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「倒産予備軍」の兆候と求められる支援対応

 ゼロゼロ融資後の返済、2024年問題、物価高・人件費の高騰、後継者難、さらには金利上昇等の課題に耐えられず、倒産に至る案件は後を絶たず、「予備軍」は少なくないであろう。金融機関としては取引先の決断前に経営改善、事業再生に取り組みたい。本稿では、特に中小企業を巡る課題、倒産決断の兆候、求められる廃業支援等対応について解説した。 
(株式会社帝国データバンク 情報統括部 情報編集課長 内藤 修)

1 中小・零細企業を中心に倒産が増加

 新型コロナ関連の支援策の縮小・終了を受け、コロナ前から経営が厳しかった企業の淘汰が進んでいる。帝国データバンクによれば、2023年度の企業倒産件数(全国・全業種)は8881件発生、前年度から2082件増えた。増加率は30.6%と過去30年で最も高く、2014年度(9044件)に迫る9年ぶりの高水準となった。
 とはいえ、倒産件数の水準自体は、リーマン・ショック時の2008年(1万3234件)ほどの“危機的状況”にはない。当時は上場企業や業界大手企業の倒産が相次ぎ、完全失業率や有効求人倍率といった雇用関連の指標が軒並み悪化していた。負債総額も13兆円台まで膨らんでいたのに対し、2023年度は5分の1以下の2兆4344億円に留まり、大型倒産は鳴りを潜めたままだ。「9年ぶり高水準」「過去30年で最も高い増加率」といった見出しは踊るものの、国内景気はインバウンドや半導体特需などで緩やかな回復基調にあり、今すぐ経済危機に陥る状況にはない。
 現在の企業倒産の中心は「負債1億円に満たない中小・零細企業」で、2023年度は全倒産の74.0%を占めた。小規模業者の倒産傾向を集計・分析すると、地域中小企業を巡る課題が顕在化する。この1年で倒産が増えた業種は、「小売」(42.5%増)、「建設」(35.5%増)、「サービス」(28.7%増)の順。業種別では、ドライバー不足や燃料高に直面する「道路貨物運送」や「タクシー業」、過去最多の倒産件数となった「飲食店」などの増加が目立った。
 倒産だけでなく、廃業の動きも広がっている。2023年の休廃業・解散(全国・全業種)は5万9105件、比較可能な2016年以降で最も少なかった前年(5万3426件)から10.6%増えた。今後は「優勝劣敗」や「新陳代謝」の流れが進み、倒産、廃業ともにさらに増加する可能性があり、中小・零細企業の破綻リスクが一段と高まっていきそうだ。

2 ゼロゼロ融資後の窮境、粉飾決算等が主な理由に

 では、今どんな倒産が増えているのか。2023年度は全業種・全地域で増加、「最多」が6つ発生した。

⑴物価高倒産

 原材料高騰の影響による物価高倒産は、2021年度(136件)→2022年度(463件)→2023年度(837件)と増加ペースを強め、2023年度は過去最多を更新した。なかでも建設、製造、運輸、小売で急増した。

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