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note詩を読んで~僕が出会ったきらめく詩作品

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noteには膨大な数の詩作品があります。その中で僕が出会ったきらめく作品を紹介させていただきます。大変僭越ですが、少し応援するつもりで。もっとたくさんの人の読まれるといいなあとい…
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#口語自由詩

わたしは、1人いたらいい。

わたしは ひとり いたらいい。 わたしは この世に1人だけ だから 愛する男は 1人いたらいい たくさんの男に ちやほやされて 楽しいのは その一瞬 わたしは わたしを大切にしてくれる たった1人が いたらいい わたしは この世にたったひとり ほかのだれとも 重ならない 生まれてくる時も しにゆく時も たったひとりのわたしを わたしが愛するように わたしを愛してくれる人が いたらいい わたしは、1人、いたらいい。

コーヒー問答

コーヒーカップの破片にコーヒーを注ぐことに含まれる ひとひらの真実を 掬い上げようとしてお前は ピリオドを打って そのたびに書き始めるのか (そのコーヒーを汲み尽くせ) もっと人間らしくするものを 尋ねあぐねてお前は カフェインの致死量を 腐敗しやすい指で探り出そうとするのか (致死性の絶望に飢える) 世界を振り払うことができずに 使い古された夜へと また沈んでいく 冷たい床に薄く広がるコーヒー液のせいで お前はなかなか寝つけない 遠く換気扇のモーター音をかき分けて 溢

土星の子

雨上がりの街路を行く子、 土星の子。 薄曇りの空から 眠りから覚めたばかりといったようすで 優柔不断な薄日が 黒く濡れたアスファルトをきらめかせる、憂い。 人知れず潤むひとみの上を 滑っていく土星の子、 落下した青栗は道の真ん中で寄る辺を失い 人絶えた通りに土星の子はひとり。 開けた林檎畑の向こう、光る街並み。 街の上空をきしって鳩が群れ飛ぶ 巣食うもの 土星の子は鳩の下では歌えない 街の方より飛び来る鴉、 鳩に追い立てられて 山の手へと落ち延びた鴉。 ブラック・オパ