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当座預金取引新規停止と企業間金融への影響

 2026 年までに手形・小切手廃止の全面施行が目指され、当座預金口座の新規開設、また当座預金口座開設者への手形・小切手発行を廃止する金融機関が増えている。しかし、手形・小切手取引が通常取引として手放せない中小・零細企業も少なくない。
 本稿では、当座預金廃止への流れ、資金繰りや金融取引に及ぼす影響、完全実現は果たして可能かといった点も解説した。

1 当座預金小切手廃止に向けた政府等の動き

 手形・小切手機能の電子化については2017年6月閣議決定された政府の『未来投資戦略2017』で金融機関・企業相互間の事務負担の削減とIT活用による金融機関サービスとの連携可能化の観点からオールジャパンでの電子手形・小切手への移行が提言された。
 この流れを受け、全銀協が2021年4月に「手形・小切手機能の『全面的な電子化』に関する検討会」を設置した。2021年6月には政府が「成長戦略実行計画」を閣議で決定、「5年後の約束手形・小切手の利用廃止に向けたフォローアップを行うこと」が明記された。そして、その流れの中で、2022年7月には電子交換所が稼働し、同年11月には従来の手形交換所が廃止された。
 そして、さらに2023年11月に全銀協において「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画」が改訂。2026年度末に電子交換所における手形・小切手の交付枚数をゼロにするという最終目標が打ち出された。ここまでの全体像と、金融業界における取組みを図表1、図表2に示した。

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