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自己紹介が苦手だ

この仕事(劇作家・主宰)をしていると、書いている文章の5割が自己紹介のような気がしてくる。いわゆる助成金の申請書類や、新作公演の企画書など。ここのところは作品を書く時間よりも、自己紹介をする時間の方が長い。削られてゆく。くじけそうだ。

昔から自己紹介をするのが苦手だった(苦手すぎてこんなブログを書いていた)。

なんなら面接のたびに失敗してきた。

『信じる力を忘れない』というタイトルの記事はぜひ読んでもらいたくて、なぜならわたしはこの記事で合計1万字ちょいも使って、「あなたの作品を演劇でやる意味ってなに?」と聞かれて「私がこの作品を演劇でやる意味はありません」と答えたことによって学内のスカラシップに落ちた時の恨みつらみを書いているからだ。ウケる。落ちるに決まってんだろ。

わたしが自己紹介をできない理由は簡単で、自己肯定感がとても低いからだ。
勘違いしてもらっちゃ困るが、わたしはわたしの作品に自信を持っている。だけどそれは、わたしが作品において一定のコントロールが可能だからこそ生まれた自信だ。
かつては、対外的に一定の評価をもらえているから自信になっているのかなと考えていたけれど、違う。
わたしは自己のコントロールの不可能さを日々噛み締めている。だってわたしはわたしが怒らなきゃいけない時に怒れないし、笑いたくない時に笑おうとしてしまうし、自信を持つべきところで自信を持てない。
だからこそ、自分が自分をコントロールできた結果生まれた作品に自信を持っているのだ。

わたしはいつも、わたしのできないことばかりを見つめてしまう。わたしが毎度のごとく、「自分で自分を見つめ、自分で自分を鼓舞し、自分で自分を抱きしめてやれ」と書くのは、結局は自分自身に対してのメッセージである。できない自分へのメッセージ。

はたから見ると物語を書くのも自己紹介するのも同じだと思うのだが、そしてわたしも人にはそのような形でアドバイスするのだが、やっぱり自己紹介は苦手だ。
wikipediaにも乗ってないわたしなんて、紹介されるような人間か?と思ってしまうからだ。
と、同時に、わたしが成してきたもの全て、当然のようにわたしが受けるべきものだった、とも思うからだ。
著しく低い自己肯定感とそこから生まれる傲慢。
わたしは何にもできていない!紫綬褒章ももらえないし、TIME紙の世界を変える100人にも選ばれない!岸田國士にも呼ばれない!と、六畳一間のアパートでのたうち回りながら、自己紹介を書いている。

初めまして、葭本未織です。1993年1月17日生まれ、26歳の、劇作家です。

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