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連続怪獣小説『大怪獣アイラ』#7
case1:
その日の津島家.
居間で昼寝していたらスマホが光って、通話にしながらテレビを点けたら、鳴門海峡大橋が崩落していた。
渦潮から跳ね出した無数の巨大ダンゴムシが四散、橋桁をまず破壊して、衝撃で落ちてきた車両をもことごとく狙い撃つように体当たり。
放送室占拠事件から謹慎していたはずの加藤シホさんは、そのヘリからの中継映像の真ん中に映っていた。
海面を泳ぐダンゴムシの背中の、蛇腹状の隙間に胴体を挟まれながらスマホを持っている。いつものジャージ姿だ。何か叫んでいる。
「見えてる? あゆみ!」
「え? いや、まぁ見えてるけど大丈夫?」
「死ぬかもねー うわああああ」
ダンゴムシの潜水に巻き込まれて加藤シホさんは中継画面から姿を消した。これくらいでくたばるような人ではないので放っておくことにして、冷凍庫からガリガリくんを持ってきてテレビ中継を引き続き見守る。
ガリガリくんは最初のひとくちよりも、6割くらい食べて舌が冷たさにマヒしてきてからのほうが美味しい気がする。
鳴門海峡に海上自衛隊の艦隊が集結し始めた夕方、弟の修治が玄関から
「エスカルゴ用のと普通のカタツムリって何がどう違うの?」
と扉を開けつつ質問しながら帰ってきた。なんだこいつ。
テレビでは、鳴門の渦潮から弾丸のように飛び出すダンゴムシが空自のヘリに衝突して撃ち落としている。
労働組合の仕事から帰ってきた母さんが、
「今日はパパがごはん作るんだって! めずらしいねぇ」
と言いながら、居間に入ってきた。
私と修治と母さんと、なんとなく無言で、鳴門海峡大橋が、謎の生命体によって自衛隊艦隊と共に粉砕されていく中継をなんとなく眺めていた。
眺めていた。
父さんが帰るのを待てないで母さんは、不機嫌なままベッドルームに向かった。
深夜、父さんが玄関ドアを開けて「ただいまぁ」と静かに呟いているのが聴こえた。
「もぅ眠ってるよなぁ」と言いながら、居間のソファに倒れ込むような音も聴こえた。
父さんが熟睡したのを見計らって、おでこに油性ペンで
「いつもありがと」と落書きしてから、私も部屋に戻って、眠った。
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