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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 088:ライ・クーダー特集

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第88回(2023年6月2日(金)20時~
(再放送:6月4日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

今週はライ・クーダー特集です。マルチに何でもできる人ですが、やはりスライド・ギターの名手です。本人名義のアルバムはあまり売れておりませんが、恐ろしい数のセッションをこなしており、他人様のバックアップでも素晴らしい演奏をたくさん残しております。あまりに多いので、コンプリートは無理でしょう。私もとうに諦めております。この方、アルバムごとに随分いろいろな音楽に挑戦してくれました。それでも結局ライ・クーダーの音というイメージがちゃんと像を結ぶので凄いことではないでしょうか。

今回まず「7インチ盤で聴くライ・クーダー」ということで、パオニアのCMで使われた3枚をご紹介します。パイオニアのコンポ―ネント・カーステレオ、ロンサム・カーボーイというものがありました。セパレート・タイプのカーオーディオのはしりの一つでした。1977年に登場し、上位機種のカロッツェリアに主戦場を譲るかたちでなくなるのが1986年。10年ほど存在したブランドです。ナレーションが片岡義男だったり、音楽がライ・クーダーだったりということで、男性には非常に人気があったCMだったのではないでしょうか。

1曲目
「Across The Borderline」Ry Cooder (1981)

2曲目
「Go Home, Girl」Ry Cooder (1979)

「アクロス・ザ・ボーダーライン」はコピーライトは81年になってますが、1987年の「ゲット・リズム」というアルバムに収録されています。この7インチ盤のB面は80年のアルバム「ボーダーライン」のタイトル・チューンが入っております。「ゴー・ホーム、ガール」は1979年の「バップ・ティル・ユー・ドロップ」収録曲ですね。B面も「リトル・シスター」ですから、同アルバムの収録曲です。ウィキペディアでは「ゴー・ホーム、ガール」はパイオニアのランナウェイというステレオ・ラジカセのCMソングだと書かれておりますが、7インチ盤のスリーブは「ロンサム・カーボーイCMソング」となっております。

このCMなんですけど、短い詩でもない文章、最近ではコピーというんですか、そういうものがついております。いっぱいヴァージョンがありまして、例えば「ワイフが子供の時の写真を、ダッシュボードの上にテープでとめた」とか、「陽が落ちる前に、ワイフが生まれた町を通った。人口1800にみたない、小さな町だった。」とかいうものです。他にも「ポケットのコインを数えてからダイヤルをまわした。7回呼び出し音が聞こえてから、ようやくワイフが出た」とか、要するに片岡義男の世界ですね。画面の方は、遠いアメリカへの憧れみたいなものを感じさせるものでした。

3曲目
「Big City」Ry Cooder (1981)

一時期、ビッグ・シティ・ヴァージョンと勝手に呼んでいるものがありまして、例えば「ニューヨークでザ・リバーというのは川ではない。絶え間なく続くクルマの流れのことだ」とか、「ニューメキシコナンバーの車を見かけた。タバコ一本分だけ待った。」とかいったものです。画面はもちろんニューヨークの街中です。7インチ盤の3枚目はこのCMで使われていたものになります。この曲が、ちょいとした貴重盤になります。1982年の「ザ・スライド・エリア」というアルバムの日本盤ボーナス・トラックとして収録されますが、これがCD化されたときには削られてしまいます。そもそも日本国内のCMの話ですから、海外の人たちは知りませんから、猛烈なコレクターズ・アイテムになってしまいます。「ザ・スライド・エリア」の日本国内盤を探す方がはるかにラクだとは思いますが、7インチ盤は猛烈なプレミア価格です。ちなみに歌っているのはジム・ディッキンソン、彼とライ・クーダーの共作曲です。


4曲目
「Pecos Bill」Ry Cooder (1988)
5曲目
「Prettiest Girl In The World」Ry Cooder (1988)
6曲目
「Up And Up They Went」Ry Cooder (1988)
7曲目
「A Cowboy’s Prayer」Ry Cooder (1988)

(残念ながらYouTubeに音源が上がっておりません)

お次もレア盤と言えばレア盤でしょう。持ち込んだのは1988年にウィンダムヒルからリリースされたオーディオブック「ペコス・ビル」です。形態はLPレコードです。俳優のロビン・ウィリアムズがナレーションを担当して、音楽はライ・クーダーというものです。

