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富士見

 すたたたた、すたたたた。ランニング。マイナスイオンとのたわむれ。本質、ダイエット。日に四食。朝昼夜の食事アンド夜中にうどん。これを三ヶ月。で、10キロの増量。これはいけねえ。ほんで今朝からダイエット。すたたたた。空気がおいしー!って、顔もほころぶわーって笑顔。あっ、おはようございまーすって挨拶した瞬間、一気に曇ったマイハート!貴様は富士見先生では?中学の頃に僕をさんざん殴ったあの先公殿ではないか。富士見は僕をチラ見して、どたどたどた、どたどたどた。小走り。まてまて。あなた様のせーで、マイハートは損傷したのだよ。マイハートを癒すために、食ったのだようどん。うどん代を返せ。すたたたた、すたたたた。「あのう、富士見先生ですよね」「お、おう銀足か。久しぶりだな」ちっ、えっらそーに。僕は道に落ちていた棍棒を握って、富士見先生を殺る。やる?やられるのは私!?ままま、まさかの僕なのか?富士見先生は、スタンガンを振り回した。スタンガンを振り回す巨体、月ノ輪熊、戦慄、御愁傷様、僕。ビビビビビ、電流が走って絶。三途の川の向こうにばあちゃん。ばあちゃん会いたかった。川の向こうで、ばあちゃんは、まだ来ちゃ駄目と言って手を払う。富士見!僕は絶対にリベンジする。すべての暴力をこの世から無くすのだ。でもどうやって?
 目が覚めると、漫画本や、コンビニ弁当、ティッシュなどで散らかった六畳間。パソコンデスクに座っているのは富士見先公殿。
「起きたか?」
「ええ、にしてもスタンガンですか?やりますね」
「お前だって、棍棒握ってたろ?」
「まあ」
「やるか?」
「やりますか?」
 僕は拳を握ってかまえた。富士見は、スタンガンに電源を入れた。緊張が走った。

「メリークリスマース!!」
 大声でドアを開けたのはまぎれもなくサンタクロースのおじさん。
「メリー…」と富士見。略してんじゃねえよ。
「メリークリスマス」僕ははにかんだ。
「君たちにプレゼントがある」サンタさんは、白い大きな袋に手を入れた。ガサガサ。出てきたのは、鍋焼うどん。アルミの皿で火をかけるだけの鍋焼うどん。サンタさんは、それをガスコンロのうえに置き火をかけた。ぐつぐつと煮える鍋焼うどん。僕のお腹がぎゅーうっと鳴った。
「出来上がりだよ」
 サンタさんは僕と富士見に箸を渡した。

 サンタさんのソリに僕は乗っていて、サンタさんは優しい笑みを浮かべて「で、どう?許せる?」と聞いた。「いやあ、わからないですね正直」と答えた。「だよねー」と、笑った。雪が町を覆って、僕の家の灯りが見えたとき涙が溢れた。トナカイは速度をゆるめ、僕の家の前で止まった。
「サンタさん、色々とありがとう。鍋焼うどんおいしかった。富士見、むかつくけど、ゆるせるように頑張ります」「そうかい」サンタさんはソリに乗って夜空へ消えた。すたたたた、すたたたた。僕は玄関まで走った。 

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