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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 094:南部逍遥ブルース・ロック特集

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第94回(2023年7月14日(金)20時~
(再放送:7月16日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

今週は南部を逍遥しつつのブルース・ロック特集です。この番組では番組開始直後、2021年10月にサザン・ロックを2回にわけて特集しました。レーナ―ド・スキナードのメンバーの命日やデュアン・オールマンの命日にちなんでということでした。その2回目は21世紀になってからの最近のサザン・ロックの動向ということで、ブルース・ロックに根差したジャム・バンド的なライヴ中心の活動をしている連中をご紹介しました。実際のところ、普段ウチのお店でよくかけている辺りです。あまりに普段よく聴いているもので、もう番組でもかけただろうと思い込んでおりましたが、データベースをチェックしたところ、意外にも好きな曲が漏れ漏れでして、今回は米国南部の各州を逍遥するかたちでブルース・ロックを特集してみたいと思います。

1曲目
「Close To Me」Johnny Winter (1988)

高山がもうジャズも聴き始め、ロックはもういいかなと思い始めた頃に、「いやいや、まだいいのがありますぜ」となってしまい、結局今に至るまでブルース・ロックを聴き続けることになる盤があります。今回はここからスタートしました。テキサス州出身の名ブルース・ギタリスト、ジョニー・ウィンターの1988年「ウィンター・オブ’88」というアルバムがありまして、これの冒頭の曲です。この盤、テリー・マニングという人物がプロデュースしておりまして、バリバリのブルース・バンドだったZZ TOPをテクノにトランスフォームしてしまった80s ZZ TOPのプロデューサーなんです。ブルース好きからは、評判の悪い人でして、ジョニー・ウィンター自身もこのアルバムを「ポップ過ぎた」とあまり高く評価しておりませんでした。しかし「ポップで何が悪い?」という感覚がある高山はこの辺が大好きです。十人十色、蓼食う虫も好き好き。おかげ様で、高山は相変わらずブルース・ロック的なものを聴く機会が多いわけです。

テキサス州ですとオースチン出身の女性ギタリストでジャッキー・ヴェンソンという人がおりまして、ヴォーカルも凄いよくて、現在大注目の一人です。アナログ・レコードはあまりプレスしてないようで、手に入りませんから今日はかけませんが、YouTubeでも聴けますから、ぜひチェックしてみてください。

2曲目
「What You Gonna Do?」North Mississippi Allstars f/ Mavis Staples (2019)
3曲目
「Up And Rolling」North Mississippi Allstars (2019)

相変わらず新しいアーティストもチェックしている高山が、ここ10数年は一人のギタリストを中心に聴いております。ノース・ミシシッピー・オールスターズのルーサー・ディッキンソンです。この人の音源をずっと追いかけております。彼のお父さんがジム・ディッキンソンでして、ここのところ、ライ・クーダーの特集などで何度も登場したキーボーダーです。素晴らしい遺伝子を残してくれたか、お父さん以上に高く評価しております。ノース・ミシシッピーと言いつつ、生まれはテネシー州メンフィスです。コロナの最中、やたらと聴いていた盤をここでご紹介しておきます。ノース・ミシシッピー・オールスターズがメイヴィス・ステイプルズをフィーチャーした音源ですが、2019年のアルバム「アップ・アンド・ローリング」に収録されています。世代も肌の色もお構いなしのこの連中、ホント最高です。加えて、担当楽器もとっかえひっかえジャムをやっている姿にはもう驚くしかありません。「打楽器とギターくらいは誰でもできるだろう」といった感覚です。ここでは、アルバムのタイトル・チューンもあわせて聴きました。ファイフというピッコロみたいな笛の音が聞こえます。マーチングバンドでよく使われるものですが、南部のジャムバンドの演奏にもよく登場します。

4曲目
「Don’t Let Go」Colin Linden & Luther Dickinson (2019)
5曲目
「Honest I Do」Colin Linden & Luther Dickinson (2019)

ルーサー・ディッキンソン関連でもう一枚、最近ハマっている盤がありまして、コリン・リンデンというカナダ人のブルースマンとルーサー・ディッキンソンが一緒にやっている2019年の「アムール」というアルバムです。アーリー・アメリカン・テイストのブギー・スタイルの楽曲やブルージーな演奏が満載です。音質的にもその辺を意識している古臭い音です。やたらと気になるピアノの音が全面的に鳴っておりますが、現代のブギウギ・ピアノの第一人者のように言われるケヴィン・マッケンドリーが弾いております。2曲続けてご紹介しました。

6曲目
「Mississippi」Larkin Poe (2018)

7曲目
「Might As Well Be Me」Larkin Poe (2022)

