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コロナと賃料支払猶予の関係(5/4時点)@弁護士

新型コロナウィルスにより、売上げが激減している中小企業や飲食店などは賃借するオフィスビルやテナントの賃料の支払いが困難となっている。賃借人としては、オーナーに対し、賃料支払猶予を求めるケースが見受けられるが、法的には、新型コロナウィルスの影響により売上げ激減が、不可抗力による事由と解釈できたとしても、賃借人は、賃料支払債務(金銭債務)の不履行について、不可抗力をもって抗弁することはできないと民法419条3項で規定している。

(金銭債務の特則)

第419条
1 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

したがって、賃借人が賃料の支払いを遅滞させた場合には、賃借人の債務不履行となるとする解釈を争うことは厳しい。もっとも、賃借人が、このままオーナーに対して交渉する余地がないのかというとそうではない。

すなわち、オーナーにとって、賃借人が出て行った後に、①再度賃借人を探すコスト、②賃借人が見つかるまでの賃料収入が途絶えるリスク、③最悪賃借人が夜逃げした場合に、法的には、裁判所に明渡し訴訟の提起を行い、正式に明渡しに関する債務名義を得た後に、中の動産類を処分しないといけないリスク(これには、最短でも3ヶ月程度要するであろう。)等もふまえると、賃借人に対し、賃料を満額請求することが合理的なのかは、別途考える余地が出てくるからである。

したがって、オーナーとしては、上記リスクもふまえながら、賃借人に対し、賃料支払を猶予するのか、それとも、賃貸借契約書どおりの賃料を満額請求していくかは判断に迫られるだろう。

一方、賃借人としては、例えば、賃料の半額について支払を猶予してもらい、売上げが戻った暁に、未払い分を返済するといった合意書や覚書を締結すれば、オーナーにとってもメリットが出てくる余地があるだろう。



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