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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 101:7インチ盤で聴くレッド・ツェッペリン特集

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第101回(2023年9月1日(金)20時~
(再放送:9月3日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

今週は7インチ盤で聴くレッド・ツェッペリン特集です。この番組では、7インチ盤で聴くジャズとか、7インチ盤で聴くブルーノートとか、LPで聴くことが当たり前と思われがちなジャンルの音源を、7インチ盤で聴くことで新な発見や意外な面白さみたいなものがあることを発信してきました。7インチ盤専門店でもあるジンジャー・ドット・トーキョーのオーナーが、7インチ盤なりの面白さをシェアしようというシリーズの一環と捉えていただければと思います。

例えばレッド・ツェッペリンのように、名盤と言われるアルバムが何枚もあるようなアーティストの場合、7インチ盤は忘れられてしまいがちです。しかもレッド・ツェッペリンに関しては、どの時期も面白い音源があるのに、ブルース・ロックの新たな可能性を切り開いてきた初期の音源ばかりがもてはやされるようになってきておりまして、それはいかがなものかという思いが積もり重なっております。後期のツェッペリンも聴かないと勿体ないと思います。そこで今日は後期ツェッペリンを中心に7インチ盤で聴いて行こうという特集になります。

1曲目
「The Crunge」Led Zeppelin (1973.09.)

まず、5枚目のアルバム「聖なる館 ハウス・オブ・ザ・ホリー」の音源からですが、一年ほど前、9月に亡くなったアーティストの特集の中、ジョン・ボーナムもそうということで「ディジャ・メイクハー」をかけております。実はあれが7インチ盤で聴くレッド・ツェッペリンの中でイチバン面白い音源だと思っております。LPと違って随分迫力が増した鳴りです。今回はかけられませんから、そのB面に収録された「ザ・クランジ」をお届けしました。

この曲はツェッペリン流ファンクと言われます。ウィキペディアにも「ジェームス・ブラウン・スタイルのファンク」と書いてあるんですけど、かなりよじれたファンクですよね。A面の「ディジャ・メイクハー」もツェッペリン流レゲエなんですが、あれで踊れるかというと疑問ですけどね。かなりの個性です。まあ、ジョン・ボーナムのドラムスのテクニックとかジミー・ペイジのカッティングといった、普段目が向かない部分を聴くには面白いかと思います。ジミー・ペイジは珍しくストラトキャスターを弾いていますが、実のところ、スタジオ内でジャムってみたのをそのまま録音したということで、結構生々しい音質も納得がいきます。

2曲目
「Over The Hills And Far Away」Led Zeppelin (1973.05.)
3曲目
「Dancing Days」Led Zeppelin (1973.03.)

「聖なる館」からのファースト・シングルは「オーヴァー・ザ・ヒルズ・アンド・ファー・アウェイ」と「ダンシング・デイズ」です。2曲まとめてご紹介しましたが、ハードロックの代表的なバンドと言われるわりには、ディープ・パープルやブラック・サバスなどが持つヘヴィネスはないわけで、かなり個性的です。70年の北米ツアーのあと、ウェールズのブロン・イ・アーと呼ばれる小さな小屋にジミー・ペイジとロバート・プラントがこもって曲をいっぱい作ったわけですが、その成果は3枚目あたりのアコースティック・チューンとして世に出ております。「オーヴァー・ザ・ヒルズ~」もその残りです。12弦ギター等も使ってかなり上手くアレンジされていますが、英国のトラッド・フォークの色が濃い曲が多い中ではポップなものかと思われます。ヘヴィなリフがあるハードロック・チューンではないのに、妙にヘヴィなんです。シングルなので比較的ポップな曲をもってきているとは思います。それでも妙にヘヴィですね。

「ダンシング・デイズ」はインドの旋律を取り入れたというんですけど、これもビートルズやらのインド音楽から比べるとかなりよじれていますね。ライヴでは結構ヘヴィに演奏するので、73年のツアーでは人気曲だったと思います。

4曲目
「Trampled Underfoot」Led Zeppelin (1975.04.)
5曲目
「Black Country Woman」Led Zeppelin (1975.04.)

6枚目「フィジカル・グラフィティ」は2枚組の大作です。これはどのサイドが好きか、好みが割れるところですが、意外や意外、ここではストレートにヘヴィな「トランプルド・アンダー・フット」をシングル・カットしてきました。ロバート・プラントに言わせるとレッド・ツェッペリン流の「テラプレイン・ブルース」なんだそうです。ロバート・ジョンソンのクラシック・ブルース・チューンですね。歌詞も部分的に頂戴しております。この表現が非常に面白いとは思います。ヴォーカルはトーキング・ブルース・スタイルですが、ブルースではなくて、これもツェッペリン流ファンクではないでしょうか。このアルバムには「カシミール」という、やはり恐ろしくヘヴィな人気曲もありますが、独特のエスニックなテイストがいかにも彼ららしいわけで、完成された個性です。フレーズをまねることはできても、このテイストは出ません。

「トランプルド・アンダー・フット」のB面は「ブラック・カントリー・ウーマン」です。これはアコギのロックンロール曲ですが、如何せんシンプル過ぎるくらいにシンプルなドラムスでヘヴィネスを演出して見せます。これだけヴァラエティに富んだアルバムでこの2曲をカップリングしてシングル・カットするセンスが恐れ入ります。「ザ・ローバー」とか「カスタード・パイ」とか、もう少しシングル向きと思える曲もありますが、シングルで売ろうとはしていないのでしょうか。

6曲目
「Candy Store Rock」Led Zeppelin (1976.06.)
7曲目
「Royal Orleans」Led Zeppelin (1976.06.)

