誰がためのパンツ
自宅トイレでふと、「わたし今日、なんでこんな可愛いパンツ履いてるんだろう。在宅勤務なのに。」と自問した。
人に会わずに寝間着でガリガリ仕事する日はユニクロの真っ黒いシームレスショーツでいいのに。昨夜パンツ履くときに、予定を考慮し忘れた。眠かったしな。
写真:Meet the 13 New Victoria’s Secret Angels of 2017
わたしは男のために下着や服を選ぶことに抵抗がない。
理由は簡単で、おしゃれじゃないから。30年かけて悟った、わたし全然おしゃれじゃない。センスがない。そうなのよ。別におしゃれでもないのに、わざわざファッションで自己主張しようとして、男が理解できないおしゃれするって無駄じゃない?ということで、30歳になったときに、「わたしのキャラ主張的にはこれが着たい」はほとんど捨てた。
そもそも29歳の頃のわたしの格好ときたら。「わたし、音楽好きです」って毎分主張していたくて、普段からWILCOとかマイブラとかフジロックのTシャツで出社していた。首から”Fuck”ってロゴネックレスかけて、”PISSED!”とか”NERD"とか”HOLLYWOOD”って書いたニット着て、ナックルみたいな指輪をはめていた。(逆にどこで売ってんねん)
それがいまやどうだ。ほぼCLASSY.だ。俺の格好は。
30歳を境に、「会社ではそれなりにモテそうな格好をしておく」ことに決めたのだ。自分の大したことないおしゃれセンスは捨てた。そんな主張はかなぐり捨てて、マスの男に迎合する安易さを選んだ。
そうすることで何が良かったかというと、酒の場に呼ばれるたびに「彼氏できたか」と聞かれなくて済むようになった。最高の変化だ。そしてちょっとモテた。猶良し。
マスの男が黙る服装のコスパの良さ
キャラ的に女扱いされることが稀なので、酒席では常に下ネタの暴風雨にさらされてきたし(雨合羽かぶって喜んで参戦もしてきたし)、当然しばしば「おう生姜、おまえ最後にヤったのいつだ」とか、聞かれた。まあそこまで酷くなくても、男の先輩や上司は、乾杯の挨拶みたいに「生姜、彼氏できた?」って聞くものだった。当然だが、口説くつもりの質問ではない。ただの下世話、ただのお節介、ただの「共通の話題ねえからこいつでひとネタ作っとくか」。
その場はへらへらしていれば済むものの、帰宅後どっと疲れる日々だった。
が、格好をCLASSY.にしてからその下世話な詮索が圧倒的に減った。わたしの顔に、「よろしくやってるんで、放っておいてください」って書いてあるんじゃないかと思ったくらいだ。否。きっと服が代弁してくれてるんだ。なんて楽なんだ!!!
だいたい、三十路越えた女がさ。聞かれたからっていちいち自分の恋愛事情、他人に話すかよ。聞かれて話すケースはな、だいたい社内恋愛か社内不倫で、彼氏が秘密にしたがってて、でも女のほうはオープンにしたくて、先輩に「彼氏いるの?」って聞かれたのをいいことに、「いると言えばいるんですけど」とか、ツッコミ待ちの回答をしてくるケースだよ。そういうのは若い世代の合コンでやってくれ。我々、もういい加減、大人の男女だ。
大人の女の服装は、大人の関係の線引きになる。そのことを体感した。
んん???
っていうかこの話、ただ単にわたしが、センスない奇抜な格好で20代を過ごしたっていう黒歴史話だったのでは。
あかん。もう全然違う話なってもた。全然パンツの話してないし。心折れたしここでおしまい。
Fin.
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