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田舎日記2020-05-11『実写版:斉木楠雄のΨ難』

 昨日の晩飯はたけのこご飯だった。うまい。

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①『実写版:斉木楠雄のΨ難』(※ネタバレです)

 青春とは箱庭である。アニメが面白かったので実写版も視聴した『斉木楠雄のΨ難』だが、相変わらずよくも悪くも福田雄一の映画だ。この人のギャグマンガ的な表現をあえて映像のなかに取り入れる手段の一つとして、『動きの直前にキビキビした前振りの動作を入れる』や『ドアップで顔芸を映し出す』『映像をあえてチープなレイアウトで加工する』『若干棒読みの芝居』『明らかに実写で喋らせるにはわざとらしい台詞回しをそのまま使う』『そのくせ一人称や設定は躊躇なく変える』といった表現は好みが大きく別れるし、それがこの人の作風が「高予算お遊戯会」と揶揄される所以である。まぁ云ってしまえばすべてが茶番であるし。

 しかし僕は福田映画が嫌いではない。いや、あえて云うが大好きだ。『シャザム!』の吹替えの件を生涯許すことはできないにせよ、僕は福田作品ならそれだけでとりあえず視聴する程度には彼の作風が好きである。

 原作ではあらゆる場所で超能力を使う『斉木楠雄のΨ難』だが、この実写版は作品の舞台がすべて学園のなかで完結する。学園祭という行事を舞台に一癖も二癖もあるキャラクターが暴れ回る愉快な映画……といえば聞こえはいいが、前述した通りキャラクターの設定が改変されているため原作の熱心なファンには顰蹙を買うかもしれない。

 もっとも驚いた改変が照橋さんが明確に「ヴィラン」として描かれていることだ。原作では主人公以外にそこそこ無害だった照橋さんをガチめの性格悪い女に改変し、ずいぶんと思い切った策略を巡らせるクレイジーな黒幕というポジションで騒動を起こす。いやマジで一ミリもこの女にイイトコがないんじゃないか? というような改変です。正直見ていて引いてしまった。

 僕も作品のなかでヒロインをヴィランにしがちな人間だけれど、この実写版『斉木楠雄のΨ難』では特に青春の暗部を描くつもりもなければ、登場人物たちがくよくよ悩んだり葛藤するシーンもない。ほぼ全員がマンガ的なテンションの下に動く、一見して賑やかな作品である。見る角度を変えれば名前のあるキャラ全員が狂人といって差し支えないお祭り映画だ。そのなかでヒロインである照橋さんだけが『どす黒い邪悪』なのだ。

 何が云いたいかというと、善悪の倫理観や心の闇が主題ではない作品で不意打ち気味に『どす黒い邪悪』が挿入されるのは楽しいけど複雑な気持ちになる、ということです。


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