ペコス・ビルは日本の桃太郎みたいな伝説上のカウボーイですが、コヨーテに育てられたとか、ガラガラヘビを投げ縄にしていたとか、そういう昔話というかホラ話の登場人物です。日本では公開されていないディズニーの映画で「トール・テイルズ」というものがありまして、これに主人公を助けてくれる人としてペコス・ビルが出てきます。東京ディズニーランドのウェスタンランドにはペコス・ビル・カフェというものがありまして、伝説のカウボーイのコンセプトカフェになっております。番組ではライ・クーダーの演奏部分を4曲続けてオンエアしましたが、トータルでも8分弱です。ライ・クーダーがお好きな方は探してみる価値はあると思います。

8曲目
「The Long Riders」Ry Cooder (1980)
9曲目
「Wildwood Boys」Ry Cooder (1980)

アーリー・アメリカン・テイストを引きずって、サントラから聴きました。1980年の映画「ザ・ロング・ライダーズ」をご存知でしょうか?ジェシー・ジェームスの物語は何度もいろいろな形で映画化もされていますし、いっぱい歌にもなっています。面白いところではジェームス・ギャングというバンドがありまして、あれももちろんジェシー・ジェームスのジェームスなんですが、そこにいたギタリストのジョー・ウォルシュは後にイーグルスに加入します。イーグルスはセカンド・アルバム「ならず者 デスペラード」が無法者のダルトン一味をテーマとしたコンセプト・アルバムだったりするわけで、なんでまあアメリカ人は昔の無法者に憧れるんだか、みたいな話です。ジェシー・ジェームスは義賊でして、金持ちから奪ったカネを貧しい人たちに配っている鼠小僧みたいな人だったそうです。

10曲目
「Skin Game」Ry Cooder (1982)

1982年の映画「ボーダー」のサントラもライ・クーダーです。ジャック・ニコルソン主演でメキシコ国境の国境警備隊のお話しですが、メキシコからの密入国者と国境警備隊の腐敗を描いたものとなっております。先ほどロンサム・カーボーイのCMソングだった「アクロス・ザ・ボーダーライン」のフレディ・フェンダーがリード・ヴォーカルのヴァージョンがこの映画のサントラに入っていたりしますが、結構いいスライド・ギターが聴ける盤です。ピアノはジム・ディッキンソン、ベースがティム・ドラモンド、ドラムスはジム・ケルトナーです。まずはジョン・ハイアットのヴォーカルをフィーチャーした「スキン・ゲーム」。をご紹介しました。

11曲目
「Too Late」Ry Cooder (1982)
12曲目
「Building Fire」Ry Cooder (1982)

(残念ながらYouTubeに音源が上がっておりません)

この盤の半分ほどはメキシカン・テイストが強いもので、その部分が好きか否かで評価が割れると思いますが、ライ・クーダーもジム・ディッキンソンも結構いい演奏を聴かせているので、スルーしてしまうのは勿体ないと思います。日本ではテックス・メックスという言葉が一般的かと思いますけど、アメリカではテハノ・ミュージックと言います。スペイン語の「コンフント」という言葉もありますが、テキサスだとテハノですかね。ZZ TOPに「テハス」というアルバムがありますけど、あの世界観です。

ライ・クーダーは世界各地のローカル・ミュージックに造詣が深いわけですが、1980年前後のオリジナル・アルバムを聴いたり、この辺のアルバム、それからちょっと前にひねくれまくりの80年代のサントラ特集でご紹介した「アラモ・ベイ」のサントラもそうですが、ボーダーライン周辺のカルチャーや音楽、出来事なんかにもの凄く関心があるように思われます。彼は2012年に思い切り政治的な内容の「エレクション・スペシャル Election Special」というアルバムをリリースしたりもする人ですから、実際いろいろ考えている人なんでしょう。また、「ビルディング・ファイヤーズ」の方は作曲者のクレジットにダン・ペンも含まれておりまして、この辺の人脈・相関図が非常に面白いです。

13曲目
「The Dark End Of The Street」Ry Cooder And Corridos Famosos (2013)

ラストです。2013年になって、メキシコの大所帯のバンドと一緒にやった2011年のライブ音源をリリースしてくれました。息子のヨアキム・ク―ダ―の奥さんのジュリエット・コマジェレや、アコーディオンのフラーコ・ヒメネス等と一緒にやっております。これが何ともまったりしたいいアルバムに仕上がっております。ここで意外なことに、1967年にヒットしたジェイムス・カーの「ザ・ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」を演っております。この曲はフェイム・スタジオ専属のソングライターだったダン・ペンが書いたものです。作者ヴァージョンも素晴らしいのですが、ここでのライ・クーダーのギターがまたいい味を出しております。


次回はロイ・ブキャナン特集です。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp

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