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父とテレビと寂しい夜と

高校まで暮らした釧路を出て、札幌で一人暮らしを始めた。
二間のアパートに万年床と机と冷蔵庫。不似合いに大きなシステムコンポーネントと本棚が部屋の主役だった。

最初は楽しかった一人暮らしも、日が経てば寂しさが募ってくる。
その頃、父は釧路から仕事で札幌に来ると、僕のアパートに泊まった。
ある日、父は部屋を見回して、「テレビでも買うか」と言った。

電器屋に行くのかと思ったら、迷わず近くの質屋にすいっと入り、小さな赤いテレビを選んで部屋に運び込んだ。
リモコンもついていないそのテレビは、退屈を紛らわせてくれることもあったが、余計一人であることを実感させて、却って寂しくさせることもあった。

ある夜MTVを見ていたら、そんな気分にピッタリの曲が流れてきた。
ジョン・クーガー・メレンキャンプの『Lonely Ol' Night』
これは僕の寂しさを歌った曲だ!と直感して、この曲の入ったレコード『SCARECROW』を買った。

It's a lonely ol' night
Custom made for two lonely people like me and you
またお馴染みの寂しい夜だ
俺とおまえのような孤独な二人の特別な夜なんだ

『Lonely Ol' Night』 John Mellencamp

孤独な二人は寄り添っても寂しいのだ、と歌っているような気がした。
でもみんなが寂しいのならそれは慰めになる、と僕は思った。

そう思ったら、ふいにメロディと歌詞が一緒に降りてきて、僕はその夜のうちに『Lonely Nights』という曲を書いたんだ。


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