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若かりし頃 『ファミリーレストラン』

地元にファミリーレストランが出来た。
個人店には見られない、四角くて大きなその建物は、最先端に見えた。
姉と1. 2度くらい、そのファミリーレストランでお茶をしたことがある。
姉妹なので。

それからしばらくして、友達とご飯でも食べようということになる。
一人暮らしで、バイトを掛け持ちしながら、養成所に通っていた頃。
安価でハンバーグが食べられる店があると言う。
それは、ファミリーレストランだった。

『え、ファミリーじゃないのに行っていいの?』
『いいんじゃない?店の人にはファミリーかどうかなんて分からないよ。聞かれたら、姉妹だって言おう。』

奇跡的にと言おうか、私たちはよく似ていると言われていたため、姉妹で通せる気がした。

ファミリーレストランへ出陣した。

実際には、身分証を求められる事もなく、無事に食事を終えることが出来た。
してやったり である。😏
うまく騙せたようだ。


更にその後、外出先で1人で食事をする際に、近くにはファミリーレストランしか無いと言う状況におかれた。
1人でもファミリーレストランで食事させてもらえるのだろうか。

『いらっしゃいませ。何名さまですか』
『1人です』
『申し訳ございません。当店はファミリーレストランでございますので、ファミリーの方とご一緒でなければご利用いただくことは出来ません』
『お腹が空いているのです』
『申し訳ございません』
『お腹が、お腹が空いて、、、』
『申し訳、、、ございま、、、』

涙。

『お客さま、そんなにお腹が?』
『はい、、、。お腹が、空いております』
『かしこまりました。ワタクシがなんとかいたします。どうぞ、腰をかがめて、見つからないように後についてきてください』
『あ、ありがとうございます!ありがとう!』

というシナリオが通用するとは思わなかったが、行くだけ行ってみようと思い、店の扉を引いた。

そして店員さんは、ひとり者の私でも、無表情のまま席へ案内してくれた。
ここのファミリーレストランは懐が大きいのだ、と信じた。

その後も何度か、1人でファミリーレストランへ行ったり、友達とファミリーレストランへ行ったりしているが、一度もファミリー以外お断りです!と言われる事はなかった。

若い頃の思い出。
30年近く昔。
『ファミレス』なんて、恥ずかしくて言えなかった。
今では、ファミリーレストランという方が、なんだか、もどかしい。

こんな思い込みしてたのは。私だけでしょうか。どうでしょうか。