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インクの精


趣味で小説を書くようになってもう2年になる。ペリカンの万年筆にゆっくりと濃紺のインクを吸わせる。眠る前のひととき、取り止めもない話をペンに任せて書いていく。そんな時間が好きだった。

しかし2年も書くことを続けていると頭に浮かぶような話は書き尽くしてしまった。初めて書くような話でもまるで以前に書いたことのあるような感覚。毎回主人公は違うはずなのに性格が全く同じに思えてくる。いろいろな小説を読み、考えたこともなかった性格描写を参考にしても結局似たり寄ったりのものになってしまうジレンマ。それでもごまかしごまかし書いている。

「たまには気分を変えてみよう」
そう思った自分は文房具屋で緑色のインクを手に入れた。遠目には黒なのに光をあてるとふんわりと緑が浮かび上がってくる。そんなインクだった。

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1,012字
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