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Vol,01:花火大会の夜に

夏の風物詩、花火大会。
デートにはもってこい!
日本の若者にとっては夏の一大イベントだ。

日本列島の南の方に位置する私の愛する地元は、
公共交通機関があまり発展しておらず、一つの家庭に2〜3台車があるのが普通…
というより、車が無いと生活が出来ない環境だ。
若い私も小さなマイカーを所有しており、
意中の相手を助手席に乗せて、花火大会に行くのが夏の恒例行事だった。

ある夏の花火大会。
当時想いを寄せていた女の子を誘い、まだ陽の明るいうちから花火大会の会場へ。
早い時間から現地入りしたのには理由がある。
それは勿論、長く女の子と一緒に居たいから!
……では無く、車社会の弊害『大渋滞』を避けるためだ。

田舎の花火大会でも、
毎年何処から湧いてくるやら1万人程度の来場がある。
しかも、来場者の大半が車。
行きも帰りも渋滞は必須だ。

なので花火大会の時は、
早めに会場入りし、路店を楽しみ、
花火のフィナーレは車内で見ながら、
夜の繁華街へ車で向かうのが私のお決まりパターン。

その方が、
花火大会の後、意中の彼女との時間を楽しめるから。
下心?勿論ありますとも。笑

その夜も、例年通り早目に会場を離れるはずだったのだが、
『最後まで花火をココで観たいんだにゃん♪』
と可愛く上目遣いでお願いされてしまい、満面の笑ででノックアウト。
ご要望通りに花火のラストを会場で見届け
駐車場へ急ぐが…時既に遅し……
案の定、帰りは大渋滞に巻き込まれてしまった。

渋滞に巻き込まれ約1時間。
助手席の女の子は、歩き疲れたせいか少しうとうとしている。

『夜はまだ長い。少し寝かせてあげよう。』
と思い、しばらく放置する事に。

え?下心?
あるに決まってるじゃない。笑

可愛い?彼女を放置し、ふと外に目をやると、
暗くてイマイチ見えないが、
助手席側の前方10M位?の歩道に人影が見えた。
普段なら、気にも留めない日常の風景の1コマ。
……しかし何だろう。この違和感は。
渋滞が牛歩の様に少しずつ進むにつれ、
その人影との距離も徐々に近づいて来る。

それに比例し、人影の情報が少しずつ解像度を増し、目に入ってくる。

『ワンピースを着てるなぁ。女性かな?』
『髪長い。そしてシルエット細い』
徐々に露わになる人影の詳細。
『ん?長い髪で顔隠れてる。貞子かよ。笑』
とか呟いた後、違和感の正体に気付く。

『…あ。この人歩いてないんだ。』

ただそこに、対向車に向き合う様に立っている。
心なしか、車を睨んでいる様にも見えなくもない。
少し気味が悪くなったが、何故だか目が離せない。

徐々に車が流れ、女性と私の乗る車との距離がだいたい車一台分位になった。
顔が認識出来る程度の距離。
失礼だと思いながらも、やはり違和感が拭えず女性を凝視する私。
意中の彼女は助手席で夢の中。笑
そんな時、事件は突然起きた。

髪から僅かにのぞく目と、私の視線が合った。
……と思った瞬間、突然女性の顔が、私の前から姿を消した。
いや、正確に言うと『布で隠れた』のだ。

突然の状況に訳が判らず、
視線を下に落とす私。

するとそこには……

!?

………女性の裸体があるではありませんか………笑

長いワンピースを高らかに捲り上げ、
自分の産まれたままの姿をフルに開放しておられる。

『いや、露出狂かよ!!笑』

車内で思わず大きめの声でツッコミを入れる私。

しかし、助手席の可愛子ちゃんはイビキをかいて爆睡中。笑
どんだけ疲れてんのよコイツ。笑

この珍事を誰ともリアルタイムで共有出来ず、
何とも言えない感情が頭をぐるぐる。
すると、程なくして車が進み出す。
生まれたままの姿の女性を横目に、車を進める私。
女性との距離がそこそこ開き、また停車。
そのタイミングで、助手席の爆睡ガールを揺り起こす。

『露出狂の女が居た!スゲェの見ちゃった!』

爆睡中に突然起こして、突然ハイテンションで意味不明な事を言ってくる私に困惑する寝起きガール。

『いやいや、見間違いでしょ?』

と若干不機嫌に後ろの車の方へ振り返る彼女が突然『ブフっ』と吹き出した。

『君の言う事、信じるわ。笑』

え?疑ってたじゃん?
車が進む気配がなかったので、振り向き、彼女の視線を追う。

いやいや……後ろの車の2人組、体ごと後ろ向いとる…?笑
え?運転手も助手席のヤツもシートに膝ついてる?
漫画とかでよく見る、上からヒョコっと覗く様な体制じゃないの。
おふたりさん。渋滞ハマってるけど、ココ公道のど真ん中よ。

痴女とバカのダブルパンチに、ついに私の腹筋は崩壊。

大爆笑しながら、楽しく渋滞を乗り切りましたとさ。

めでたしめでたし。

え?助手席の彼女とはその夜どうなったかって?

痴女を見た後だったせいか、めっちゃくちゃ熱い夜になりましたよ。笑

《余談》
この出来事を、当時の職場の先輩に話したのだが、
『ネタだろ!』と一蹴されました。
しかし、一年後……
花火大会の翌日。
朝から全力疾走で私に駆け寄る先輩。
『ヤベぇ!俺も見た!!』
キョトンとしている私に
『痴女だよ!』とかなりの声量で朝っぱらから卑猥なワードを口にする先輩。笑
私とほぼ同じシチュエーションで痴女と遭遇したようです。笑

この『痴女だよ!』のおかげで、
巨漢で筋肉隆々のザ⭐︎漢!
な先輩のあだ名は、当面の間『痴女』で固定されました。笑

朝からデカい声で言うからだよ……
ドンマイ痴女先輩♡





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