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⑧豚に真珠

両親にとってはお互い初めての子どもの結婚式だった。

まあ出来ちゃった婚だし、簡略化していいのでは?とそういう流れにもなったが、結納品をという話になった。



え。
結納って何?

そんなもの必要なんだ??私はそう思った


結納品は、結婚準備金にあててください。という本来の意味として一応あるようだ。

「男性側は女性を先方の家から『いただく』のでその印として。っていう意味があるんだよ」と義母に言われた。

「は?『いただく?』なんじゃそりゃ。私、牛とか馬じゃないんですけど」

私はその筋書きが面白くなかった。

結納品、どうしようか。と彼の家では話し合いになったようだった。


「あ。ちょうどいいのがあるじゃん」


妊娠する前の話である。

当時一緒に住んでいた時彼が小さな紙袋を片手に帰ってきた。


「か、買ってしまった」

見ると

ほぼほぼ1ctはあっただろうか。大きなダイヤのプラチナリングだった。


えっ私に?

ありがとう。

ってあれ?サイズが大きくない?

え。サイズなんでこんなに大きいねん??

は?私のじゃなくて自分の指輪だって。
21号サイズだ。


当時一緒に住んでいたマンションの近くの雑居ビルの1階にジュエリー店のココ山岡が入っていた。

ふらっと店の前を通った彼は店員のお姉さんに
「ねえねえ。お兄さんちょっと」と手招きして呼び止められた。

このプラチナダイヤの150万の指輪を購入し、5年後のローンが終わったら店側が指輪と引き換えに元値の150万の換金をしてくれるという。

巧みな話は楽しい雰囲気でトントンと進んでいった。

「ねえ。あなたって貯金苦手そう。笑。ね。そうでしょ。
5年後換金できるから貯金だと思えばいいんじゃない?」

「あ。わかりますか?そうなんですよ。俺。そうですよね!そうしまーす」

と勢いで大きなローンを組んで買ってしまったダイヤの指輪があったのだ。

支払い完了後5年後150万換金してくれる。んだって。

それよか金利で何十万も出て行くではないか。。。

この人に金利の計算はできなかったのか???

指輪を購入後、ポラロイドカメラでお姉さんが記念撮影をしてくれたようだ。

写真にはガテン系のいかつい太い指にキラリとダイヤが光っていて、
その上からマジックで「豚に真珠」と彼のサインがしてあったのだった。

その「豚に真珠リング」が「(一応)結納品」に
ということになったのだった。

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