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126)野菜スープが寿命を延ばす

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術126

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。


【食品には生体機能を調節する働きがある】

食品には三つの機能(働き・役割)があると言われています。すなわち、①エネルギーや栄養素の供給源としての役割(一次機能)、②味・香・見た目など嗜好を楽しむ働き(二次機能)、③体の働きを調節する機能(三次機能)です。


図:食品の3つの働き(機能)

食品は「栄養源(一次機能)」と「食べる楽しみ(二次機能)」の二つが重視されてきましたが、最近の研究では、食品には免疫系や内分泌系や循環器系などの様々な生体機能に対して調節機能を持つ成分が含まれていることが明らかになっています。抗酸化作用や抗炎症作用などによってがんや心臓疾患などを予防する成分も多く見つかっています。

このように、食品は栄養面だけでなく、生理活性面でも作用することにより、病気の予防、治療、病後の回復にも寄与しています。

前回(125話)、アルカリ食が寿命を延ばし、野菜は体をアルカリ化する効果が高いことを解説しています。つまり、野菜の多い食事自体に寿命を延ばす効果が期待できます。

さらに野菜には、抗酸化作用や解毒作用を持つ成分、免疫細胞の働きを高める成分、がん細胞の増殖を抑える効果をもった成分などが含まれています。つまり、野菜の多い食事はがんや心臓病や脳卒中の予防や治療に効果があり、寿命を延ばす効果が期待できます。
 
実際に、日本を含め多くの国からの疫学研究のほとんどが、野菜の摂取量が多いほど全死因死亡率を低下させることを明らかにしています。



【野菜の食物繊維とフィトケミカルが食品の三次機能に関わっている】

食品の一次機能(エネルギーや栄養素の供給源)を支えるのは、糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルの5大栄養素です。これらの5大栄養素についで、食物繊維が第6の栄養素、ファイトケミカルが第7の栄養素と言われています。
 
食物繊維とは、ヒトの消化酵素によって消化されない食物中の難消化性成分の総称です。多くは植物の細胞壁を構成する成分で、化学的には多糖類(糖が多数つながったもの)です。消化吸収されないため栄養的に不要なものと考えられていましたが、最近は多くの生理作用が明らかになり、栄養素の一つとして認識されています。
 
食物繊維は水溶性と不溶性に大別されます。水溶性食物繊維はコレステロールの吸収を抑制したり、食後の血糖値の急激な上昇を防ぐ効果があります。不溶性食物繊維は、便のかさを増やし、大腸の運動を促進する作用があります。


食物繊維は野菜や穀物など植物性食品に多く含まれ、動物性食品(肉や乳製品や卵)や魚介類にはほとんど含まれていません。穀物も精白すると食物繊維がほとんど失われてしまいます。したがって、肉と精白した穀物を主体とする食事では食物繊維の摂取量が少なくなります。近年食生活の欧米化に伴い食物繊維の摂取量は減少傾向にあります。


フィトケミカルは植物に含まれる化学成分です。「ファイト」は植物、「ケミカル」は化学成分という意味です。ファイトケミカルは体の機能に必須では無いのですが、健康に良い影響を与える植物由来の成分です。ポリフェノール類(フラボノイド、カテキンなど)、カロテノイド(βカロテン、ルテインなど)、イソチオシアネート類(スルフォラファンなど)など数多くの成分が知られています。

野菜が体の働きを調節できるのは、糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルという五大栄養素を供給するのに加えて、健康維持に役立つ食物繊維とフィトケミカルを供給するからです。


図:野菜には、抗酸化・抗炎症・免疫増強・解毒・血液循環改善・発がん抑制などの作用を持った成分が豊富に含まれる。これらの成分を日頃から多く摂取すると、病気の予防と寿命延長に効果がある。



【ファイト・ケミカルを効果的に摂取できる野菜スープ】

日頃の食生活において、新鮮な旬の野菜を多く食べることが大切であり、1日5皿とか1日350gとか具体的な目標が述べられています。ただし、生野菜では野菜中の成分の消化管からの吸収(生体利用性)が低いことに注意が必要です。
 
植物の細胞は硬い細胞壁で囲まれています。植物の細胞壁はいくつかの繊維成分からなっており、その主要成分であるセルロースを消化する酵素「セルラーゼ」を人間は持っていません。

草食性の動物は、消化管の中にセルロースを分解する微生物を棲まわせていて、胃や盲腸で発酵を行っているため、生の植物を摂取しても、その細胞の中から有効成分を体内に取り入れることができます。
 
ヒトは硬い繊維質を十分に発酵させるほどには大腸は長くはなく、セルラーゼを産生する腸内微生物を棲まわせていないため、植物を生のまま食べたのでは、細胞内の成分はそう容易には溶け出しません。良く噛む程度では硬い細胞壁を壊して内容成分を溶け出すことは十分にはできないからです。

つまり、野菜に含まれる様々な薬効成分(ファイトトケミカル)の多くは、生の野菜を食べた場合にはあまり体内に吸収されないということになります。
 
野菜を水に入れて加熱すると、野菜の細胞壁を構成しているヘミセルロースやペクチンが溶け出し、さらに、細胞内のガスの膨張による細胞壁の破壊などの作用も組み合わさって細胞壁の破壊が起こります。熱によって植物の細胞壁が壊され有効成分が抽出されて、生体に利用可能な状態になるのです。
 
また複数の研究で、トマトは加熱した方がリコピン(カロテノイドの一種)やナリンゲニン(フラボノイドの一種)やクロロゲン酸(フェノール類)などの薬効成分の体内吸収が高まることが知られています。
 
スープにすると水溶性食物繊維も溶け出し、腸内細菌が利用しやすくなります。野菜の煮汁(スープ)には、抗酸化能で言えば、生野菜と比べて数倍から100倍以上も有効成分が溶け出しているという報告もあります。
 
つまり、野菜スープにすることで、野菜の薬効成分の生体利用率を高め、健康作用を強めることになります。


図:植物の細胞は硬い細胞壁で囲まれていて、ヒトの消化酵素では細胞壁を壊すことはできない。加熱することによって細胞壁が壊れ、細胞内の成分が溶け出しやすくなる。加熱してスープにした方が生野菜で食べるより、植物中の薬効成分の体内吸収の効率が格段に高くなる。

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