ジョージア州出身、現在はテネシー州ナッシュヴィルを活動拠点にしているラーキン・ポーです。本当なら1回特集したいところです。レベッカ・ローヴェルとミーガン・ローヴェルのローヴェル姉妹ですが、彼女たち、今は2人でラーキン・ポーと名乗っておりますが、上にもう一人お姉さんがおりまして、以前はローヴェル・シスターズとして3人でやっていた時期もあります。ジンジャーの常連さんがCDを貸してくださいまして、聴いたところ、3人組の頃はカントリーをやっておりました。バリバリにブルース一辺倒の人たちかと思っておりましたが、ちょいと意外でした。

エルヴィス・コステロのバックアップでツアーをした頃から知名度は上がってきまして、2018年の「ヴェノム・アンド・フェイス」というアルバムがかなり売れました。これが思い切りブルース寄りの音を出しております。ブルース・ロックに限定しなくても、今一番の注目株であることは間違いないでしょう。番組では2018年の「ヴェノム・アンド・フェイス」から「ミシシッピー」、2022年にリリースされた今のところ最新アルバム「ブラッド・ハーモニー」からは「マイト・アズ・ウェル・ビー・ミー」の2曲をご紹介しました。

8曲目
「Down In The Flood」Derek Trucks (2009)

9曲目
「Sarah, Surrender」Gov’t Mule (2017)

ラーキン・ポーはアメリカでは「リトル・シスター・オブ・ジ・オールマン・ブラザーズ」と言われております。ブルース・ベースのサザン・ロックとでも申しましょうか、オールマンのツイン・リードや、レイナード・スキナードのトリプル・リードのように、ギターの掛け合いが面白いのは南部の連中です。ラーキン・ポーも正統派というべきでしょう。そうなるとオールマン関連も聴きたくなります。オールマン・ブラザーズ・バンドはグレッグ・オールマンも2017年に亡くなってしまいましたから、2014年でバンドは終了しました。それでも個々のメンツが相変わらず素晴らしい活動しております。いまだに「オールマンの連中」といった呼称が使われます。

ブッチ・トラックスの甥っ子、デレク・トラックスとウォーレン・ヘインズのツイン・リードは本当に素晴らしいです。ドラムス・パーカッションは彼らの親世代のブッチ・トラックスとジェイモーが最後まで頑張っていました。ベースは90年代後半から加入したオテイル・バーブリッジです。若手は夜な夜なジャム・バンド的なライヴに勤しんでいる日々でしょう。デレク・トラックスはフロリダ州ジャクソンヴィル出身、ウォーレン・ヘインズはノース・カロライナ州アッシェヴィル出身。ここでは、デレク・トラックス・バンド、2009年のアルバム「オールレディ・フリー」から「ダウン・イン・ザ・フラッド」そして、ウォーレン・ヘインズ率いるガヴァメント・ミュールの2017年の「レヴォルーション・カム、レヴォルーション・ゴー」から「サラ・サレンダー」、2曲続けてご紹介しました。

10曲目
「Hot ‘Lanta」The Allman Brothers Band (1971)

オールマン・ブラザーズ・バンドは、ジョージア州メイコンを拠点に活動しておりましたが、結成されたのはフロリダ州ジャクソンヴィルということになります。ディッキー・ベッツがフロリダ州ウェスト・パームビーチ出身でして、やはり出身地というものは音に影響するのか、ルイジアナ州ニュー・オリンズとか、テキサスの連中とは雰囲気が違います。実はデュアン・オールマンとグレッグ・オールマンは、テネシー州ナッシュヴィル生まれです。この兄弟は音楽をやるために生まれてきたような連中ですが、デュアンは24年11カ月のあまりに短い生涯でした。この番組では割と早いうちにサザン・ロックの特集をやってしまったもので、あまりこの辺ばかりかけてもという要らないバランス感覚が生じてしまいまして、これまであまりかけませんでしたが、好きは好きです。アメリカ南部を逍遥する内容でかけるには相応しい曲が、1971年の名盤ライヴ「アット・フィルモア・イースト」にあります。ここでは「ホット・ランタ」をご紹介しました。

11曲目
「Goin’ Down Slow」Duan Allman (1971)

南部を逍遥してのブルース・ロック特集、あえて個性が強すぎるくらいに強いニュー・オリンズ界隈は外して特集してみました。ではラストもオールマン関連で行きましょう。オリジナル・アルバム未収録で終わってしまったんですけど、デュアン・オールマンが亡くなってから作られた「アンソロジー」に収録されて日の目を見た演奏です。デュアン・オールマンで「ゴーイン・ダウン・スロー」をお時間までお聴きいただきました。

次回は80sの女性ヴォーカル特集です。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp

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