7枚目、1976年6月リリースの「プレゼンス」です。ヒプノシスの訳が分からないジャケットです。「プレゼンス」からの唯一のシングルですが、チャート入りはかないません。「トランプルド・アンダー・フット」はビルボードで38位までランクインしますし、「ディジャ・メイクハー」はビルボードで20位まで行っているんです。ビックリです。「プレゼンス」はドイツのミュージックランド・スタジオで録音されています。ロバート・プラントは交通事故で車いす状態のまま歌っているはずです。そんな姿を想像しながら聴くのも一興です。「プレゼンス」には、「アキレス・ラスト・スタンド」とか「フォー・ユア・ライフ」とか「ノーバディズ・フォルト・バット・マイン」といった、ヘヴィなリフを持った人気曲もありますが、どれも長いのでシングル向きではありません。

8曲目
「Hot Dog」Led Zeppelin (1979.12.)

1979年の8枚目「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」からもシングルは1枚だけです。「フール・イン・ザレイン」ですが、これもジョン・ボーナムの時にかけてしまってますから、今回はB面「ホット・ドッグ」を聴きました。このアルバムは、ジミー・ペイジもギター・シンセを弾いていたりしますし、ジョン・ポール・ジョーンズの色が濃くなっているかと思います。ジミー・ペイジもジョン・ポール・ジョーンズも、元はスタジオ・ミュージシャンですから、器用にいろいろできます。この盤に関しては、ジョン・ボーナムに「フール・イン・ザ・レイン」でサンバ的なドラムスをやらせる必要があったのかとか、少々疑問に思うところもないわけではないのですが、加えて「ホット・ドッグ」のギターが、上手いのか下手なのかというフレーズなんです。ブルース・ロックをやっていた頃とは全然違う世界になっております。このシングルもビルボードでは21位まで行っておりますが、そんなに売れましたかね。


9曲目
「Thank You」Led Zeppelin (1969.11.)

今回は後期を中心にお送りしておりますが、シングルは少ないですから、ここでネタは尽きます。前期に戻りますが、1969年のファースト・アルバムからは、衝撃のデビュー・シングル「グッド・タイムス、バッド・タイムス」です。B面は「コミュニケーション・ブレイクダウン」、それから中古盤市場的にはプロモーション・オンリーのセカンド・シングル「ベイブ・アイム・ゴンナ・リーヴ・ユー」がありまして、幻盤です。B面は「デイズド・アンド・コンフューズド」らしいです。同じく、69年の年末にはセカンド・アルバムがリリースされまして、ここからは最大ヒット「胸いっぱいの愛を ホール・ロッタ・ラヴ」がビルボードの4位までいきます。B面は「リヴィング・ラヴィング・メイド」です。

70年のサード・アルバムからは「移民の歌」、B面は「ヘイ・ヘイ・ホワット・キャン・アイ・ドゥ」これも16位までいきます。71年の4枚目からは「ブラック・ドッグ」、B面「ミスティ・マウンテン・ホップ」、セカンド・シングルが「ロックン・ロール」、B面は「フォー・スティックス」です。このアルバムからは「天国への階段」のプロモーション盤が存在するらしいのですが、正式にはシングル・カットされておりません。それでもイギリスを含め、いくつかの国では「天国への階段」がチャートインします。面白いです。

さて、「胸いっぱいの愛を」ですが、日本ではステレオ盤がアトランティックですからワーナーからリリースされます。一方でモノラル盤が存在しまして、日本フォノグラムからB面に「サンキュー」を入れてリリースされます。これがかなり迫力のある音でして、ステレオ盤と違いがはっきり分かる鳴りです。ここでは、公式には7インチ盤は存在しないことになっている「サンキュー」を聴きました。

10曲目
「Misty Mountain Hop」Led Zeppelin (1972.02.)

合わせて4枚目のアルバムからは、「ブラック・ドッグ」のB面曲「ミスティ・マウンテン・ホップ」も聴きました。なかなかメリハリのきいたいい鳴りの盤です。


11曲目
「Rock And Roll – Sunset Sound Mix」Led Zeppelin (1972.02.⇒2018.)
12曲目
「Friends – Olympic Studio Mix」Led Zeppelin (1970.10.⇒2018.)

2018年のレコード・ストア・デイの記念リリースで、珍しくツェッペリンが出ました。黄色いディスクのかなり高音質盤です。オリジナル・リリースは4枚目のアルバム、シングル曲「ロックン・ロール」のサンセット・サウンド・ミックスをききました。また、ラストはそのB面、3枚目のアルバム収録曲「フレンズ」のオリンピック・スタジオ・ミックスを聴きました。ヴォーカルが別物で驚きのテイクです。

次回はチャレンジャー特集です。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp

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