてないんだよね」

ハナゾウ 「そうなんだ」

ミミ吉  「だから、お前に使って良い?」

ハナゾウ 「シャラップ!」

ミミ吉  「有効期限来週までなんだよ」

ハナゾウ 「シャ~ラップ!てかさ、それお前が作ったやつなんじゃないの?親にプレゼントするために」

ミミ吉  「それはないと思うけどな。最新刊の漫画から出てきたやつだし」

ハナゾウ 「あ~、そうなんだ」

ミミ吉  「うん。自分で描いた漫画」

ハナゾウ 「漫画描いてんの?」

ミミ吉  「うん。4コマ漫画」

ハナゾウ 「多分ギャグ漫画じゃねぇか!」

ミミ吉  「違うよ。ドキュメンタリー4コマ漫画だよ」

ハナゾウ 「それ4コマでオチ付けられるのか?」

ミミ吉  「ドキュメンタリーにオチはいらないんだよ」

ハナゾウ 「4コマ漫画にはオチ要るだろうが!」

ミミ吉  「てか、そんなことはどうでも良くて、何でも言うこときく券使わせてくれって言ってんの」

ハナゾウ 「だから嫌だって。その券が本当にお前が貰ったやつなのかも分かんないんでしょ?」

ミミ吉  「分かんない。でも使う。もう券に俺の名前書いたし。ネームペンで」

ハナゾウ 「まず、お前はその券を使って何がしたいの?」

ミミ吉  「俺の漫画を週刊誌で連載したい!」

ハナゾウ 「おぉん。それくらいなら良いけど…」

ミミ吉  「良いの!?」

ハナゾウ 「その程度のお願いなら、叶えてやるよ」

ミミ吉  「週刊誌に漫画を連載するのって“その程度”なんだ…」

ハナゾウ 「まぁ、俺の手にかかればね」

ミミ吉  「俺、金輪際お前に足向けて寝ないって誓うわ」

ハナゾウ 「締め切りは絶対守ってね」

ミミ吉  「もちろん!でも、お前ってそんな力あったんだ?出版社に知り合いでも居るの?」

ハナゾウ 「出版社に知り合いというか、出版するの俺だからね。まぁ、長らく休刊してるけど」

ミミ吉  「どういうこと?」

ハナゾウ 「俺、小学生の時にオリジナルの週刊誌をつくってたの」

ミミ吉  「漫画なら聞いたことあるけど、週刊誌作ってた…?」

ハナゾウ 「そう」

ミミ吉  「小学生が作る週刊誌ってどんなだよ」

ハナゾウ 「まぁ、普通に漫画の連載が基本だね。コミック本も作るよ」

ミミ吉  「俺の他にも、お前の週刊誌で連載する人居るの?」

ハナゾウ 「居ないよ。だから、1人で15作は描いてもらうことになるけど」

ミミ吉  「え…ちょっと…」

ハナゾウ 「長期連載にしたいから、短くてもコミック50巻までは描いてね。全作品」

ミミ吉  「終わった…」

ハナゾウ 「アシスタント付かないから、1人で頑張って」

ミミ吉  「1人ぼっちで頑張れるかな…?」

ハナゾウ 「フルカラーでお願いね」

ミミ吉  「あのさ、この週刊誌ってコンビニとかに並ぶの?」

ハナゾウ 「そんなの無理に決まってるよね。頑張って人気漫画家になろうな!」

ミミ吉  「どうやって人気になればいいんだよ…」

ハナゾウ 「まぁ、でも週刊誌で1人15作は厳しか…」

ミミ吉  「おぉ!やっと気づいた!」

ハナゾウ 「うるう年刊誌にするか!」

ミミ吉  「やることが極端だわ!」

ハナゾウ 「うるう年刊誌でコミック50巻目指そう!」

ミミ吉  「何歳まで生きればいいんだよ…」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?